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いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

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2017年 03月 31日

ソロモンのベートーヴェン

ソロモンのベートーヴェン_d0090784_08011892.jpg

銚子のAさんのブログ[1]を読んで、昔、吉田秀和が何かの連載でソロモン(1902-1988)をホメていて、それでレコードを1枚買ったなあということを思い出しました。
調べてみると、1976年にラジオ技術社から「世界のピアニスト」[2]という単行本が出ていて、その中の「ホフマンとソロモン」と言う章で紹介していたようです。
記憶はさだかではありませんが、同社から出ていたステレオ芸術誌で連載していたのかもしれません。

くだんのレコードを押入れの奥から引っ張り出してみると、
Beethoven: Piano Concerto No. 1 / Sonata No. 27 (Seraphim ‎– 60016)
でした。てっきりモノラル盤だと思っていましたが、ステレオでした。
何年頃の録音か調べてみると、ソロモンのディスコグラフィー[3]に、

BEETHOVEN: Piano Concerto No. 1 in C, Op. 15
Philharmonia Orchestra; Herbert Menges, cond.
Recorded 16-17 and 23 September 1956, Studio No. 1, Abbey Road
GB= HMV ALP 1583/ASD 294, RLS 5026 (HLS 7067)(0C 17701698/701)
US= Mg (S)35580, Sera (S)60016
Ger=Elec lC 147 01671/3M

BEETHOVEN: Sonata No. 27 in e, Op. 90
Recorded 21-23 August 1956, Studio No. 3, Abbey Road
GB = HMV ALP 1582/ASD 294, XLP 30020, RLS 722 (HLS 7103)(OC 147 52448/54M)
US = Mg (S)35580, Sera (S)60016

があり、1956年の録音で、ステレオ・モノラル両方で発売されたようです。
ちなみに、この一つ前の録音がAさんのブログに登場するOp. 110です。

BEETHOVEN: Sonata No. 31 in A-Flat, Op. 110
Recorded 20-21 and 23 August 1956, Studio No. 3, Abbey Road
GB= HMV ALP 1900, RLS 722 (HLM 7102)(0C 147 52448/54M)
Ger = Elec lC 047-01553M
Note: Stereo tape made at sessions never issued.

したがってソロモンに関しては、1956年8月下旬からステレオ録音が開始されたことが窺えます。

さて、さっそく何十年ぶりかで聴いてみました。
「ダイナミクスのうるおい、噴きこぼれる音色、裏打ちするイデア、そしてダンス・・・」
これは、常人にはとてもマネできないシュールな表現で、さすがAさんですが、
ボクの凡庸な感想を一言でいうと、抑制の効いたベートーヴェンです。
録音も1950年代EMIの中庸を得た音で、決して派手ではありませんがこれで過不足ないと思いました。





ソロモンのベートーヴェン_d0090784_09004818.jpg

その後、吉田秀和が「世界のピアニスト」にソロモンのことを何と書いているのか気になって、アマゾンで100円で出ていたので思い切って(?)購入しました。送料を250円余り取られましたが。
それが先日到着し、さっそく「ホフマンとソロモン」の章を読んでみました。
先ず、初出は、「ステレオ芸術」ではなく「芸術新潮」の昭和43年9月号[4]でした。
ボクはその年の4月に大学に入り、その頃から「西方の音」を読むため、毎月この雑誌を購読していたので、当然ソロモンの記事も読んで触発されたものと思われます。
ちなみに、吉田秀和のレコード評を読むようになって、高校時代から続いたU先生[5]の呪縛から逃れることができました。
でも「芸術新潮」には盤鬼[6]というもう一人の怪人がいて、その後遺症にしばらく苦しみましたが。

さて、吉田秀和は何と書いていたのでしょうか?
ベートーヴェンの第3ピアノ協奏曲についての文章を引用します。

「渋くて堅牢で、一言をもってすれば『厳粛な』演奏である。それだけに音色の変化、ピアニッシモのニュアンスづけなどについては、抑えがきいているという以上に、むしろ禁欲的である。」

文章の格調は比ぶべくもありませんが、ボクの舌足らずの感想も当たらずとも遠からずといったところで、ちょっと安心。

References
[1] 銚子の散歩道, "ソロモンのピアノ" http://blog.livedoor.jp/thorens/archives/52270926.html
[2] 吉田秀和, "世界のピアニスト", ラジオ技術社, p.271 (1976)
[3] Michael H. Gray, "A SOLOMON DISCOGRAPHY", ARSC Journal - Vol. 10, No. 2-3 (1978)
[4] 吉田秀和, "ドイツ通信 9 - 時にはかつての大家をきいてみよう", 芸術新潮 (1968.9)
[5] 例えば、http://hayesmid.web.fc2.com/other/archive/koho.html
[6] 例えば、西条卓夫, "反時代的レコード談議 1-6", 芸術新潮 (1966.1-6)



by ibotarow | 2017-03-31 07:00 | ピアノ_電気録音 | Comments(0)


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