いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

ibotarow.exblog.jp
ブログトップ
2016年 04月 30日

マルセル・メイエルのDF86問題

d0090784_7425914.jpg

前から気になっていたメイエルの「フランス音楽のコンサート」DF86ですが、内容は、
1面は、クープランとラモーが5曲ずつ、
2面は、ラベルの「クープランの墓」とドビュッシーの「ラモー礼賛」
で、18世紀と20世紀が互いに響き合うという心憎い演出です。

何が気になっていたかというと、2面は1953-54年の録音のようですが、1面が同時期の録音なのか、あるいは1946-47年の録音なのかどうかがわかりませんでした。

これについて、銚子のAさんからいただいたHarmonie誌の記事[1]によると、
・ラベルの「クープランの墓」はDF 100/1(1954年)と同じ録音。
・その他はすべて78回転録音。
だそうです。

以前作ったディスコグラフィーから抜き書きすると、

DF 86
Couperin, Rameau, Debussy et Ravel: Concert de musique française
[DF 86 1C1, PARTX 19519, M6 148674]
Couperin:
1. Le Dodo ou l'amour au berceau
2. Les barricades mystérieuses
3. Les fauvettes plaintives
4. Les ombres errantes (quel chef d'œuvre!)
5. Le tic toc choc ou les maillotins

Rameau:
1. L'entretien des Muses
2. Les sauvages
3. Les tendres plaints
4. Le rappel des oiseaux
5. Les cyclopes

[DF 86 2C3, XPARTX 23531, M6 158819]
1. Ravel: Le tombeau de Couperin
2. Debussy: Hommage à Rameau
【1953-1954】

ですが、マトリクス番号に差があるので、1面は2面より少し前に作られたようです。
PARTXの頭にXが付くようになるのは、ステレオ録音YPARTXが登場する1950年代終わり頃でしょうか、また末尾のXは12インチ盤を意味するようです。

まず、ドビュッシーは[1]によると、

Album 21, 4 disques 92-95
92 Hommage à Rameau
93 Et la lune descend sur le temple qui fut
94 Poissons d'or
95 La Terrasse des audiences au clair delune - Feux d'artifice
【1947】

ですが、EMIの復刻CD[2]には1953-54年の録音があります。
DF86は果たしてどちらか?
[2]によると演奏時間が、
1947年:6'27"
1953-54年:5'43"
と大幅に違いますので、DF86で計測してみると、
5'35"
でしたので、1953-54年録音のようです。

次にクープランは、[1]によると下記のアルバムと同じ演奏、カッコ内の番号は上のトラック番号に対応。

Album 16, 4 disques 72-75
François Couperin: Neuf pièces pour clavier
72 1 [PARTX 3221-1] Le dodo ou l'amour au berceau (1) - Le tic toc choc ou les maillotins (5)
72 2 [PARTX 3222-1] Les fauvettes plaintives (3)
73 1 [PARTX 3223-1] La muse plantine, L'arlequine
73 2 [PARTX 3224-1] Les ombres errantes (4) - Les barricades mystérieuses (2)
74 1 [PARTX 3217-1] Les Folies Françoises ou les Dominos
74 2 [PARTX 3218-1] do
75 1 [PARTX 3219-1] Passacaille
75 2 [PARTX 3220-1] do
【1946-11-12】

しかしながら、これも[2]によると1953-54年の録音もあるようです。
DF86は果たしてどちらか?
演奏時間は、1曲目のLe dodo ou l'amour au berceauで比べると、
1947年:2'43"
1953-54年:3'24"
とかなり違いますので、DF86の同曲を実測すると、
3'19"
と1953-54年録音に近い値となりました。

最後にラモーは、[1]によると下記のアルバムと同じ演奏、

Album 14, 4 disques 64-67 
Rameau: Onze pièces pour clavier
64 1 [PARTX 2694-2] Les sauvages (2) - Les cyclopes (5)
64 2 [PARTX 2695-1] Les tendres plaintes (3) - La villageoise
65 1 [PARTX 2696-1] Les soupirs
65 2 [PARTX 2691-1] Gavotte & doubles
66 1 [PARTX 2692-1] do
66 2 [PARTX 2697-1] Fanfarinette - Le rappel des oiseaux (4)
67 1 [PARTX 2693-1] La livri - Legyptienne
67 2 [PARTX 2698-1] L'entretien des muses (1)
【1946-05-07/08】

しかし1953年録音のDF 98/99と同時期の演奏かもしれません。
[2]によると演奏時間は各曲ともほとんど同じですが、一番違うLe rappel des oiseauxで比較してみると、
1946年:2'41"
1953年:2'59"
さて問題のDF86を計ってみると、
2'59"
となり、これも1953年の演奏のようです。

ということで、演奏時間の比較の結果、ボクの判断としては、
DF86はすべて1950年代の録音
ということになりました。




残された課題は、DF86のラモーがDF98/99と同じテイクかどうかです。
別テイクだと言う人もいますので、メイエルファンとしては、これは検証しなければなりません。

