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2017年 10月 08日

サラサーテ盤の回転数その5

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10年ほど前、チゴイネルワイゼンの回転数について調べた結果を、下記の4回にまとめました。

サラサーテ盤の回転数その1 
サラサーテ盤の回転数その2 
サラサーテ盤の回転数その3 
サラサーテ盤の回転数その4 

あまり明解な結論は得られませんでしたが、論点を整理すると、
1.HMV、ビクターによると、チゴイネルワイゼンは77 rpm。
2.4種類の復刻CDは、おおよそA=440 Hzで復刻している。
3.演奏トラックと、内周トラックのピッチは違うのでは?
等です。

先日クレイトンの復刻LP[1]を入手したのを機に、これらをもう一度検証してみたくなりました。
そこで、チゴイネルワイゼンを含む7種類のレコードについて、5種類の復刻盤で再調査しようというのが今回の目的です。

先ず、サラサーテの録音は、下記の9曲10面です。録音年はDAHR[2]に依ります。

[4258o] Partita No 3 BWV1006: Prelude (Bach)
Gramophone 37931, 67903, AA111, E183, EW3, P527

[4259o]  Introduction et Caprice Jota, Op 41 (Sarasate)
Gramophone 37932

ca. Nov 1904-Dec. 1, 1904 Paris
[4260o] Introduction et tarantelle, Op 43 (Sarasate)
Gramophone 27961, 37933, 47965, 61886, 67904, AA-112(Spain), E-183, ER-75(Czechoslovakia), EW-3(Germany), P527
Victor 52709, 62111

12/1/1904 Paris
[4261o] Miramar-Zortzico Op 42 (Sarasate)
Gramophone 27960, 37934, 47964
Victor 52708, 62110, 97231

ca. Nov 1904-Dec. 1, 1904 Paris
[4262o] Caprice basque Op 24 (Sarasate)
Gramophone 27959, 37929, 47966, 67900, AA-110(Spain), ER-76(Czechoslovakia)
Victor 52720, 62115, 63168

ca. Nov 1904-Dec. 1, 1904 Paris
[4263o] Zigeunerweisen Op 20 (Sarasate) Part-1
Gramophone 27962, 37930, 47962, 67901, E-329, AA-110(Spain), EW-2(Germany)
Victor 52710, 62112, 63167, 97245

ca. Nov 1904-Dec. 1, 1904 Paris
[4264o] Zigeunerweisen Op 20 (Sarasate) Part-2
Gramophone 27961, 37935, 47963, 67902, E-329, AA-111(Spain), EW-2(Germany)
Victor 52711, 62113, 63167, 97246

ca. 1904-1905 Paris
[4265o] Danzas españolas, Op 21. Habanera (Sarasate)
Gramophone 37936, 47967
Victor 52707, 97230, 62110

[4266o] Zapateado, Danse des souliers Op 23 No 2 (Sarasate)
Gramophone 37937

[4267o] Nocturne Op 9 No 2 (Chopin-Sarasate)
Gramophone 37938

これらのうち、プレリュード、カプリス・ホタ、ノクターンは持っていないので、それ以外の7面について調べます。

次に、回転数の推定法をデジタル化その16 ヨーゼフ・ハシッドからコピペしますと、
“まず、レコ―ドをクォーツロックのかかる78 rpmで再生、録音します。
この波形と、復刻CDの波形を、Audacity[3]上で比較します。
「スピード変換」によってレコードの波形を伸縮させて、両者が同じ長さになるように合わせます。つまりピッチを合わせるのではなく、演奏時間を合わせようという魂胆です。
両者を同時再生して、同じピッチ、同じテンポであることを確認します。
その時の変換係数を78に掛ければ、復刻CDの再生回転数が出ます。”

一例としてチゴイネルワイゼンpart 2の波形を図1に示します。
上がクレイトン盤の再生波形、下がレコードを72.8 rpmに合わせた波形です。

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図1 チゴイネルワイゼンpart 2の再生波形:クレイトン復刻盤(上)とレコード@72.8 rpm(下)

