2010年 01月 17日
前にも書いたかもしれませんが、ボクはフレンチ・バリトン、フレンチ・バスが好きです。 歌手名でいえば、バリトンではヴィクター・モーレル、モーリス・ルノー、バスではポル・プランソンです。 そしてエドワルド・ド・レスケはポーリッシュ・バスですが、ぜひこの中に加えたい一人です。 なぜ好きなのか、つらつら考えてみるに、ノー天気なイタリアの歌手には見られない、複雑で、憂いを含んだような陰のある表情に惹かれるのかもしれません。 有名なテノールのジャン・ド・レスケには正式な録音がなく、メイプルソンン・シリンダーのすさまじい雑音の中に、わずかに聴き取れるだけですが、弟のエドワルドは、幸い、コロムビアのグランド・オペラ・シリーズに3曲4面の録音を残しています。 Edouard de Reszke 1902-3 (New York) 1221 Ernani: Infelice e tu credevi (Verdi) 1221-2 do 1222 Marta: Canzone del Porter (Flotow) 1223 Don Juan's Serenade (Tchaikovsky) このうちエルナーニ(テイク1)のYoutubeを見つけましたので貼り付けておきます。 ある意味、粗野で、場所によっては好色とさえ言える節回しが、まじめなプランソンには聴けない表現です。 もっとも、プランソンはエルナーニを録音していないので、なんとも言えませんが。 グランド・オペラ・シリーズは米コロムビアが1903年春にアナウンスした、メトロポリタンの歌手をコロムビアとして初めて国内録音した10インチ盤で、最初は赤レーベルでした。 これには4つの異なるレーベルがあり、最初は、 COLUMBIA DISC RECORD で、その後、 GRAND OPERA DISC RECORD に変わりました。最初は上部に"TRADE MARK"の表記がなく、下部のパテントの表記も2件だけでしたが、その後パテントは3件表記になりました。 1903年後期になって、VictorがRed Sealシリーズを発表すると、コロムビアはGrand Opera Seriesを黒地にシルバー文字に変更しました。 しかしVictorの強烈な宣伝攻勢でGrand Opera Seriesは売れなかったようです[1]。これが今日の相場に影響してるんでしょうね。 さて、今年初めに到着したGRAND OPERA DISC RECORD は、標記のレコードでした。 2種類あるうちのテイク2の方です。 前からほしかった一枚ですが、まさか落札できるとは思いませんでした。世の中不景気なようです。 さっそく聴いてみました。 上で、粗野で好色と書きましたが、そんな感じはなく、意外でしたが、高貴な印象を持ちました。ノーブルと言ってもいい(同じか)。 これを聴いた後で復刻CDを聴くと、表面のトゲトゲをカンナで削ってしまったようなノッペリした歌唱に聴こえます。 まあ、雑音もはるかに少ないですが。 レコードはとりあえず78回転で再生したので、ひょっとして回転数が違うためかもしれないと、2つを聴き比べてみましたが、SONYの復刻CD[2]は同じ78回転で復刻されているようです。 ハロルド・ウエイン・コレクションにはなぜか入っていないので、これを信用するしかありません。 彼は1853年生まれですから、このレコードを吹き込んだ1903年には50歳で、すでに往年の声は失っていたと言われています。 でも、この高貴な表現を聴くと、若い頃はどんなに素晴らしかっただろうと思わざるを得ません。 わずか4面とはいえコロムビアに吹き込んで、お兄さんのジャン・ド・レスケのように原盤を割らずにいてくれただけでも有難いことです。 余談ですが、エドワルド・ド・レスケのレコードはGRAND OPERA DISC RECORDレーベルの片面盤のほかに、エルナーニとドンファンのセレナーデを両面プレスしたMagic Notes LabelのA617があり、シェラックの材質がオリジナルより格段に良くなっているため、この再発盤が古来珍重されているようです。 なお写真のA617は、ボクの空想博物館の収蔵品です。これもテイク2のようですね。 References [1]Michae W. Sherman and Kurt R. Nauck III, "Note the Notes, An Illustrated History of the Columbia 78 rpm Record Label 1901-1958", Monarch Record Enterprises (1998) [2] The 1903 Grand Opera Series, SONY CLASSICAL MH2K 62334 (1996)
by ibotarow
| 2010-01-17 08:01
| 男声_ラッパ吹き込み
|
Comments(9)
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ラファエルロングが
