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いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

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2019年 06月 30日

ゲルハルト/ニキシュ1907の回転数

以前、Arthur Nikisch (1855–1922)伴奏によるElena Gerhardt((1883-1961)のGramophone1907年録音盤のリストを示しましたが、今回、それに、C. Zwargの"Speeds & Keys"[1]から、キー、ピッチ(Hz)、回転数(rpm)のデータを拾って【 】内に記入すると、下記のようになりました。


November 1907, Berlin, acc. by Nikisch (78 rpm)
10-in.
[3535r] 2-43178 Der Frund (Wolf) 【E, 443, 78.9】
[3537r] 2-43179 Der Schmied (Brahms) 【B, 443, 78.8】
[3538r] unpub. Nachtgall (Brahms) 
[3539r] 2-43180 Ich hab' ein kleines Lied erdacht (Bungert) IRCC208【E, 443, 76.7】
[3540r] 2-43181 a) Wie solten eir (R. Strauss) / b) Neue Liebe (Hinaus ins Weite) (Rubinstein) IRCC208【E, 443, 78.8】
12-in.
[317s] 043104 Vervorgenheit (Wolf) 【E, 443, 78.9】

Nov./Dec. 1907, Paris, acc. by Nikisch (74 rpm)
10-in.
[5167h] 2-43182 Heimweh (Wer in die Fremde) (Wolf) IRCC11 【D, 435, 73.3】
[5168h] unpub. Die Quell (Carl Goldmark)
[5169h] 2-43183 Und willst du deinen Leibsten sterben seh'en (Wolf) IRCC11【A/o, 435, 74.2】

Nov./Dec. 1907, Berlin, acc. by Nikisch (74 rpm)
12-in.
[589i] unpub. a) Fäden (Erich K. Worff) / b) Knabe und Veilchen (Erich K. Worff)


以前のリストは、すべてベルリン録音となっていましたが、[1]では、そのうち3面はパリ録音としています。ピッチが異なるのはそのためです。
()内の数値は、以前のリストによる回転数ですが、[1]による値と比較的近いのは興味深いところです。

まず、ベルリン録音の3539rと3540rについて、それぞれの[1]による回転数で再生した時の平均スペクトルを求めると、下図の青(3539r)と赤(3540r)のようになりました。

ゲルハルト/ニキシュ1907の回転数_d0090784_15410810.jpg

440 Hz付近のA4のピークが必ずしも明確でないので、半音下のA4の大きなピークの周波数を探ると、3540rのそれは418 Hzでした。
この値からA4の周波数を計算すると、
418*1.0595=442.9 Hz
となり、[1]によるA=443 Hzと極めて近い値となりました。
したがって、3540rの回転数、78.8 rpmは合理的な値だと言えます。

それに対して、3539rのA4相当のピーク周波数、406 Hzは中途半端に低いと言わざるを得ません。
3540rの418 Hzより約4分の1音低いので、回転数が不自然だと考えるのが妥当でしょう。
上のリストを見ても、1907年のベルリン録音は、他の3面は79 rpm近い値なのですが、3539rだけ76.7 rpmと、かなり低い値です。
ひょっとしてミスプリかもしれませんので、406 Hzを418 Hzにするような回転数を計算してみると、
418/406*76.7=79.0 rpm
となりました。

そこで、この回転数で再生した3539rの平均スペクトルを求めると、上図の緑のようになりました。
A4付近の小さなピークをはじめ、他のピークも赤と緑はほぼ揃っている結果となりましたので、3539rの回転数は、79 rpmとした方が良さそうです。


次に、パリ録音の5167hと5169hについて、それぞれ[1]による回転数で再生した時の平均スペクトルを求めると、下図の灰(5167h)と黄(5169h)のようになりました。

ゲルハルト/ニキシュ1907の回転数_d0090784_15585612.jpg

387 Hz付近のG4相当のピークは良く揃っていますので、これからA4の周波数を求めてみると、
387*1.0595**2=434.4 Hz
ですので、[1]によるA4=435 Hzに近い値です。





ゲルハルト/ニキシュは東芝から復刻CD[2]が出ていますので、参考のため、ピッチを調べてみました。
まず、ベルリン録音から、3539rについて、今回の79.0 rpm再生と、CDを比べてみると、
下図のようになりました。

ゲルハルト/ニキシュ1907の回転数_d0090784_08264347.jpg

A4相当のピークの周波数は、
3539r (CD): 413 Hz
3539r (79.0): 418 Hz
ですので、この値からCDの回転数は、
413/418*79=78.1 rpm
となり、冒頭のリストの()内の値、78 rpmとほぼ等しい結果となりました。

次に、パリ録音から、5167hについて、今回の73.3 rpm再生と、CDを比べてみると、
下図のようになりました。

ゲルハルト/ニキシュ1907の回転数_d0090784_08264341.jpg

ピークの位置はほぼ揃っていますが、A4相当のピークの周波数は、
5167h (CD): 413 Hz
5167h (73.3): 410 Hz
ですので、この値からCDの回転数は、
413/410*73.3=73.8 rpm
となり、冒頭のリストの()内の値、74 rpmとほぼ等しい結果となりました。
したがって、この復刻CDの回転数は、冒頭のリスト、つまりRC誌のディスコグラフィー[3]に準拠しているようです。

というわけで、今回はピッチを重視して、3539は79.0 rpm、それ以外は[1]による回転数で再生することにしました。

November 1907, Berlin
[3539r] 2-43180 Ich hab' ein kleines Lied erdacht (Bungert) IRCC208 79.0 rpm

[3540r] 2-43181 a) Wie solten eir (R. Strauss) / b) Neue Liebe (Hinaus ins Weite) (Rubinstein) IRCC208 78.8 rpm

Nov./Dec. 1907, Paris
[5167h] 2-43182 Heimweh (Wer in die Fremde) (Wolf) IRCC11 73.3 rpm

[5169h] 2-43183 Und willst du deinen Leibsten sterben seh'en (Wolf) IRCC11  74.2 rpm

References
[1] Chris Zwarg, "Speeds & Keys Vol. I Gramophone Co. (1898-1921)", Truesound Transfers (Berlin, 2018)
[2] エレナ・ゲルハルトの芸術 ARND-2007・8 (1993)
[3] Alan Kelly & Ian Cosens, "Elena Gerhardt - A Discography" The Record Collector, Vol.32, Nos. 8,9&10 (1987) 183-189



by ibotarow | 2019-06-30 08:31 | 女声_ラッパ吹き込み | Comments(0)


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