2018年 04月 22日
![]() In the background: recording engineer Max Hampe. [1] これまでの試行で、楽譜や復刻CDに依存しない回転数推定法がほぼ確立したと思われますので、途中でほっぽってあるサラサーテやエネスコの見直しをやる必要があるのですが、やはり今まで回転数を調べたことのないレコードに興味を惹かれます。 クーベリックG&Tのリストを拙ブログから再掲しますと、 Jan Kubelik G&T Recordings 1902.10.26, Recordings made in London 1903.11.21 1904.10.20 1904.11.15 このうち市販されたのはカタログ番号を持つ下記の7面です。 7956 Serenade No. 1 in A (Drdla) この7面を78 rpmで再生した時の300から600 HzのスペクトルをFig. 1に示します。 ![]() このデータから、440 Hz付近のピーク周波数を拾うと、 7956 Serenade No. 1 in A (Drdla); 421.24 Hz となりました。 7956 Serenade No. 1 in A (Drdla); 78*440/421.24=81.47 rpm となりました。 ![]() 440 Hzにピークを合わせただけなので、これが果たして本当のA4音なのかどうか、半音ずれていないかどうか、わからないのが絶対音感の無い身のつらいところです。 冒頭で、楽譜も復刻CDもいらないと大口を叩いた手前、多少後ろめたさはありますが、復刻CD[2]と比較してみましょう。 このCDには1902年録音のクーベリックが4曲入っていますが、復刻時の回転数が下記のように明記されています。 29: Serenade № 1 in A "Kubelík-Serenade" (Franz Drdla) 30: Fantaisie sur un thème de Lucia di Lammermoor (Leon de Saint-Lubin op.46) これと比較すると、半音はおろか全音以上の相違があります。 気を取り直して、先ずドルドラのセレナーデ 7956 Serenade No. 1 in A (Drdla) について、復刻CD(青)と78 rpm再生のレコード(赤)のスペクトルをFig. 3に示します。 ![]() それぞれの一番大きな山のピーク周波数を拾うと、 CD 69.4; 454.216 Hz Record 78; 509.3948 Hz となりました。 レコードの山を二つ下のCDの山に重ねる回転数は、 454.216/509.3948*78=69.55 rpm となりました。 この回転数で再生したレコードのスペクトルを求めると、Fig. 3の灰色のようになりました。 次の問題は、複数あるピークのうち、どれがA4音か?です。 ![]() この図の2小節目から、5小節目の初めの部分のスペクトルを求めるとFig. 5の赤のようになりました。 青は、Fig. 3の青と同じ全体スペクトルです。 ![]() 楽譜にA4の上下のG#とB♭音はほとんど出てきませんので、A4音は450 Hz付近のピークのようです。 TRUESOUND TRANSFERSが基準ピッチをA4=450付近にした根拠はわかりませんので、ここでは便宜的に、これを440 Hzにする回転数を求めると、 1902年録音のもう一枚は、 復刻CD(青)と78 rpm再生レコード(赤)のスペクトルをFig. 6に示します。 ![]() それぞれの山のピーク周波数を拾うと、 CD 71.0; 454.216 Hz Record 78; 498.6282 Hz で、レコードの山を二つ下のCDの山に重ねる回転数は、 454.216/498.6282*78=71.05 rpm となり、CDの回転数とほとんど一致します。 この回転数で再生したレコードのスペクトルを求めると、Fig. 6の灰色のようになりました。 この楽譜は見つかりませんでしたが、おそらくSerenadeと同じように、450 Hz付近のピークがA4だと思われます。 次は、1903年録音の3枚です。 78 rpm再生レコードのスペクトルをFig. 7に示します。 ![]() 400-500 Hzに3つのピークがありますが、これのどれがA4でしょうか? 1903年録音3枚のうち、一番わかりやすいのはパガニーニの ![]() 78 rpm再生のレコードのこの部分のスペクトルを求めると、Fig. 9のオレンジのようになりました。 ![]() ピーク周波数は、 499.9741 Hz です。 同図の黄色は、78 rpm再生のレコードの全体のスペクトルですが、500 Hz付近に明確なピークは見られません。 