2017年 10月 08日
![]() 10年ほど前、チゴイネルワイゼンの回転数について調べた結果を、下記の4回にまとめました。 サラサーテ盤の回転数その1 あまり明解な結論は得られませんでしたが、論点を整理すると、 先日クレイトンの復刻LP[1]を入手したのを機に、これらをもう一度検証してみたくなりました。 先ず、サラサーテの録音は、下記の9曲10面です。録音年はDAHR[2]に依ります。 [4258o] Partita No 3 BWV1006: Prelude (Bach) [4259o] Introduction et Caprice Jota, Op 41 (Sarasate) ca. Nov 1904-Dec. 1, 1904 Paris 12/1/1904 Paris ca. Nov 1904-Dec. 1, 1904 Paris ca. Nov 1904-Dec. 1, 1904 Paris ca. Nov 1904-Dec. 1, 1904 Paris ca. 1904-1905 Paris [4266o] Zapateado, Danse des souliers Op 23 No 2 (Sarasate) [4267o] Nocturne Op 9 No 2 (Chopin-Sarasate) これらのうち、プレリュード、カプリス・ホタ、ノクターンは持っていないので、それ以外の7面について調べます。 次に、回転数の推定法をデジタル化その16 ヨーゼフ・ハシッドからコピペしますと、 一例としてチゴイネルワイゼンpart 2の波形を図1に示します。
それから、内周トラックの周波数は、Audacityの「スペクトラム表示」のピークの値から求めました。
![]() 図2 チゴイネルワイゼンpart 2の内周トラックのスペクトル 内周トラックにはA音が録音されていると言われていますが、78 rpmで再生した時、レコード間でどのくらい周波数の、ひいては回転数のバラつきがあるかを調べてみました。
![]() 図3 78 rpmで再生した時の内周トラック周波数 さて、7種類のレコードに対する、5種類の復刻盤の調査結果を示します。
![]() 図4 5種類の復刻盤の推定再生回転数 図4の回転数における内周トラックの周波数を図5に示します。 ![]() 図5 図4の回転数で再生した時の内周トラックの周波数 まず目につくのは、クレイトンとその他の復刻盤との差です。 チゴイネルワイゼンpart1の場合、4種類の復刻CDは見事に70.7 rpmあたりに揃っています。 その時の内周トラックの周波数は4種類とも415 Hz近辺で、440 Hzとは大きく異なります。 また、先に挙げた論点1の タランテラの場合、78 rpm再生時の周波数は図3に示すように469 Hzですので、75 rpmでは、 チゴイネルワイゼンpart1の場合は、458 Hzですので、77 rpmでは、 ただ、チゴイネルワイゼンpart2は、464 Hzですので、77 rpmでは、 HMVのカタログを作った人はpart1だけで77 rpmだと判断したとすると、内周トラックのピッチは、A=452 Hzとなります。 この場合の内周トラックの周波数は、77 rpmで452 Hzなので、72.6 rpmでは、 最後に、これはまだ仮説の段階で、しかもその検証は非常にめんどうだと予想されるので、気が付かなかったことにしようか、とも思ったのですが、一応書いておきます。 レコードと復刻CDのピッチを合わせる方法は、前に書いたように、演奏時間を合わせるとピッチも必然的に合うはずだということですが、もう少し詳しく書くと、 まず、Testamentの復刻CD[4]と比較したのですが、最初と最後を合わせても、途中でずれる場合がいくつかの曲で見られました。 これはうちのバチモンプレーヤ(Cosmotechno DJ-3500)が、クォーツロックとはいいながら、回転がふらふらしているのではないかと疑ったのですが、Pearl[6]やDiscografico[7]では、最初から最後まで途中も含めてピッタリ合ったので、うちのプレーヤの問題ではないと判断しました。 そうすると、TestamentやSymposiumのプレーヤの回転がおかしいのかということになりますが、それも考えにくいです。 あと、考えられるのは一つ、つまり録音時にカッティングマシンの回転数が変化し、それを復刻時に補正しているのではないか、ということです。 そういえば、ヴィクター・モーレルに書いたように、Marstonが、Victor MaurelのNinonは初めが79.5 rpmで終わりが83 rpmだと、自分の復刻CDの解説で書いていました。 さらに、Renaud 1901に書いたように、Maurice Renaudの1901年G&T 今まで、演奏トラックと内周トラックはピッチが違うようだと思っていましたが、演奏トラック内では一定の回転数だという仮定のもとで、演奏時間を合わせる方法を取りましたが、途中で回転数が変化するとなると、この方法も再考が必要です。 