2014年 03月 30日
![]() 先日の「湘南SPレコード愛好会」で思いがけない人にお会いしました。ゴルフ院長です。 久しぶりにいろいろ目からウロコのお話をお聞きしました。 話の流れで、院長作のモノラルカートリッジをお借りできることになりました。 構造は、以前作っていただいた縦振動用の振動系を90度回転させたもので、同極どうしを対向させた磁石によって、間の空間に薄い円盤状の磁界を形成し、そこを円筒の空芯コイルが磁界を切るように振動する仕掛けです。 振動系は、GEの1ミル交換針を使用し、針チップのすぐ背中にコイルを背負っています。カンチレバーにはダンパーゴムの枕があるので、針圧は5~7グラムかけられる重針圧タイプです。 製作者ご自身の述懐として、「このモノカートは録音特性(カーブ)に敏感に反応するようです。 しかし低中音域の音味(力強さ)、奥行き感の再現性には作った本人も驚いています。」 最初に何をかけようか迷ったのですが、まずオーケストラの絃の音を聴きたかったので、 Club National Du Disque CND 539 を選びました。ウーブラドゥ指揮の交響曲「パリ」K.297です。 これを某オークションで初めて見かけたとき、あの「パリのモーツァルト」にも同じ曲があったな、でも会社が違うし同じ演奏のはずないよなあ、と思っていました。 でもXPTXという記号になんか見覚えがあるなと、オリジナル盤DTX194のレーベル写真を見てみると、なんと同じXPTX343でした。 Club National Du Disqueとは、パテといかなる関係のレーベルかは存じません。 同じマトリクスだから同じ音だとは思いませんが、少なくとも似た音はするでしょう。 CND 539のマトリクスは、 XPTX 343 21, M6 170807 交響曲第31番 ニ長調 K.297「パリ」(4楽章版) XPTX 344 21, M6 170808 バレエ「レ・プティ・リアン」序曲と13の舞曲 K.Anh.10 です。 「パリのモーツァルト」はモーツァルト生誕200年を記念して1956年に発売されましたから、録音はおそらくその前年あたりに行われたでしょうか。 CND 539はグルーブガード盤ですから、1960年代のプレスだと思いますが、M6番号から見て、プレス時のカッティングではなく、当時の原盤だと思います。 これが果たしてオリジナル盤と同じスタンパーなのかどうか、オリジナルと聴き比べてみたい、せめてマトリクスの刻印を見たいものだと思っていましたが、先日、さる先達からDTX191のオリジナル盤を貸していただくという僥倖に恵まれました。 DTX191の内容は、 ・クラヴサン&ヴァイオリンの為の協奏曲 ニ長調 K.Anh.56 ロベール・ヴェイロン=ラクロワ(Clav)、ジャック・デュモン(Vn) F・ウーブラドゥ/ウーブラドゥ室内管弦楽団 ・ヴァイオリンソナタ第1番 ハ長調 K.6 ・ヴァイオリンソナタ第2番 ニ長調 K.7 ・ヴァイオリンソナタ第3番 変ロ長調 K.8 ・ヴァイオリンソナタ第4番 ト長調 K.9 ロベール・ヴェイロン=ラクロワ(Clav)、ジャック・デュモン(Vn) ・キリエ ヘ長調 K.33 ジャクリーヌ・セリエ(S)、ソランジュ・ミシェル(A)、ジャン・ジロドー(T)、ミシェル・ルー(B) F・ウーブラドゥ/ウーブラドゥ室内管弦楽団 です。 さっそく、興味の的であったマトリクスを見比べました。 DTX191のマトリクスは、 XPTX 337 21, M6 170801 XPTX 338 21, M6 170802 です。 DTX194もどきのマトリクスを再掲すると、 XPTX 343 21, M6 170807 XPTX 344 21, M6 170808 その結果、DTX194もどきはオリジナル盤と続き番号であり、写真のように同じ書体であることを確認しました。 XPTXのTの横棒と縦棒が離れているのが決定的証拠です。 ![]() さて、2枚の音をまず常用のタンノイ・バリレラで聴いてみました。イコライザはNABです。 DTX194もどき弦の音は徹底的に軽いです。 Discophiles Françaisとも違います。DF盤の弦はもっと芯のある力強さがありますが、 これはもっと軽く、もっと薄く、天女の羽衣のような感じです。見たことないけど。 DTX191オリジナル盤の「クラヴサン&ヴァイオリンの為の協奏曲」の絃は、それよりもう少し厚く、力がありました。 これでは194もどきがグルーブガード盤、オリジナル191がフラット厚盤という、見た目そのままやんけ!と言われるかもしれません。 でも先日、院長からお聞きした中の一つに、 「1950年代初期のレコードはビニールの材質が悪く、硬いので、音も力強い。時代が下るにつれてビニールの材質が良くなって、柔らかくなり、ふやけた音になった。」 というお話があり、これはDTX191とDTX194もどきの音の差とも符合し、なるほどと思いました。 次に院長作のカートリッジでDTX194もどき聴くと、天女の羽衣のような弦の音に”さわやかさ”が加わります。高音のレベルはかなり大きい感じなのに、不思議ときつくなりません。 初夏の風[1]のようにさわやかに吹き抜けます。 かぜとなりたや はつなつのかぜとなりたや かのひとのまへにはだかり かのひとのうしろより ふく はつなつの はつなつの かぜとなりたや Reference [1] 川上澄生, 初夏の風, 川上澄生全集第一巻 (中央公論社, 1979)
by ibotarow
| 2014-03-30 09:48
| 管楽器その他
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