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いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

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2013年 08月 19日

エティエンヌのクラリネット協奏曲をめぐる謎

エティエンヌのクラリネット協奏曲をめぐる謎_d0090784_9561271.jpg

どうも夏になると暑苦しいSPより、涼しげなLPを聴きたくなるようで、最近ディスコフィル・フランセ盤のクッキリスッキリ系の音に嵌っています。
それで、きっかけは何か忘れましたが、フランソワ・エティエンヌというクラリネット吹きを知りまして、標記のレコードが欲しくなりebayで探していたのですが、やはりLPはSPに較べて競争相手が多いですね、なかなかゲットできませんでした。

そうこうするうち、Loreeさんから、
「この録音は1941年6月に78回転SPレコード4枚に録音されたもので最初期のLPに転写された。再録音は1952年に同じエヴィット管弦楽団と行なわれたので混同されている。(グッディーズ/33CDR-3395)」
との情報をいただきました。

それでちょっと調べてみると、SP盤の録音データを見つけましたので書き留めておきます。

Mozart - Clarinet Concerto in A major K622
I. Allegro (2½ sides)
II. Adagio (1½ sides)
III. Rondo (2 sides)
L' Orchestre de Chambre Hewitt, Maurice Hewitt
François Etienne, clarinet
Les Discophiles Français 8-10
Matrices PART 1695 to 1700, all first takes (M6-102645/50)
Recorded July 1941
The 1941 date is suggested by the M6 numbers. It may be that Etienne recorded this concerto twice.

やはり2回録音したようです。
そこで、CHARMで検索してみると、

CatNum: EX25018
Label: Les discophiles français
Date: 1953-01-01
Venue: Paris, Salle Apollo
Composer: MOZART
Title: Clarinet Concerto in A major, KV622
Performer: Francois Etienne, clarinet
Conductor: Hewitt, Maurice

が、まずヒットしました。1953年1月の録音です。 またカタログ番号EX25018は、25センチ盤です。
しかし、次にヒットしたDF2には日付がありません。、

CatNum: DF2
Label: Les discophiles français
Composer: MOZART
Title: Clarinet Concerto in A major, KV622
Performer: Francois Etienne, clarinet
Conductor: Hewitt, Maurice

これはどういうふうに考えたら良いのでしょうか?
ボクの知る限り、エティエンヌのクラリネット協奏曲/五重奏曲には少なくとも3種類のジャケットがあります。地図なしDF2、地図ありDF2、そしてDF730.042です。
1941年の録音は上の説明によると「最初期のLPに転写された」そうですので、DF2の最初期盤はこの録音だと考えるのが自然でしょう。そして、いつかの時点で1953年の録音に差し替えられたと。
それを検証するためには、DF2のマトリクス情報を見たいところですが、いろいろ探し回ったところ地図ありDF2は、

Les Discophiles Français DF2
DF 2 1C3, PARTX 19513, M6 148668
DF 2 2C3, M6-140568 (クラリネット五重奏曲)

であることが判明しました。ここで興味深いのは、DF2のM6番号で、協奏曲の方が五重奏曲より新しいことです。つまり後で製盤されています。
想像をたくましくすれば、五重奏曲は1952年なので、協奏曲は1953年の再録音ではないか、と考えられないこともありません。

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しばらくして、謎が解けました。
先日来、フェイスブックで知り合った新生ディスコフィルフランセの関係者に、ダメ元で質問メールを送っていたのですが、その返事が来たのです。
そこには驚くべきことが書かれていました。

There is 2 recordings of the Mozart's Clarinet concerto with Francois Etienne and Maurice Hewitt:
R.1: July 1941 in Studio Albert, Paris
R.2: January 1953 in Salle Apollo, Paris

First 78 rpm edition:
Album 2 (A.2)(records 7 to 10)

3 types of DF 2 LP:
DF 2 (type 1) 10", Clarinet concerto,K.622 (R.1) and Ode funebre,K.477 (R.1) (early 1950)
DF 2 (type 2) 10", Clarinet concerto,K.622 (R.2 and Ode funebre,K.477 (R.2) (january 1953)
DF 2 (type 3) 12", Clarinet concerto,K.622 (R.2) and Clarinet quintet, K.581 (july 1953)

We consider the DF 2 type III as the definitive issue.

In July 1953, in parallel to replacement of the Ode funebre,K.477 by the Clarinet Quintet, K.581 on DF 2 type 3; the DF 68 is published with Ode funebre, K.477(R.2) and the Adagio and Fugue K.546 for string quartet.

なんと、DF2には3種類の違うバージョンがあったようです。
曲の組み合わせや径の違うレコードに、同じ型番を付けるとはフランス人も大胆ですねえ!
しかし、これで五重奏曲とのカップリングの30センチ盤は、ジャケットのいかんに関わらず、すべて新録音であることがはっきりしました。

その後、DF2も無事落札することができ、これにて一件落着とあいなりました。


by ibotarow | 2013-08-19 10:19 | 管楽器その他 | Comments(2)
Commented by Loree at 2013-08-19 21:58
こんばんは。新生ディスコフィルフランセの関係者にfacebookで質問しちゃうところがスゴイです。。。
この記事をプリントアウトして、うちのグリーンドア復刻盤に挟んでおきます♪
Commented by ibotarow at 2013-08-20 06:27
それは光栄です。
今後ますますヘンタイ性、あ、間違えた、資料性の高いブログを心がけたいと思います。
しかし、フェイスブックが初めて役に立ちました。


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