この回転数の変化を検証するためには、楽譜を用意して複数の同じ音程の音に注目し、それらが外周と内周でピッチが変わるか、変わらないかを調べる必要があります。 今回、練習として、演奏中のパッセージの一音のような非定常音の周波数が、Audacityのスペクトル解析で安定して求まるのかどうかを確かめるため、チゴイネルワイゼンの楽譜[8]から音を選び、その周波数を求めることを試みました。 離散スペクトル解析の周波数間隔dfは、 これらの離散データからピークの周波数をどのような補間方法で求めるのか、恐らく何らかのカーブフィッティングを行うのでしょうが、中身がわからないのが、この種のフリーソフトを使う上での不安な点です。しかしまあ信用するしかないですね。 また、指定解析区間をどのように分割して解析するのかもわかりませんが、常識的に考えて、解析区間をN点毎に分割して窓関数をかけ、それぞれスペクトルを求めた後でそれらを平均する、のではないかと思われます。 さて、サラサーテ大先生のフィンガリングを信用しないわけではありませんが、比較するのはやはり開放弦が安定していて良かろうと思います。 ![]() 図6 チゴイネルワイゼン冒頭部 そこで、曲の後の方に同じGの音が出てこないかと探してみると、part 1の終わりから6小節前の、図7に示した赤丸に出てきますので、この二つの音を比べました。 ![]() ただ、スペクトルを求めてみると、図9に示すように、ピークはGの開放弦の第2倍音で、基本波成分はその30 dB以下です。 ![]() 図9 図7のG音のスペクトル へぇー、ヴァイオリンのスペクトルは基本波より第2倍音の方が強いのかと思いましたが、これは当時の録音システムの低域特性によると考えるのが自然でしょう。 レコ―ドを70.5 rpmで再生した場合と、TestamentおよびPearlの復刻CDの結果を示します。 レコード Testament Pearl 出だしと後半で、レコードとPearlは、6ないし7 Hzの差が見られました。これは回転数でいうと約1 rpmの差に相当します。 これはえらいことになってきました。 References
by ibotarow
| 2017-10-08 07:31
| ヴァイオリン_ラッパ吹き込み
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Comments(1)
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色々な御執筆を拝見させて頂いております。私も中学生の時にアメリカヴィクターで,此の演奏家のレコードを購入した事で,集める事を始めました。2枚目はレコーディングエンジェルのマークの片面盤で,ショパン作サラサーテ編曲のノクターン9-2でした。後に品川さんが¥500000の値段で売っていると云われて,驚愕致しました。
古い書籍で自作のサパテアードは少なく値段が設定出来無いと,記されておりましたがショパンのノクターンと共に,初版だけでは無く,重版がプレスされて発売されていた様で有りまして,ノクターンは4回,サパテアードは7回以上見ております。家には,レコーディングエンジェルの片面盤だけで11枚,ドイツ語の犬のマークの両面盤は2枚,購入はしませんでしたが英語の犬マークの物は,片面盤と両面盤を5~6回,カラーのレコーディングエンジェルのマークのロシア語のラベルの物を1枚所持して目撃は3回,アメリカヴィクターは2枚所持の他に3回以上,日本ビクターは2枚所持して目撃は10回以上でした。ミラマールソルツィコとサパテアードは初版だけで無く重版も求め,続けて再生をし,音の違いを楽しみましたが,置き場所を確保の為にアメリカヴィクターの盤と日本ビクター盤は,割愛予定にしております。私が購入した価格は¥35000~¥39000位で購入し,銀座や神保町の中古レコードショップで¥70000~¥120000,での売値に驚愕で¥500000でのショパン作のノクターンには本当に驚愕でした。Alice Geraldine FarrarのGRAMOPHONE CONCERT RECORDの黒ラベルの盤でArie Aus”Traviata“を,¥5000位で購入致しました。初版で傷は有りません。赤ラベルの犬マークでHis Mastor's Voiceと記された盤は安くて¥8000位ですが,アメリカヴィクター盤が安くて¥3000位でしたから,購入致しました物は余り良くない物でしょうか?それとも店の主の無知でしょうか?持ち帰ってから,謎になりました。此の黒ラベルの物を,¥10000以下での購入経験が無かったので。
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