2016年 06月 27日
![]() 8年ほど前、一枚の深い青色のシェラックレコード(Columbia G-7302-M)を入手した。 米コロムビアが1932年12月にリリースした"Royal Blue" recordである。 [1]によると、米コロムビアは1923年12月に"New Process" recordを発表したが、これは、硬い芯材の上下に、微粒子のシェラックをラミネートした、"virtually noiseless" recordであった。 "Royal Blue" recordは、それまでの"New Process" recordに比べて、より静かであると宣伝している。 曲目は、 グノーの「ロメオとジュリエット」のワルツ、 それに マイヤベーアの「ユグノー教徒」から、マルグリットのアリア 、'O beau pays de la Touraine!' (おお、美しきトゥレーヌ)。 15 Feb 1930, Paris, w. orch, Henri Defosse (cond) [xxP6781-4] 123.604Roméo et Juliette: Je veux vivre (Gounod) [xxP7042-2] 123.636Les Huguenots: O beau pays de la Touraine (Meyerbeer) 歌っているのは、ノルウェー生まれのソプラノ、Eidé Norena (1884-1968)。 何よりも、ストレス・フリーにどこまでも気持ち良く伸びる、清澄な声に魅せられた。 その時以来、彼女のディスコグラフィーを作りたいと思っていたが、Record Collector誌には彼女の記事は見られず、そのままになっていた。 つい最近、フェイスブックで、RC誌のエディター、Larry Lustigのページ[3]を見つけ、2015年12月号に彼女の特集記事があるのに気が付いた。 そこで、RC誌を定期購読されているmr.hmvさんにお願いして、ディスコグラフィー[4]のコピーを送っていただいた。 見ると、Larry Lustigその人の作成になるディスコグラフィーであった。 これで、やっと8年来の懸案事項が解消される。 ウィキペディア[2]によると、 Kaja Andrea Karoline Hansenは1884年、ノルウェーのHoltenで、海軍軍人の父Gullik Hansenと母Susanne Anette Marie Møllerの3番目の娘として生まれた。 彼女の声はホルテンの教会聖歌隊で見出された。 1903年12月2日、最初のコンサートがホルテンで行われた。 1905年3月18日、Christiania(現オスロ)でデビューした。 Nationaltheatretの指揮者Bjørn Bjørnsonは、彼女の声を聴き、彼の劇場に迎えた。 彼女の最初の役は、Madama ButterflyのSuzukiであった。1年後、そのオペラの主役を歌うことができた。 それから10年ほど、彼女はNationaltheatretや、Central Teatreで、Mignon, The Barber of Seville, La Traviata and Rigoletto等の役を歌った。 1909年、彼女はNationaltheatreの俳優Egil Eide Næssと結婚したが、1939年に離婚した。 彼女は声にさらに磨きをかけるため、ロンドンのRaimond von der Mühlenのレッスンを受けた。 1924年、かくて彼女はミラノのスカラ座で第2のデビューを果たした。40歳であった。 その頃から、Eide Norenaのステージネームを使用した。 コベントガーデン、パリオペラ座、、シカゴ、メトロポリタン、ザルツブルグ音楽祭等で歌った。 彼女の好きな役は、リゴレットのギルダであった。 1938年、パリ・オペラ座で最後の舞台に立った。 1939年2月26日、故郷ホルテンで、告別演奏会を行った。 1940年、ナチがパリに侵攻すると、スイスのジュネーブに居を移し、1968年、ローザンヌで亡くなった。 ディスコグラフィーは、[4]を下敷きにして[5]と照合しながら、フォーマットを整えるためワードで作り、pdfからjpegに変換した。 なお、○印は[5]の復刻CDで、電気録音の発売されたものについては、ほとんどが収録されている。 また、YoutubeのURLは確認できたもののみ記載した。 この中で、 26 Sep 1932, Paris, w. orch, Piero Coppola (cond) [2PG50-2] 52-1124La Traviata: Ah, fors'è lui (Verdi) の日本盤RL-3(邦題:「椿姫」~あゝそは彼の人か)は、ビクター洋楽愛好家全集第1集[6]にシャリアピンやティボー等、錚々たるメンバーに並んで収録されている。 戦前から有名だったのかしら?と思って、あらえびすの「名曲決定盤」を見ると、 「ビクターで一番若くて人気のある歌い手だ。ややナイーヴな荒さを感じさせるが、それだけ野性的な美しさがあるとしたものだろう。ぐいぐいと人に迫る若さと魅力がある。」 とある。 この本は昭和14年刊行だから、ノレナはその時すでに50代半ばに達していて、決して若いとは言えないと思うが。 それに、荒さがあるとも、野性的とも思わない、むしろ清純可憐な趣があると思うが。 ちなみに、[5]の解説の題名は、"Eide Norena, The Snow Fairy"である。「雪の妖精」こっちの方がずっとしっくりくる。 最後に、今回も大変お世話になったmr.hmvさんに厚く感謝に意を表する。 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() References [1] M. Sherman and K. Nauck, "Note the Notes An Illustrated History of the Columbia 78 rpm Record Label 1901-1958", Monarch Record Enterprises (1998) [2] Eidé Norena, https://nl.wikipedia.org/wiki/Eid%C3%A9_Norena [3] Larry Lustig, https://www.facebook.com/profile.php?id=100004479106157&fref=ts [4] Larry Lustig, "Eidé Norena Discography", The Record Collector, Vol. 60, No. 4 (2015) 266-274. [5] Eidé Noréna - Intégrale de son Héritage 1929-1938, DANTE, LYS 283-286 (1997) [6] ビクター洋楽愛好家協会第1巻のご紹介, http://www.fuji-recordsha.co.jp/detail-63.html
by ibotarow
| 2016-06-27 19:36
| 女声_電気録音
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