2010年 01月 31日
このたび標記のレコードを入手した。1927年のVictor未発売電気録音で、IRCCの原盤が流出して何者かがビニルプレスしたものらしい。無銘の黒レーベルである。 このセッションの録音はマーストンがほとんど復刻[1]しているので、ディスコグラフィーをトラックリストからコピーペーストして作った。 このところ手抜きが激しいが、ついでに、同復刻CDからマーストン自身の解説も抄訳した。 ジェラルディン・ファーラー(1882.2/28~1967.3/11)は、1922年にオペラ歌手を引退した。彼女の最後のVictor録音は1923年に発売された。 しかし、電気録音の出現で、彼女は一連の録音セッションのため、再びVictor の録音スタジオに入った。1927年の1月から4月にかけて、別テイクを含む13曲、35面を録音した。 これらの録音はその時は、すべて発売を拒絶されたけれども、1930年代に、International Record Collector’s Clubが4面をオリジナル・マスターからプレスして、また2面をファーラー自身のテストプレスからダビングして復刻した。 これらのレコードの多くは生き残ったが、13曲のうち、2曲は失われた。このCDには、生き残った11曲と、そのうち2曲のリテイクを含む13面が収録されている。 メンデルスゾーンの「歌の翼に」は、ファーラーが英語とドイツ語で歌った2面が収録されている。また、これらの2つのバージョンのピアノ伴奏もわずかに異なることを指摘しておくべきであろう。(訳者注:このあたりマーストンの面目躍如たるものがありますねえ。ボクらはこの盲目の天才復刻師と同時代を生きていることを感謝しましょう。) ロッティの「美しい唇よ、お前は言ったのだ」も、ファーラーの歌唱が異なるため2つのテイクが収録されている。 残念ながら、これらの録音がなぜ発売されなかったかは上の解説には書かれていなかった。 識者のご教示を乞う次第である。 さて、「歌の翼に」であるが、写真の6時の位置にIRCC-41Aの陽刻が見える。12時の位置には電気録音を示すVEマークが見える。またセンタースピンドル孔のそばに手書きのWの文字が見える。 刻印はそれだけで、マトリクス番号は残念ながら消されているようだ。 この頃のファーラーは既に40代半ばで、声には往年の色気と勢いは失われているが、おだやかな光を放つ、深い表現力を身に付けている。 まるで母親の子守歌を聴いているような心地良さであるといえばわかっていただけるだろうか。 Victor Talking Machine Company, Camden, New Jersey, Electrical Recordings 11 January 1927 CVE 37348-1 Pur dicesti (Lotti) IRCC-40 CVE 37349-1 LE NOZZE DI FIGARO: Dove sono (Mozart) Recitative and Andante section only IRCC-40 CVE 37350-1 On wings of song [Auf Flügeln des Gesanges] (Mendelssohn) BVE 27731-3 Serenade [Ständchen] (Richard Strauss) (Translated by Ferrar) IRCC-55 12 January 1927 BVE 37351-2 LE NOZZE DI FIGARO: Non so piu cosa son (Mozart) matrix number unassigned FRASQUITA: Rest with the dew of the dawning (Farrar; Lehar) IRCC-1953 re-recording 13 January 1927 BVE 37354-1 Midnight bells (Fritz Kreisler) IRCC-79 re-recording BVE 37356-1 Christina’s lament {Humoresque} (Creyke-Dvorak) IRCC-41 8 March 1927 BVE 38147-1 Hame to the highlands (M. Gilmour) BVE 38146-1 Drowsy poppies (M. Gilmour) BVE 26034-9 Serenata (Tosti) BVE 38145-1 Pur dicesti (Lotti) 5 April 1927 BVE 37350-6 Auf Flügeln des Gesanges (Mendelssohn) IRCC-41 Reference [1] Geraldine Farrar, Berlin G&Ts 1904-1906, Victor electrical recordings 1927 and Bell Telephone Laboratories experimental recordings 1932, Marston 52040-2 (2003).
by ibotarow
| 2010-01-31 06:22
| 女声_電気録音
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