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2016年 08月 15日

ニノン・ヴァランの縦振動電気録音

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以前、ニノン・ヴァランのパテ・アールで、

「1927年12月に華々しく登場したパテ・アールは、しかし最初の17枚は、電気録音システムの操作に未熟であったせいであろうか音が悪く、カタログに載る間もなく回収された。したがって現在ではほとんど目にすることはできない。 下記のリストの1927年の3枚6面も、1枚か2枚の縦振動のコピーが現存するだけだそうだ。」

と書いている。これの出典はマーストンの復刻CD[1]の解説で、著者のVictor Girardは、かのVertial-cut Cylinders and Discs[2]の共著者でもある。

まず、この「最初の17枚」とはどんなレコードだったのかと調べてみると、
Reconstitution du Catalogue français des Disques Pathé Saphir [3]
で、パテ縦振動レコードのカタログを見つけた。
その中の、
Catalogue des disques Pathé 80 tours
[édités à partir de 1916, mais enregistrés entre 1894 et 1915 (rééditions de 90 tours) et de 1916 à 1932]
のうち、
de 5000 à fin [4]
から、7101~7117番のパテアールを抜き出すと、
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となる。
7102のデータは[5]による。
ニノン・ヴァランは、7108、7109、7115の3枚6面である。
7116は不明である。

その後、7109のカルメン縦振動盤を入手した。
[200914] 17-11-27 7109 Carmen: L'amour est un oiseau rebelle {Habanera} (Bizet)
[200915] 1?-11-27 7109 Carmen: Près des remparts de Seville {Séguedille} (Bizet)
2カラム目は鏡像文字で、1927年11月にメタル原盤が作られたことを示している。

Gerard[1]は「1枚か2枚の縦振動のコピーが現存するだけ」と言っているので、最初、これはとんでもない珍品を入手したかと喜んだが、世の中そんなにうまい話があるはずもなく、さして高価でもなかったので、数はあるのだろうと思われる。
レーベルはブルーで、これまで横振動パテ・アールのブルーレーベルは25cm盤、オレンジレーベルは29cm盤と理解していたが、29cmの縦振動はブルーレーベルを使用して横振動と区別しているようだ。

さらに、前記事では、

「[6]の解説には、ニノン・ヴァランにはアート・レーベル以前に、1927年5月録音の通常の"Paper-label"シリーズ13面があって、これらも非常にレアなものだそうであるが、この中のマトリクス番号200,736を聴いたが紛れもなく電気録音であった、と書かれている。 それで、この著者は、マトリクス番号200,000から電気録音に切り替わったのではないか、という仮説を立てている。」

と書いている。
パテアールは電気録音開始を記念して作られたレーベルだと思っていたが、それに先立つ電気録音もあったようだ。

200,000シリーズについては、Girard & Barnes [2]によると、
・パテの横振動盤(アクチュエール)はマスターシリンダーからダビングによって作られたが、横振動独自のマトリクス番号を持っていた。
・1925年後半、パテは古いマスターシリンダー方式をやめ、普通のレコード製造方式に変えた。
・このとき、マトリクス番号も縦横共通の200,000シリーズに変更された。
・一番若い番号は、200,026であるが、これはAndré Allard (Br)の
 0493 Resurrection : Quand je l'ai vue (Alfano) / Resurrection: O Katucha! (Alfano)
 で、1925年11月から1926年1月の間に発売された。
したがって、これはラッパ吹込みであると考えられる。(追記参照)
ここから、ニノン・ヴァランの200,723までのどこかで電気録音に切り替わったのであろう。

またパテは1926年頃から、縦振動と横振動を同じカタログ番号で並行して発売した。横振動にはプリフィックス"X"を付けて区別した。
それでは、縦振動盤はいつ頃まで発売されたのだろうか?
調べてみると、Museum Of Obsolete Media [7]で、
Pathé vertical-cut records continued to be sold in France until 1932.
という記述を見つけた。
フランスでは1932年まで発売されていたようである。

本当はここでニノン・ヴァランのディスコグラフィーをまとめたいところであるが、前に書いたように、500面近くあるので、とても手に負えない。
そこで、ニノン・ヴァランの縦振動電気録音盤をリストアップしてみることにした。
リストは[6]を元にして、[1 - 4]と照合した。資料間で差異がある場合は一番新しい[6]を優先した。
2カラム目が縦振動のカタログ番号、一番右のカラムが横振動のカタログ番号である。
その右の()内は回転数を表す。
7000番台は29cm、2000および3000番台は25cm盤である。

これを見ると、1927年は縦振動と横振動がほぼ並存しているが、年を追うごとに縦振動盤が少なくなってきているのがわかる。
そして、1931年2月の録音を最後に、ニノン・ヴァランの縦振動録音は姿を消す。

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# by ibotarow | 2016-08-15 09:09 | 女声_電気録音 | Trackback | Comments(0)