2014年 01月 20日
先日、”さる先達”からクレマン・アンコロールが送られてきました。 もちろんアンコを巻いたロールケーキではありません。クレマンのSP用カートリッジです。 ただ借りているだけですのでご心配なく。 アンコロールのつづりは"incolore"、無色(銀色)です。LP用のルージュに対応する色ですね。 本体に"L5"の手書き刻印がありました。シングルコイルだと思います。 梱包を開けて、まずカンチレバーに驚きました。針の裏が厚いんです。切削加工でしょうか? 針圧は錘をいっぱい後ろにさげて約8g。 QUAD22のMIC端子入力で、スピーカーはマルコーニフォンご本尊。 さっそく、その辺にあったラッパ吹き込みと電気吹き込み盤を10数枚聴きました。 しばらくSPレコードを聴かなかったので、以前の印象を忘れてしまったのですが、 総じて言えることは、 電気録音により良く合うようです。 美しいものはますます美しく、そうでないものはそれなりに。 正直なんでしょうね。 ラッパ吹き込みは、状態の良いものは非常に美しいんですが、 傷んだレコードには冷淡なようで、ノイズが耳障りですし、ひずみっぽさが気になります。 また、録音の貧しさがそのまま出ます。 ここは、デッカ・ゲンコツのナローレンジの深情け?に一歩譲ります。 しかしゲンコツはニードルトークが大きく、蓋が欠かせませんが。 それから電気録音盤は、ストレートのMIC端子より、モノラル端子の78回転用イコライザ経由の方がしっくりいくようです。 特にヴァイオリンの艶や潤い、また女声ではしっとり感が増すような気がします。 しかし、最初に聴いたレコードは英盤がほとんで、あとは伊盤、米盤等で、仏盤はありませんでした。 その後、”さる先達”やmarcoさんが、さかんにクレマンとフランス盤の相性の良さを言われるので、数少ないパテや仏コロムビア、仏オデオン等の電気録音盤を聴きました。 なお、針圧は初めは8gでしたが、”さる先達”のアドバイスで15gにすると、よりしっかりした実在感のある音になりました。 またスピーカーは初めマルコーニフォンでしたが、高音のレンジ不足を感じてGECに変えると音の厚みは少し薄くなりましたが、がぜん高音のしなやかさ、繊細さが増しました。 今までGECでSPレコードをかけると、、録音帯域の貧しさが如実に出ると感じていたのですが、アンコロールは不思議にそんなことはありません、ピッタリだと感じます。 先ずパテのマヌエル・キロガ「ホタ・アラゴネーザ」「ロンド・デ・ルタン」1927年録音、 いいですねえ、細かいニュアンスがよくわかります。またピチカートが生々しい。 次に、ニノン・ヴァランの「インドの歌」1928年録音、 肉付きの良い声で、しっかり安定しています。たい焼きの隅々までアンコの入った感じです。 次は、仏コロムビアのバリエントス/ファリャの「7つのスペイン民謡」1927-28年録音、 これはあまり良くないというか普通ですね。パテに比べると鈍い音です。 次は仏オデオンのイヴ・モンタン「セシ・ボン」1948年録音、 蓄音機ではもっと浮き浮きしたはずむ感じでしたが、まじめな落ち着いた感じです。 以上がフランス盤で、次は米コロムビア盤 エネスコの「ヘンデル4番ソナタ」1929年録音、 滑らか、今まで聴いたエネスコの中で最もHiFiの再生音。 次は独エレクトローラ盤 フリダ・ライダーの「神々の黄昏、終曲」1928年録音、 これはオーケストラの絃がさわやかで、細かい楽器まで聴こえ、声に距離感があり、まるでLPを聴いているようです。 最後は英HMV盤、 ヨーゼフ・ハシッドの「タイスの瞑想曲」「ウィーン奇想曲」1941年録音、 これはいいんですが、以前のもっと清潔感あふれる印象が薄れたような気がします。あたりまえの音になってしまいました。 以上、ボクの駄耳では、フランス盤との相性は、そう言われるとそうかなという程度でした。もちろん悪くはありませんでしたが。 1920年代の電気録音はほとんどウエスタン・エレクトリックの録音システムなので、国別、レーベル別の音の違いはLPほど現れないのかもしれません。 今回聴いた中では、一番良かったのは独エレクトローラで、次が米コロムビアした。これは単に録音の良し悪しに比例しているだけだと思います。 クレマン・アンコロールは、LP用のクレマン・ルージュでも感じましたが、 レコードに入っている音を足したり引いたりせずに正直に再生するカートリッジだと思いました。
by ibotarow
| 2014-01-20 18:46
| 蓄音機
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Comments(2)
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