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2018年 09月 23日

エティエンヌのモーツァルト・クラリネット協奏曲 1941

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前報の最後に書いたように、エティエンヌのモーツァルト・クラリネット協奏曲の旧録音は、DF 2の10インチ最初期盤を探すつもりでした。
元のSP盤なら時々見かけるので、それを入手すれば簡単ですが、今さら取っかえ引っかえして聴くのも面倒だと見送っていました。
ところが先日、たいへん安く出ていたのでダメ元で最低額を入れておいたら、誰も入札せず落札してしまいました。送料はその3倍以上取られましたが。

July 1941
Les Discophiles Français 8-10
Mozart: Clarinet Concerto in A major K.622
8-1 [PART 1695-1, M6-102645] I. Allegro (début)
8-2 [PART 1696-1, ---------] I. Allegro (suite)
9-3 [PART 1697-1, M6-102647] I. Allegro (fin) / II. Adagio (début)
9-4 [PART 1698-1, M6-102648] II. Adagio (fin)
10-5 [PART 1699-1, M6-102649] III. Rondo (début)
10-6 [PART 1700-1, M6-102650] III. Rondo (fin)
François Etienne, clarinet
L' Orchestre de Chambre Hewitt, Maurice Hewitt

さっそく聴いてみましたが、以前、さる畏兄に米VOX盤を聴かせていただいたときの音は、もう記憶の彼方でしたので、鮮明さに驚きました。
この前のDF 2の10インチ盤の方がよほど眠たい音です。

演奏は、エティエンヌもさることながら、エウィットが別人のように若々しいです。
スピードも新録音より速い印象がありましたが、演奏時間はほとんど変わりませんでした。
新録音より肌理が粗いという気もしましたが、これは録音のせいもあるかもしれません。

前回、若き碩学Lさんにご教示いただいた、
「第3楽章の冒頭、アウフタクトを除いて4小節目のクラリネットソロが旧録音ではスラー気味、再録音ではスタッカート気味です。」
も確認した結果、たしかにスラ―気味でした。





さて回転数ですが、1941年録音なので、盤面ごとの回転数は揃っているだろうと思いましたが、78 rpmで続けて聴いてみると、8-1と8-2のつなぎ目でガタッとピッチが変わります。
そこで先ず、78 rpm再生時の6面それぞれの最初4分間の平均スペクトルを求めると下図のようになりました。

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予想に反して、ご覧のようにかなりバラついた結果になりました。
1940年にフランスはドイツに侵攻されているので、よくわかりませんが、1941年には電力事情も悪くなっていたのかもしれません。
ここから440 Hz付近のピーク周波数を拾い出すと、下図のようになります。

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8-1と8-2のつなぎ目は、第1楽章の途中ですので、かなり耳障りですが、9-4と10-5の段差は、第2楽章と第3楽章の間ですので、ほとんど気が付きません。

次に、1953年録音のDF 2(12 inch)と、78 rpm再生の8-1の最初4分間の平均スペクトルを比べると、下図のようになりました。

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440 Hz付近のピーク周波数は、
DF 2; 443.4 Hz
8-1; 436.0 Hz
で、8-1をDF 2と同じピッチにするためには、
443.4/436.0*78=79.3 rpm
で再生する必要があります。
8-1をこの回転数で再生した時のスペクトルを求め、DF 2, 8-2と比較すると下図のようになりました。

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78 rpm再生の8-2の平均ピッチは、上図に示すように、79.3 rpm再生の8-1のそれとほとんど同じです。
そこで、79.3 rpm再生の8-1と、78 rpm再生の8-2の2面を続けて聴いてみましたが、つなぎ目でなお、ピッチの違和感があります。

このピッチの違いを確かめるため、79.3 rpm再生の8-1の最後の音と、78 rpm再生の8-2の最初の音の周波数を調べてみることにしました。

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A管クラリネット用楽譜[1]のつなぎ目付近を上図に示します。
8-1は127小節目で終わります。
ここで注意すべきは、クラリネットは楽譜の記載音と実際に出る音が違うことで、[2]によると、A管の場合、記載音の短3度下が実音になります。
したがって、8-1の最終音F5#は、D5#になり、8-2の冒頭音G5は、E5になります。

79.3 rpm再生の8-1最終音D5#と、78 rpm再生の8-2冒頭音E5のスペクトルを求めると、下図のようになりました。

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D5#=627.2 Hzでしたので、A4換算で443.5 Hzになります。
この値は79.3 rpm再生8-1の平均ピッチ、さらには78 rpm再生8-2の平均ピッチとほとんど同じです。

また、E5=678.3 Hzでしたので、A4換算で452.7 Hzになります。
ピッチの差は、
452.7-443.5=9.2 Hz
となり、これだけ違うとボクの駄耳でもわかります。

8-1の最後は平均ピッチとほぼ同じでしたが、8-2の最初は平均ピッチより約2%高くなる結果となりました。
この原因としては、カッティング時、外周部の回転数が平均値より遅かったと仮定すると、一定回転数で再生した時に外周部のピッチが高くなるということが考えられますが、どのあたりで定常回転になるのか等、これ以上の定量的検討は面倒なので省きます。

References
[1] https://imslp.org/wiki/Clarinet_Concerto_in_A_major%2C_K.622_(Mozart%2C_Wolfgang_Amadeus)
[2] http://lab.rygasound.com/navi/%E7%A7%BB%E8%AA%BF%E6%A5%BD%E5%99%A8%E3%81%AE%E8%AA%AD%E3%81%BF%E6%9B%BF%E3%81%88%E8%A1%A8/



by ibotarow | 2018-09-23 08:18 | 管楽器その他 | Comments(0)


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