at 2021-11-05 21:42
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自分も中学校の頃から、小遣いを溜めては、買いつづけて居ますが、心臓病が有ったことが判明してしまい、消防団にも入っていましたが、クビで、仕事ドクターストップでやめざるを得なくなりました。そこで。レコードの購入期間が伸びて仕舞って中々新しく買えません。悲しいかぎりです。良いレコードが買えましたね。時々ページを覗かせて頂きましたが、自分も聴いてみたいものですね。良しければお仲間に入れて頂きたいものです。自分の物で御貴殿が未だ聴かれて居ないものがもしも有れば(既にお持ちで、無いと思いますが)喜んでお聴かせ差し上げます。
※以前オーディオテクニカの社主へ、蓄音機を貸して、レコードを差し上げたのですが、死んで仕舞われ、問い合わせをしたら、盗っ人扱いして聴く耳を貸さないです。部下は、変な連中でしたね。
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ibotarow at 2021-11-06 07:27
ラファエルロングがさま、
ご訪問ありがとうございます。コメントをいただいた時点でお仲間です。よろしくお願いいたします。 当方も寄る年波で、新しいレコードを買う元気も資金も無くなりました。 今は手持ち盤の回転数を調べることで無聊をかこっていますが、このColumbia Grand Operaシリーズの回転数についてはよくわかりません。何か情報をお持ちでしたらぜひご教示ください。
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Rafael fuwabo longe
at 2022-02-13 12:01
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どのような情報が御入り用でしょうか?当方で知り得る事証で御座い居ました成れば、幾らでも提供させて頂く処存で御座います。
祖父が、ヴァイオリニストで、ピアニストでありました。第二次世界大戦以前は,現在の江古田ニ又に在住し,多くの俳優が住んでいた処に一緒に住んでいたそうで,大泉の東映大泉撮影所で、映画の音楽を絵演奏録音をして来ていたという。第二次世界大戦の最中には、社命で満州国で戦闘中の日本軍の部隊へ,慰問団を組んで各連隊や中隊等の駐屯箇所へ、慰問を行いに行ったそうで、一家で引っ越しして行ったので、敗戦時は九州の串木野へ着いたそうです。その後静岡県藤枝、静岡市を経て東京へ帰京です。日本の祖母(父親の母親)の弟の家にクラシックのレコード等を預けて渡ったそうですが、戦時中に敵性国家音楽を排除せよという軍の命令で、庭に穴を掘ってレコードを砕いて埋めていると云います。隠していた物は良い物で、どうでもよい物を処分して見せたみたいです。 祖父は芸名で、当時のSPレコードに録音して居ると聞いております。 必要な情報が何かをお知らせ下さいませ。持っています内容でありましたならお答えを致します。
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ibotarow at 2022-02-14 07:37
Rafael fuwabo longeさま、
ご親切なお申し出ありがとうございます。 知りたい情報は、上のColumbia Grand Opera Seriesや、Fonotipia、Pathe等、黎明期のレコードのピッチと回転数です。 レコードそのものでなくとも、当時のレコーディングスタジオのピアノのピッチ等も有難いです。 よろしくお願いいたします。
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Rafael fuwabo longe
at 2022-02-16 14:54
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COLUMBIAのレコードでは無く,GRAMOPHONEのレコードで,プーニョやグリーグが録音をしたレコードですが,野村長一(あらゑびす)氏が,著書で音が悪くピアノの音がクラブサンの様な音で蚊の羽音のヨウニ小さな音であるので,若い人のコレクションには向かない。懐古主義の老人に任せて,ピチピチのレコードを集めるが良かろう。逸れが正しい音楽愛である。と,書かれて居ましたが,グリーグかとプーニョがフランスのグラモフォン社のスタジオに在って,録音に使用をしたピアノは,元からああいう音がする弦が張られているピアノですから,今,CDに録音をしたとしてもああいう音で再生されまして,音量も得に小さいという訳では無いのです。プーニョやグリーグの物は何をお持ちですか?私はグリーグは12インチの裏面の“春によす”でプーニョはメンデルスゾーンのSHASSEがあります。プーニョの演奏の物は,ほぼ未使用でした。