それから、内周トラックの周波数は、Audacityの「スペクトラム表示」のピークの値から求めました。
一例として上図下段の最後に見られる内周トラックのスペクトルを図2に示します。

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図2 チゴイネルワイゼンpart 2の内周トラックのスペクトル

内周トラックにはA音が録音されていると言われていますが、78 rpmで再生した時、レコード間でどのくらい周波数の、ひいては回転数のバラつきがあるかを調べてみました。
結果を図3に示します。録音した時は同じ高さの音だったはずですが、458 Hzから471 Hzまでかなりバラついていることがわかります。

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図3 78 rpmで再生した時の内周トラック周波数

さて、7種類のレコードに対する、5種類の復刻盤の調査結果を示します。
推定再生回転数を図4に、

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図4 5種類の復刻盤の推定再生回転数

図4の回転数における内周トラックの周波数を図5に示します。

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図5 図4の回転数で再生した時の内周トラックの周波数

まず目につくのは、クレイトンとその他の復刻盤との差です。
クレイトンは、大幅にずれているのもありますが、内周トラックの周波数が440 Hz近辺になるように回転数を調整するという方針だったようです。
A=440 Hzが正解かどうかは別にして、これは非常に合理的な考えだと思うのですが、現実はそう単純でもないようで、その他の復刻者は、そうは考えなかったようです。 1970年代(たぶん)と1990年代以降との違いですかね。

チゴイネルワイゼンpart1の場合、4種類の復刻CDは見事に70.7 rpmあたりに揃っています。
この回転数で再生したチゴイネルワイゼンの出だしのG音のピッチは、「サラサーテ盤の回転数その4」に書いたように、冒頭に挙げた論点2の
2.4種類の復刻CDは、おおよそA=440 Hzで復刻している。
に準拠したものとなりました。

その時の内周トラックの周波数は4種類とも415 Hz近辺で、440 Hzとは大きく異なります。
これは、先に挙げた論点3の、
3.演奏トラックと、内周トラックのピッチは違うのでは?
という仮説を裏付けるものです。

また、先に挙げた論点1の
1.HMV、ビクターによると、チゴイネルワイゼンは77 rpm。
ですが、
「サラサーテ盤の回転数その3」に書いたように、HMVの第2カタログには、
タランテラ:75 rpm
チゴイネルワイゼン:77 rpm
で再生せよ、と書いてあります。

タランテラの場合、78 rpm再生時の周波数は図3に示すように469 Hzですので、75 rpmでは、
469/78*75=451 Hz
となります。

チゴイネルワイゼンpart1の場合は、458 Hzですので、77 rpmでは、
458/78*77=452 Hz
となり、タランテラとほぼ一致します。
つまり、HMVの主張はそれなりに整合性があります。

ただ、チゴイネルワイゼンpart2は、464 Hzですので、77 rpmでは、
464/78*77=458 Hz
となり、part1と少し異なります。

HMVのカタログを作った人はpart1だけで77 rpmだと判断したとすると、内周トラックのピッチは、A=452 Hzとなります。
「サラサーテ盤の回転数その4」では、A=454 Hzが当時の演奏ピッチであろうと無理やり結論付けましたが、
ここで、先に挙げた論点3の
3.演奏トラックと、内周トラックのピッチは違うのでは?
の観点から、
演奏トラックのピッチをA=452~454 Hzとする回転数を考えると、70.7 rpmでA=440 Hzなので、
452/440x70.7=72.6 rpm
454/440x70.7=72.9 rpm
となります。
72.6~72.9 rpmが、HMVの顔もある程度立てた?落としどころじゃないでしょうか。

この場合の内周トラックの周波数は、77 rpmで452 Hzなので、72.6 rpmでは、
72.6/77x452=426 Hz
となります。
これは、A=452 Hzのピッチにおける、A♭に相当しますが、ほかの曲でも、図5に示したように、演奏トラックと内周トラックで、半音ほどではないにしても、差があるようです。




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# by ibotarow | 2017-10-08 07:31 | ヴァイオリン_ラッパ吹き込み | Trackback | Comments(0)