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いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

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2013年 09月 01日

エティエンヌのクラリネット協奏曲をめぐる謎 後日譚

エティエンヌのクラリネット協奏曲をめぐる謎 後日譚_d0090784_659196.jpg

前報で一件落着と書きましたが、DF2(type 1) の旧録音は見たことも聴いたこともなく、入手するすべもありません。この録音は、長年、同曲演奏のランドマークでありリファレンスであったそうで、大変気になるところです。

その後、エピクロスさんが3種類の異種同演盤を秘蔵されていることがわかり、しかもそのうちの2種は1941年の録音らしいとのこと。
そこで8月某日、猛暑の中をエピクロスさんにご足労願ってレコードをお持ちいただき、オリジナル盤との聴き比べを行いました。 比較したレコードは下記の4種類です。

Discophiles Français DF2
DF 2 1C3, PARTX 19513, M6 148668
DF 2 2C3, M6-140568

Discophiles Français-VOX DLP 6660
XTV 11962
XTV 11963

東芝 AB-8089
730042-1 1S
730042-2 1S

EMI reference 2C051-73051
73051 MA21, M6 335775 3
73051 MB21, M6 335776 3

まず、ディスコフィル・フランセのオリジナル盤DF2の1953年録音を聴いた後、1941年録音だというDF-VOX盤を聴きました。
これは12インチ盤ですが、ディスコフィル・フランセのDF2に3種類あるうちの、最も初期の10インチ盤と、カップリングの葬送曲K.477を含め同じ演奏のようです。

音は、1941年の録音としては並というところです。
盤の変わり目にはピッチが変わるので、回転数の補正はしていないようです。
演奏は、1901年生まれのエティエンヌより、1884年生まれのエウィットの方が新旧の差が大きいです。
1953年に較べて元気溌剌、スピードが速い、若々しい演奏です。
でも、WEB上で見たあるブログでは、新録音は旧録音に「遠く及ばない」と書かれていましたが、そんなこともないと思いました。
あえて言えば、エティエンヌはたしかに若く勢いがありますが、ぶっきらぼうと言えないこともないと思います。

次に東芝盤を聴きました。岡俊雄氏の解説ではこれも1941年録音だということでしたが、これは明らかに新録音ですね、
上に書いたマトリクス番号730042は、ディスコフィル・フランセの再発盤のカタログ番号といっしょなので、これはそのマスターテープをもとに作られたと思われます。
音は、オリジナルと大きく異なり、高音を強調したシャープなものです。
これの編集にかかわったのが、現グリーンドアの吉野金次氏だそうです。 モニターは当時の東芝のスタジオで使われていたアルテック604Eだったそうですが、さもありなんという音でした。

次は仏EMIのレファレンスシリーズで、マトリクスを見ると、オリジナルとは違う、新しいカッティングのようです。
音は、オリジナル盤の、良く言えば軽み、悪く言えば薄っぺらさはありません。オリジナルよりまともなバランスとも言えます。
EMIとはいえ、フランス・プレスですが、むしろALP盤に近い音色を感じました。

最後に参考として、グリーンドアのハイドン・ソサエティ盤からの板起こし復刻CDも聴きましたが、音色として東芝盤に近く、想像していたより良かったことを付記します。

というわけで、DF-VOX盤は演奏が違うので別格として、お国柄によってさまざまに異なる音を味わうことができました。
貴重なレコードをお持ちいただいたエピクロスさんに、厚く感謝申し上げます。

by ibotarow | 2013-09-01 07:25 | 管楽器その他 | Comments(5)
Commented by Loree at 2013-10-18 22:12
グッディーズの復刻盤(33CDR-3395)を買いました。ぼくはてっきり、当盤はSP復刻に違いないと思っていたら、DF2(“最初期のLPに転写された”)からの復刻でした。なるほど、グッディーズのあの解説文はそういう意味でしたか…(汗)
盤の変わり目にピッチが変わるので、先日聴かせていただいたDF-VOXはDF2からの転写なのかも、と思いました。グッディーズがSPからの復刻盤も出したらどうしよう、と悩んで、夜も眠れません。(←出ないかもしれないのに悩むLoree)
Commented by ibotarow at 2013-10-19 09:46
出ないと思いますが、もし出ても、盤の変わり目のピッチの変化は同じでしょうね。
あれは、レコードをカッティングするときの外周部と内周部の回転数の違いによるものですから。
クライスラー/ブレッヒのベートーヴェンもひどいですね。
Commented by Loree at 2013-10-19 13:46
クライスラー/ブレッヒのベートーヴェンは、回転数を補正した復刻盤を最初に聴いたので、途中でピッチが変わるものは再生を間違えたのかな?と思っていました(汗)
ふつうに再生するとこうなる、というわけですね。
Commented by Loree at 2015-08-15 11:46
エティエンヌの旧録音、今度はグリーンドアから復刻盤が出ます(GDCS-0040)。DFのSPから復刻されたLP(VOX DLP6660)からの復刻とのこと。SPからの復刻はなかなか出ませんね。
Commented by ibotarow at 2015-08-16 08:00
そうですか、ボクは「DFのSPから復刻されたLP」DF2の10インチ盤を探しているのですが、なかなか見つかりません。
SP盤は一度見かけましたが。


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