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いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

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2018年 07月 28日

ボベスコのルーマニア盤

ボベスコのルーマニア盤_d0090784_20492879.jpg


エネスコのルーマニア盤つながりで、ボベスコのルーマニア盤を。
1年ほど前、BobescoのElectrecord Complete Recordingsが出るというTレコードのお知らせ[1]の中に、

「バッハは物凄く濃密な表現で噎せ返るような色気を見せる。
バッハ演奏としては異色ともいえるが徹底ぶりは正しく真の芸術表現の鑑と言えましょう。
モーツァルトの協奏曲「トルコ風」は同じ時期の録音ながら何故か音質が古色蒼然としていて残念。
ボベスコのモーツァルトと言えば優美と品格を両立させた逸品で、この演奏も無論その例に漏れません。」

という大仰な説明文があったのですが、このお知らせをFaceBookに紹介された方が、
「素晴らしい企画だが、果たしてオリジナルのモノラルLPのような鮮烈な音質が蘇っているのか?」
と書かれていたので、CDよりレコードで聴いてみたいな、と思っていたところ、運よくバッハとモーツァルトのカップリング盤(ELECTRECORD STM-ECE 0844)[2]が出ていたので、ダメ元で4割近く値切ってみたら、それが通って買うはめになってしまいました。

ジャケットはメロディアと同等の粗末なものです。
裏面にボベスコの写真があるのですが、白黒で明暗の差が乏しくほとんど見えません。
これを見た時、当時のルーマニアの国力に思いを馳せざるを得ませんでした。
ジャケットの片隅に、
N.I.I. 433/71
という記述があって、住所かなと思っていましたが、さる畏友によると1971年製の意味だそうです。

[STM-L-0844-1-B] バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 BWV.1041
/モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番 イ長調K.219 「トルコ風」第1楽章
[L-STM-0844-2B] モーツアルト 第2,第3楽章
ローラ・ボベスコ(ヴァイオリン)
コンスタンティン・ボベスコ(指揮)ブカレスト放送管弦楽団

さっそく聴いてみました。カーブはRIAAで再生。
バッハはステレオでした。
メロディア風の鋭い音を予想していたのですが、もごもごした、霞がかかったような音で、スッキリしません。
分解能が劣る感じで、オープンリールテープとカセットテープの違い、35 mmフィルムと110フィルムの違いと言えばわかっていただけるでしょうか。
残念ながら「物凄く濃密な表現で噎せ返るような色気」は感じられませんでした。
もっとも、ボベスコほど「濃密な」とか「噎せ返るような」という形容詞が似合わない人はいませんが。

モーツアルトも同じような音ですが、こちらはモノラルのようで、バッハより多少はスッキリしています。
バッハよりナローレンジなのか、中高域に輝きがありますが、モワモワ感は免れません。
これを「音質が古色蒼然」とは、なんか違和感があります。

その後、オリジナルモノラルLPを探したところ、
ELECTRECORD ECE 0143
という型番であることがわかりました[3]。
ジャケット裏面のボベスコの写真はカラーで、これを白黒で複写したため、上のSTM-ECE 0844のジャケットはほとんど見えなくなったと思われます。上述のルーマニアの国力云々は考え過ぎでした。

そのうちめぐり会えるでしょう、ボベスコのカラー写真に。(そっちかよ!)





ボベスコのルーマニア盤_d0090784_10530284.jpg

実は今年初め、ボベスコのバッハ/モーツァルトのモノラル盤 ECE 0143を入手していたのですが、最近まで聴かずにほっぽっていました。
ジャケット裏面のボベスコのカラー写真を見て満足してしまったからかもしれません。

discog[3]によると、1963年12月録音と書いてありますが、
ジャケットには、
N. I. 210-60
とあり、1960年製のようです。

[M-0143-1-D]
J. S. Bach: Concert Nr. 1 În La Minor Pentru Vioară Și Orchestră
 I. Allegro Moderato
 II. Andante
 III. Allegro Assai
W. A. Mozart: Concert Nr. 5 În La Major Pentru Vioară Și Orchestră KV 219
 I. Allegro Aperto - Adagio - Allegro Aperto
[M-0143-1-D]
 II. Adagio
 III. Tempo Di Menuetto
Orchestra de studio a Radioteleviziunii – Constantin Bobescu

冒頭に書いたように、「鮮烈な音質」かどうかが興味の的でしたが、結果は期待を裏切らないものでした。

イコライザは最初NABで聴きましたが、RIAAの方がより好ましい音質に近づきました。
バッハはアルファ・モノラル盤のような清楚な音です。
モーツァルトは、それより録音が古いのか、多少高音がきつく感じます。
こちらはNABの方が良いかもしれません。

STM-ECE 0844の感想は、「もごもごした、霞がかかったような音」でしたが、バッハはステレオだと書いているので、この時はたぶんDL103で聴いたのでしょう。
レンジが広すぎて、古い録音に合わなかったのかもしれません。

それで、STMはステレオ/モノ兼用の意味のようですので、STM-ECE 0844をタンノイモノで聴いてみることにしました。
イコライザはRIAAです。

一聴、モノラルに比べて低音がずいぶん増強されています。
l'age d'or du violonのデッカプレスを思い出しました。
これが以前聴いたときのモワモワ感につながったのかもしれません。
高音は、モノラルよりたしかに柔らかいですが、霞がかかったような音とは言えません。
しばらく聴いていると、これで十分だという気になってきます。
特にモーツァルトは元気で溌剌としていますが、いかにも細腕で弾いているという風情がボベスコらしくていいですねえ。

という訳で、ボクの耳も実にええかげんなもんだということがこれでわかりました。
くれぐれも、眉に唾を付けてお読みくださいますよう。

References
[1] http://tower.jp/item/4569737/ローラ・ボベスコ---エレクトレコード全録音集
[2] https://www.discogs.com/ja/Mozart-Bach-Lola-Bobescu-Orchestra-de-studio-a-Radioteleviziunii-Dirijor-Constantin-Bobescu-Concert-/release/1379953
[3] https://www.discogs.com/Mozart-Bach-Lola-Bobescu-Orchestra-de-studio-a-Radioteleviziunii-Dirijor-Constantin-Bobescu-Concert-/release/2028200



by ibotarow | 2018-07-28 09:18 | ヴァイオリン_電気録音 | Comments(0)


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