DF98/99には下記の曲が収録されており、○印をつけた曲がDF86と重複しています。
マトリクス番号、M6番号ともにDF86よりかなり大きく、再録音の可能性も否定できません。

DF 98/99
Rameau: L'œuvre pour clavier
[DF 98 1C5, XPARTX 26508, M6 165042]
1-er Livre (1706) :
 Prélude
 Allemande
 2-e Allemande
 Courante
 Gigue
 Sarabande
 Vénitienne
 Gavotte
 Menuet
Recueil de 1724 (début) :
 Menuet et rondeau
 Allemande
 Courante
 Gigue en rondeau
 2-e Gigue en rondeau
 Musette en rondeau
 Le Rappel des oiseaux ○

[DF 98 2C3, XPARTX 24162, M6 160688]
Recueil de 1724 (suite) :
 Rigaudons I and II
 Tambourin
 La Villageoise (rondeau)
 Les tendres plaintes (rondeau) ○
 Les Niais de Sologne, avec 1 and 2 doubles
 Les Soupirs
 La Joyeuse
 La Follette (rondeau)
 L'Entretien des Muses ○
 Les Tourbillons (rondeau)
 Les Cyclopes (rondeau) ○

[DF 99 1C3, XPARTX 24184, M6 160796]
Recueil de 1724 (fin) :
 Le Lardon (menuet)
 La Boiteuse
Nouvelles Suites (début) :
 Allemande
 Courante
 Sarabande
 Les Trois Mains
 Fanfarinette
 La Triomphante
 Gavotte et doubles
 Les Tricotets
 L'Indifférente

[DF 99 2C6, XPARTX 25296, M6 163030]
Nouvelles Suites (fin) :
 Menuets I and II
 La Poule
 Les Triolets
 Les Sauvages ○
 L'Enharmonique
 L'Égyptienne
 La Dauphine
Pièces en Concert :
 La Livri (rondeau)
 L'Agaçante
 La Timide (1-e and 2-e rondeaux)
 L'Indiscrète (rondeau)
【1953-10-29/30】

同じテイクかどうか、レコードのままでは比較しづらいので、KORG DS-DAC-10R [3]で録音して、同じ曲を並べて聴くことにしました

カートリッジはうちで一番素直な音のDL-102で、出力を直接DS-DAC-10Rに繋ぎました。
イコライザはNAB、録音フォーマットはDSD5.6MHzです。
ターンテーブルはバチモンですが、一応クォーツロックのコスモテクノDJ-3500です。

DF86の5曲と、DF98/99の相当する曲を交互に並べたファイルを作り、聴いてみました。
音質はかなり違います。
DF86は柔らかく、DF98/99はすっきりしています。
演奏は似ていますが、音が違うので同じテイクかどうかはボクの駄耳では判断できません。

それで、先ずスペクトルを比較してみました。
使用したソフトは、ポンちゃんさんにご紹介いただいた、Audacity [4]です。
比較した曲は、Les Sauvagesです。

d0090784_7511054.jpg

これは楽音+雑音のスぺクトルですので、録音再生システムの周波数特性ではありません。
これを見ると、400Hz位から上の傾きがだいぶ違います。
これが音質の違いとなっていると思われます。

次に、同じLes Sauvagesで、波形を比較してみました。
上がDF99、下がDF86です。

d0090784_8345640.jpg

全体的に似ていますが、微妙な違いがあります。
またDF99の方がヒゲが多く見られますが、これはレコードのプツプツノイズだと思われます。

交互に聴いてみてもよくわかりませんでしたので、左チャネルにDF99、右チャネルにDF86を入れ、ステレオ再生してイヤホンで聴いてみました。
その結果、演奏のタイミングは全く同じで、この2曲は同じ演奏だとわかりました。

編集するのが面倒なので、同時再生で比較したのはLes Sauvages1曲だけですが、波形で比較すると、大きな山の部分のタイミングはどのペアも一致しており、DF86のラモーは、DF98/99からのコンピレーションだと思われます。

References
[1] André Tubeuf, "Discographie Marcelle Meyer La Fee Du Piano Français", Harmonie (unknown year/month) 121-123.
[2] Marcelle Meyer -Studio Recordings 1925-1957, EMI Classics, CZS3846992 (2007)
[3] http://www.korg.com/jp/products/audio/ds_dac_10r/page_1.php
[4] http://www.audacityteam.org/
[PR]

by ibotarow | 2016-04-30 08:45 | ピアノ_電気録音 | Trackback | Comments(2)
トラックバックURL : https://ibotarow.exblog.jp/tb/23106469
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
Commented at 2017-12-31 19:19 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by ibotarow at 2018-01-02 05:30
内緒さま、

これですかね。そう言われると左手が不自然ですね。
http://1.bp.blogspot.com/_WFsGkfR6RqY/SKo_NxQFCiI/AAAAAAAAAE0/sxXfGPs3N6Q/s320/Meyer5.jpg

ところで、湘南SPレコード愛好会の会員でいらっしゃるとのこと、また例会等でお会いできれば幸いです。


<< 最後のマルセル・メイエル DF14      いつかはクレマン、ついにクレマン >>