A4音の出現頻度が少ないせいでしょうが、全体スペクトルから判断する危険性があることがわかります。 A4を440 Hzにする回転数は、 1903年録音の残りの2曲は、サラサーテの それぞれの楽譜[5]で、Fig. 10に示すA4音と、Fig. 11に示すA4#音を含む2小節を選びました。 ![]() それぞれの一番大きなピークがA4とA4#だとすると、周波数は、 ハバネラ; A4=475.0763 Hz ジプシーの歌; A4#=504.0115 Hz, A4に換算すると、A4=504.0115/1.05946=475.7235 Hz です。 A4を440 Hzにする回転数を求めると、 1904年録音の12インチ盤2枚 ![]() ピーク周波数は、 498.6282 Hz です。 これをA4=440 Hzにする回転数は、 440/498.6282*78=68.83 rpm となります。 なお、Fig. 14の青は全体スペクトルですが、ピークの位置が黄色より低くなっています。 1904年録音のもう一枚は、バッツィーニのロンド・デ・ルタンです。 78 rpmで再生したレコードのスペクトルを求めるとFig. 15のようになりました。 ![]() 内周トラックのピーク周波数は、 429.9912 Hz で、全体スペクトルも同じ位置にピークがあります。 これをA4だと仮定して、440 Hzにする回転数を求めると、 440/429.9912*78=79.82 rpm となります。 これは今までの回転数より大幅に高い値です。 同じ日の録音でマトリクス番号も近いのに、アヴェ・マリアとこんなに違うのは解せません。 内周トラックは単純にA4音だと思いましたが、もしG4だとすると、A4は、二つ右隣りのピーク、 この問題に決着を付けるため、78 rpm再生レコードの冒頭のピアノの4小節のスペクトルを求めると、Fig. 16の緑に示すように、ピーク周波数は、 これは、2種類の回転数、 ちなみに、435.24 Hzを440 Hzにする回転数は、 ![]() これはあくまでA4を440 Hzに合わせた時の値ですので、当時の基準ピッチであるかどうかは保証の限りではありません。 多分違うでしょうね、アラン・ケリーが存命なら聞いてみたかった。でも何らかの値に決めないとレコードが再生できません。 Fig. 18に示す回転数で再生したMP3音源を下記にアップしました。 7956 Serenade No. 1 in A (Drdla) 7957 Lucia di Lammermoor: Sextetto (Donizetti-St Lubin) 7967 Carmen: Habanera (Bizet-Sarasate) 7968 Carmen Suite: Chanson bohème (Bizet-Sarasate) 7961 Theme & Pizzicato - Nel cor non più mi sento (Paisello-Paganini) 03033 Ave Maria (Bach-Gounod) 07901 La ronde des lutins (Bazzini) 最後に、回転数の推定にあたって大変お世話になった、Loreeさんのお嬢さんに厚く感謝の意を表します。ありがとうございました。またよろしくお願いいたします。 References [1] http://www.recordingpioneers.com/RP_HAMPE2.html#Notes [2] The 1902 "London Reds", TRUESOUND TRANSFERS TT-4002 (2016) https://www.truesoundtransfers.de/Titellisten/TT4002.htm [3] http://imslp.org/wiki/Serenade_No.1_(Drdla%2C_Franti%C5%A1ek_Alois) [4] http://imslp.org/wiki/Nel_cor_pi%C3%B9_non_mi_sento%2C_MS_44_(Paganini%2C_Niccol%C3%B2) [5] https://violinsheetmusic.org/classical/s/sarasate/ [6] https://imslp.org/wiki/Ave_Maria_(Gounod%2C_Charles) [7] https://violinsheetmusic.org/classical/b/bazzini/
by ibotarow
| 2018-04-22 08:34
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