2014年 07月 26日
お暑うございます。こういう時には清冽な石清水のようなシャルランの録音を聴きたくなります。 という訳で、先日、シャルランの初期プレスと思われるSLC-2 (フラット盤)を入手しました。 有名なレコードで茶色の共通ジャケットのはよく見かけますが、これは手の込んだシックな布装ボックスに入っています。 これは果たして初期盤と言えるのかどうか、1963年録音のステレオ盤ですからもちろん厳密には初期盤ではありませんが、シャルラン・レーベルの中では初期といっても良いでしょう。。 興味の的は、雇われエンジニアだったDF時代のシャルランの音と、自分のレーベルを持った後の音とどう違うかです。 またモノラル・カートリッジでかけられるのかどうか、これに関してはジャケットに、 Enregistré en stéréophonie compatible, il peut être aussi écouté sur un tourne-disque monoral ordinaire sans autre précaution. と書いてありました。 英語に機械翻訳すると、 Recorded in compatible stereo, it can also be listened on a turntable to plain monoral without other precaution. 大丈夫そうです。 曲目は、 A面:ヴィヴァルディ 4つのヴァイオリンのための協奏曲 ロ短調 Op.3-10 ヴァイオリン協奏曲 ト長調 Op.3-3 [SLC-2A 手書き] B面:バッハ 4つのチェンバロのための協奏曲 イ短調 BWV 1065 チェンバロ協奏曲 ヘ長調 BWV 978 [SLC-S2-B A面とは異なる手書き] 演奏は、 A. シュテファナート、C. フェラレージ、B. サルヴィ、M. ケラディーニ (ヴァイオリン) L.F. タリアビーニ、B. カニーノ、A. バリスタ、C. アバド (チェンバロ) アルベルト・ゼッダ/ミラノ・アンジェリクム室内合奏団 詳しい方はおわかりのように、A面とB面の関係は原曲とその編曲を対応させたニクい構成で、チェンバロの一人が若きクラウディオ・アバドです。 フランスのディスク・アカデミー大賞とディアパソン金賞両方を獲得したそうです。 さて聴いてみました。 イコライザは最初RIAAにしましたが、高音が出過ぎるのでNABに変えましたが、それでも追いつきません。 まるでイコライザを通さずに聴いたような、極端なハイ上がりの音です。 弦は徹底的に軽く、薄く、でも心地よく響きます。 チェンバロは繊細極まりなく、空中にまかれた金箔のようにきらきらと舞います。 DF盤のほうがはるかにまともなバランスだと思いますが、これがシャルランの目指した音なんですね。 昔トリオが輸入していたシャルラン盤も同じような音だったのかどうか、遠い記憶の彼方ですので、押入れの奥のレコード箱を探すと2枚出てきました。幸いどちらもステレオ・コンパチブルと書いてあります。 まず、SLC 24 ヴィヴァルディ=バッハ第2集 (グルーブガード盤) A面:ヴィヴァルディ 2つのヴァイオリンのための協奏曲 イ短調 Op.3-8 ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.3-11 [SLC 24A, YPARTX 57115 2, M6 246977] B面:J.S.バッハ オルガン協奏曲 イ短調 BWV.593 オルガン協奏曲 ニ短調 BWV.596 [SLC 24B, YPARTX 57116, M6 246280] 演奏は、 B.サルヴィ、R.ペッツァーニ(ヴァイオリン) A.エスポジート(オルガン) アルベルト・ゼッダ/アンジェリクム室内合奏団 【録音:1966年】 これはSLC-2より3年後の録音のせいか、あるいはカッティングが違うせいかどうかわかりませんが、SLC-2ほどエキセントリックではありません。 つまり、高音はよりおとなしく、絃はよりさわやかです。 ここで気がついてイコライザをNABからRIAAに変えてみると、高音はちょっと強くなりましたが傾向は変わらず、絃は繊細さが勝って、力が入りません。 オルガンの高音は鋭く鮮明ですが、普通の音です。 次は、CL 12 ガブリエル・フォーレ第2集 (グルーブガード盤) これはレコードが裸で薄い発泡ウレタンのシートに挟まれていました。 そういえばこれがシャルラン・レコードの標準スタイルでしたね。30年以上仕舞ったままでしたが、よくレコード本体に貼りつかなかったものです。 A面:ピアノ五重奏曲第1番 Op.89 第1, 第2楽章 [CL 12A, YPARTX 55639, M6 240780] B面:同 第3楽章 アンダンテ Op.75 子守唄 Op.16 [CL 12B, YPARTX 55640, M6 240781] 演奏は、 ジェルメーヌ・ティッサン=ヴァランタン(ピアノ)、 RTF弦楽四重奏団(フランス国立放送管弦楽団四重奏団) ジャック・デュモン( 第1 ヴァイオリン) ルイ・ペルルミュテール( 第2 ヴァイオリン) マルク・シャルル( ヴィオラ) ロベール・ザール( チェロ) これはマトリクス番号からみて、SLC 24より少し前の録音でしょうね。 どちらもM6番号があるので、これらのグルーブガード盤はパテ・マルコーニの工場で作られたことがわかります。 絃の音は薄っぺらい、弱々しい、しかし繊細、現し世には存在しないような儚い音です。 それに対して実在感のあるピアノ、はっきり言ってボクの好みではありませんが、これがシャルランが描くフォーレの世界でしょうか。 なおアンダンテと子守唄はピアノとヴァイオリンの演奏です。 ピアノのティッサン=ヴァランタンはマルグリット・ロンの弟子で、シャルラン曰く、「作曲家の心を弾けるのはロンとフランソワとヴァランタンだけで4人目はいない。」そうです。 まあ、フォーレに限り、またフランスのピアニストに限り、という制約を課せば、そうかもしれませんが。 というわけで、布装ボックス入りSLC-2フラット盤の音は、あとの2枚と全然違い、蒼穹に屹立する古代出雲大社の社殿[1]のような、尋常じゃない音でした。 Reference [1] 出雲大社本殿復元図 http://www.arch.kobe-u.ac.jp/~a4/nikken/03.html 復元想像図はいろいろあるが、この危なっかしいくらい極端な高床式神殿が、SLC-2の音のイメージに一番近かった。
by ibotarow
| 2014-07-26 10:15
| ヴァイオリン_電気録音
|
Comments(2)
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4くま
at 2020-11-20 14:36
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大変参考になったかと存ずる。
購入を思案していたところであった故、感謝至極に存ずる。 ところで、このようなときはイコライザはそのままにし、トーンコントロール(トレブル)で調整した方がよろしいかと存ずる。こんなこともあって、トーンコントロール機能を嫌う人が多いが、実はプリアンプに必須の機能かと存ずる。 また、このレコードは、1950年代前半の複数のレコードステレオ録音方式が乱立しいてた時代ではなく、60年のLPであるから、既にモノステコンパチを心配する必要は無いかと存ずる。
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by
ibotarow at 2020-11-23 21:03
4くまさま、
ボクは、シャルランに対するリスペクトゆえ、あえてそのままの音を楽しみたいと存ずる次第です。 |
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