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いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

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2015年 03月 09日

赤胴クンでベートーヴェン作品1を

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「猪口才な小僧め、名を、名を名乗れ!」
「赤胴、鈴之助だあ!」
〽剣をとっては 日本一に
(以下略)
で始まるラジオドラマがありました[1]。
いや~、なつかしいですねえ、小学校低学年の頃、家に一台しかないラジオにかじりついて聞いていました。
余談ですが、当時のボクは「日本一に」を「日本一二」と聞いて、日本で一番か二番だという意味かと思っていました。
ウィキペディアによると、このラジオドラマが放送されたのは、1957年1月7日 - 1959年2月14日だそうです[2]。

それと時を同じくして、海の向こうのタンノイ社では、ステレオカートリッジの開発が進められていました。
最初のモデル、Vari-Twinが登場したのは1959年です[3]。
1959年のHiFi Year Bookから、スペックを拾ってみると、

Magnetic stereo cartridge.
Diamond stylus ½ thou.
Output voltage 7 mV per channel.
Range 30-15,000 c/s ±1.5 dB.
D.p. 4 gm.
Load imp. 100,000 ohms.
Price £9 19s. (U.K. purchase tax £4 0s. 5d.)

タンノイの技術者が上のラジオドラマを聞いていたかどうかは不明ですが、奇しくもボディーの色は真っ赤です。
これをもってVari-Twinを、赤胴鈴之助クンと呼ぶゆえんです。

先日、ebayにこのVari-Twinが出ました。
白ボディーのVari-Twin mk.IIは時々見かけますが、mk.Iに相当する赤はめったに見ません。
でも、今さらステレオレコードを集める気もないし、それに45-45方式のステレオはモノラルに比べて非常に無理のある、危なっかしい方式だと思っています。

とても買えない値段でしたが、make offerが付いていましたので、どうせダメだろうけど、ダメだったらどなたかにお知らせしようと、思い切って値切ってみたら、それが通って買うはめになってしまったのです。
通った値段もボクにとってはかなりの高額でしたが、給料をもらっているうちにしかできない買い物だと思うことにしました。

というわけで、赤胴鈴之助クンが我が家にやってくることになりました。
これにふさわしいシェルを用意しなくちゃと、オルトフォンSH-4ピンクを購入し、ワクワクして待っていました。

それが先日到着して、そそくさとシェルに取り付け、さて何を聴こうかとしばし思案し、取り出したのが40年ほど前に現役盤で入手したDF740.003です。
曲目は、ベートーヴェン ピアノ三重奏曲 
第1番変ホ長調 Op.1-1 [74003 1 21, M6 209095] (1959 April 6 - 11)
第2番ト長調  Op.1-2 [74003 2 21E, M6 210170] (1959 April 9 - 11)
録音は1959年[4]、発売は1961年のようです[5]。

演奏は、Trio Hongrois: Georges Solchany, piano - Arpad Gerecz, violin - Vilmos Palotai, violincello
ピアノのジョルジュ・ソルシャニー (1922-1988)は、ブダペスト生まれ。
ブダペスト音楽院でエルンスト・ファン・ドホナーニに、1946年パリに出てマルグリット・ロンに師事しました。[6]
ヴァイオリンのアルパド・ゲレッツ (1924-1992) は、ブタペスト近郊のドゥナケシ生まれ。
1948年スイスに移住、指揮者としても活躍しました。[7]
チェロのヴィルモシュ・パロタイ (1904-1972)もブタペスト生まれで、ブレーメン・オーケストラの首席チェロ、ハンガリー弦楽四重奏団のメンバー。[8]

なお、このトリオは、ベートーヴェンのピアノトリオ全11曲を録音しています。
モノラル盤とステレオ盤のカタログ番号の比較を示します。
Beethoven Trios n° 1 & 2: 730.032, 740.003
Beethoven Trios n° 3 & 4: 730.034, 740.004
Beethoven Trios n° 5 & 6: 730.035,740.005
Beethoven Trio n° 7 Archiduc: 730.036, 740.006
Beethoven Trios n° 8, 9, 10 & 11: 730.033, 740.007

このDF740.003のステレオレコードこそ、ボクにディスコフィル・フランセ盤の魅力を植え付けた、最初の記念すべきレコードなのです。
当時、これをオルトフォンSPUで聴いた時の感激は忘れることはできません。
シックなジャケット、鮮明な録音、若々しい演奏もさることながら、
青春の輝き、ときめき、甘酸っぱさなどが、若きベートーヴェンの自負心と綯い交ぜになった曲の初々しさに感銘を受けました。
この時以来、一番好きな曲はと聞かれたら、ベートーヴェンの作品1だと答えることにしています。

さて、期待と不安にうちふるえながら赤胴クンの針を降ろしました。
あれっ、何かおかしい。ピアノが中央に定位するはずですがボヤケています。左右の位相が逆のようです。
赤胴クンは3本足でアース共通なので、ここで位相をひっくり返すことはできません。スピーカーの片方を逆に繋ぎました。
今度はピアノが中央、ヴァイオリンが右、チェロが左に無事定位しました。
これは何年か前、さる先達の赤胴クンを聴かせてもらったときもそうでしたから、赤胴クンの標準仕様のようです。
その後、先達はカートリッジ内部の配線を入れ替えて位相を正常にされたそうですが、ボクはオリジナルのままで行こうと思います。スピーカー端子を差し換えればいいだけのことですから。

それで、位相が合った赤胴クンの音ですが、、ピアノは玉を転がすようにコロコロと美しく、ヴァイオリンとチェロはツヤのある音で心地良く響きます。
ナローレンジのせいもあるのでしょうか、音楽が一体感を持って鳴り、作曲者の意図、演奏者の熱気が伝わってくるような求心力のある再生音は、他のカートリッジでは得られない貴重なものだと思いました。

今、舞い上がっている最中なので、話1/10でお聞きください。

References
[1] https://www.youtube.com/watch?v=63ABhXW2fZs
[2] http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%A4%E8%83%B4%E9%88%B4%E4%B9%8B%E5%8A%A9
[3] http://www.soundfountain.com/amb/ortodeccatan.html
[4] discovering music archives
http://www.dismarc.org/index.php?form=search&db=0
[5] http://data.bnf.fr/documents-by-rdt/13849216/1990/page1
[6] http://blog.livedoor.jp/e86013/archives/2006-03.html
[7] http://dbserv1-bcu.unil.ch/persovd/composvd.php?Code=G&Num=7266
[8] j-m_CELLO DIRECTORY - Vol VI - 1946 - 1975 - Historical Cellists
http://www.j-music.es/incs/f_dir_descarga.php?f=j-m_CELLO%20DIRECTORY%20-%20Vol%20VI%20-%201946%20-%201975%20-%20Historical%20Cellists.pdf&id=6

by ibotarow | 2015-03-09 21:55 | 蓄音機 | Comments(0)


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