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Rafael fuwabo longe
at 2022-02-16 15:27
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サラサーテの記事も見ました。ショパンのノクターンのレコードの,あの中央が白く剥けていたレーベルの盤は,秋葉原で品川さんが¥500000で販売をするからって,持って行った物では無いでしょうか?私の見覚えのある2ndプレス様のレーベルが貼ってあった物でした。サパテアードも,ノクターンも3rd迄はプレスされていて,レーベルが僅かに違っております。サラサーテのレコードは ,自宅にアメリカウヴィクターのハバネラ,ミラマールソルツィコ,日本ビクターのツィゴイネルワイゼン,タランテラ舞踏曲,バッハ作の無伴奏パルティータ第3番のプレリュード,ドイツのですがシャルプラッテグラモフォンになる前で,ハバネラ,タランテラ舞踏曲,カプリスバスク,ロシアグラモフォンのタランテラ舞踏曲,ツィゴイネルワイゼンPart2,フランスのグラモフォンでツィゴイネルワイゼンPart1,バッハ作の無伴奏パルティータ第3番のプレリュード,カプリスホタ,ミラマールソルツィコ,ハバネラ,サパテアード,ショパン作ノクターン9-2が,初版で,カプリスバスク,タランテラ舞踏曲,ミラマールソルツィコ,サパテアードが2ndプレスで21枚所持をしておりますが,アメリカヴィクターと日本ビクターの盤は,置き場所の関係で割愛予定にしています。ツィゴイネルワイゼンPart2のみフランスのグラモフォンの盤が持って居ないので,捜している最中です。ロシアグラモフォンではツィゴイネルワイゼンは,Part2のみしか発売していなかった様です。
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ibotarow at 2022-02-17 07:28
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Rafael fuwabo longe
at 2022-02-17 08:51
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片寄って居て恥ずかしいかぎりです。JAROSLAV KOCIANのCOLUMBIA以外もお持ちだとか,国内で購入すると,¥300000以上する場合も有りますが,海外から購入すると1/10の価格で買えました。御貴殿も海外の購入でいらっしゃいますか?国内で購入が,いよいよ馬鹿らしくなりますよね。家の物はスピースの小人の躍りが両面盤で,2連音符♪♪の物で,カンツォネッタ(ダンブロジョ作)の物はオリジナルのラベルが,このレコードは~~と書かれている上に,社名のラベルが重ね貼りして有るもので,セレナーデ(ピエルネ作)の物は社名が書かれているレーベルが貼ってある物です。片面の2枚の演奏家のネームは,本人のサインを印刷している物ですが,両面盤で社章の印刷している盤は,ネームは活字です。日本国内で購入すると何故価格が10倍になるのですかね?不思議ですね。サラサーテの物や,ヨアヒム,アルノルト・ロゼ,プーニョ,グリーグ等も5倍から10倍になりますよね。
最近,海外から購入して,昔から付き合いになる中古レコードの店は,極稀に出向くだけになって,行っても海外から買った物と同じ物で,価格が倍の物を試聴して高い価格ですから,ノイズが少ないとか,未使用に近いとか,何か良い面が有るかと思いきや,盤質が代えって悪かったりして居まして,良ければ予備に購入も考えて居ましたが,結局辞める事になる場合が殆どです。御貴殿は如何でしょうか? 因みに,中学生の時に比較的近めの中古レコードの店で,クラシック音楽のSP盤で中古レコードが有って,アメリカヴィクターのサラサーテ演奏の盤が有り,昔は売られて居たのを知ってから,本を買ったりして集める事を始めました。逸れまではLP盤を稀に購入する程度で,元々祖父や父親が集めて所蔵のSP盤だけで聴いていました。逸れで,アメリカヴィクターの盤は,中古をアメリカから輸入している様ですが,国民性で鉄針でジャンジャン聞いて,駄目になると棄ててしまうので,棄ててしまう様な盤ですから,白く擦れている物が多かったので,後から見付けた欧州の盤と取り替える事としました。御貴殿はblogに出されていない物では,どのような物をお持ちですか?こちらに所持しております物で,御聴きになりたいものが御有りでしたら,お許しがあればお邪魔して持参いたしまして,再生をしてみて御聴きに成られましても良いです。
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ibotarow at 2022-02-17 18:29
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