2018年 10月 08日
最近出た、"Speeds & Keys"[1]を見ると、1902年頃のロンドンG&Tのピッチは、A=452 Hzを採用しています。 1902.10.26, Recordings made in London 1903.11.21 1904.10.20 【】内の値は、左から、キー、ピッチ(Hz)、回転数(rpm)です。 特に、メルバとクーベリックのアヴェマリア03033 [401c]は、標準ピッチ(pitch standard)も違いますが、キーが違います。 Musical Key: G (F) そういえば、メルバG&Tにはキーが書いてあるのもあったなと、拙ブログ"メルバとクーベリックのアヴェ・マリア"のレーベル写真を見ると、上に再掲したように、 そこで、ト長調の楽譜[2]を見ると、出だしの音はBです。 もし、A4=435 Hzを採用したとすると、B4は、 78 rpm再生時の冒頭の音の周波数は、前報"クーベリックG&T"のFig. 14を見ると、 次の問題は、A=435が妥当かどうか、です。 そこで、ピッチ・スタンダードの根拠を[1]の著者にメールで聞いてみたところ、2回にわたって長文の返事を貰いました。 まず、A=452について、 ・リファレンスとして用いたのは、調律の範囲が非常に狭い軍楽隊の金管(数Hz変えるには、新しい楽器の購入が必要)、あるいは調律の不可能なチューブラー・チャイム、グロッケンシュピール等である。 ・時には不協和音が生ずることもある。 ・しかし1907年に、スタジオ・オーケストラの楽器を"New Philharmonic" Pitch A=439にアップデートしたので、このチャイムはよりスムーズに合うようになった。 次に、A=435について、 ・ガイスベルグが語った逸話によると、メルバは、1904年10月の録音の際に、ピアノを 自身のコンサートで使っているFrench pitch A = 435に調律し直すよう主張した。 ・軍楽隊だけは20年にわたって、A = 452 を維持した。 たしかに、1907年のロンドン録音のリストを見ると、オーケストラはA=439ですが、ピアノはA=435になっています。これはメルバの置き土産?でしょうか。 ちなみに、1905年の2曲は、 1905.09.04 London [7202½b] 3616 Come back to Erin (Claribel) 【 E♭, 452, 74.3 】 [7203b] 3617 Old folks at home (Foster) 【 E♭, 435, 74.5 】 で、マトリクス番号が連続しています。 絶対音感のあるメルバにとって、さぞ気持ち悪かったことでしょう。 その他、"Speeds & Keys"[1]には、以下のさまざまなピッチ・スタンダードが列挙されていました。 430 Hz; Italian Military Band Pitch 432 Hz; recommended for vocal music by Verdi 435 Hz; Diapason normal: Nominal French standard 439 Hz; New Philharmonic Pitch 440 Hz; Modern Standard Pitch 443 Hz; Prussian Military Band Pitch 446 Hz; Pleyel's 19th century piano pitch 447 Hz; Mahler's preferred pitch for Vienna Opera 452 Hz; Old Philharmonic Pitch, British Military Band Pitch 461 Hz; Austo-Hungarian Military Band Pitch, High Viennese Pitch また、この本のIntroductionにもたいへん興味深いことが書かれています。プレビュー版[3]で読めますので、回転数に関心のある方は、ぜひご一読を。
by ibotarow
| 2018-10-08 08:05
| 女声_ラッパ吹き込み
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