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いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

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2019年 07月 21日

プランソンG&Tの回転数

以前、Pol Plançon (1851-1914)のG&Tのリストを示しましたが、今回、それに、C. Zwargの"Speeds & Keys"[1]から、キー、ピッチ(Hz)、回転数(rpm)のデータを拾って【 】内に記入すると、下記のようになりました。

May 1902, London
[1921-G] 2-2666 Philémon et Baucis: Au bruit des lourds marteaux s'Airain (Gounod) (74)【B, 452, 76.0】
[1921-B] 2-2666 do 【B, 452, 73.3】
[1922-G] 2-2665 Les rameaux (Faure) (74) 【A, 452, 75.8】
[1922-B] 2-2665 do 【A, 452, 76.1】
[1923-G] 2-2664 Le Caïd: Enfant cheri...le tambour-major (Air du tambour-major) (Thomas) 5017 (74) 【G, 452, 75.7】
[1923-B] 2-2664 do 5018 【G, 452, 75.5】
[1924-G] 2-2663 Faust: Vous qui faites l'endormie (Serenade de Mephisto) (Gounod) 5022 91018 VA6 (74) 【G, 452, 76.0】
[1925-IIG] 2-2662 Les deaux grenadiers, Op. 49, Nr.1 (Die beiden Grenasiere) (Schumann) 5019 (74) 【G, 452, 75.9】
[1925-B] 2-2662 do 【G, 452, 75.5】

[1936-G] 2-2661 Les Huguenots: Piff, paff (Meyerbeer) 5020 (66) 【Cm, 452, 68.7】
[1937-G] 2-2660 Roméo et Juliette: Allons! jeunes gens (Air de Capulet) (Gounod) (66) 【A, 452, 68.8】
[1938-G] 2-2667 Carmen: Votre toast, je peux vous le rendre (Air du toreador) (Bizet) (66) 【E, 452, 69.5】
[1938-B] 2-2667 do 【E, 452, 70.1】
[1939-G] 2-2668 Faust: Le veau d'or (Gounod) 5021 (66) 【Cm, 452, 69.1】
[1940-G] 2-2660X Roméo et Juliette: Allons! jeunes gens (Air de Capulet) (Gounod) 【A, 452, 69.4】

August 1902, London
[2203FG] 2-2717 Embarquez-vous (Godard) (74) 【C, 452, 76.8】

13 June 1903, London
[WG 3898-R] 2-32909 Le Soupir (Bemberg) 【D, 452, 80.6】
[WG 3899 R] unpub. Si tu veux, mignonne (Boyer-Massenet)
[WG 3900RII-R] 2-32910 Au pays bleu (Fuster-Chaminade ) (78) 【B, 452, 81.6】
[WG 3901-R] 2-32911 Le lazzarone (Ferrari) 【Bm, 452, 81.4】
[WG 3902-R] 2-32918 En route-Wanderlied Op. 35, No. 3 (Schumann) (78) 【F, 452, 81.5】


すべてロンドン録音の10インチ盤で、ピッチはA=452 Hzです。
これらのうち、僥倖ともいえる幸運から2テイクとも入手できた、Jean-Baptiste Faureの Les Rameaux、
[1922-G] 2-2665 Les rameaux (Faure)
[1922-B] 2-2665 do
の2面について、それぞれ[1]による回転数で再生した時の平均スペクトルを求めると、下図のようになりました。

プランソンG&Tの回転数_d0090784_09491067.jpg

ピッチはほぼ揃っているのがわかります。
しかし、同じ曲にもかかわらず、スペクトルの形はかなり異なっていて、赤(1922B)は、400 Hz以下で、青(1922G)より少しレベルが下がっています。逆に、500 Hz前後では少し高くなっています。
また、520 Hz付近に赤の鋭いピークが3本あり、580 Hz付近には青の鋭いピークが3本あります。
歌い方で変わるのでしょうか、あるいは、録音機材の問題でしょうか、いずれにせよ、こんなに違うとは予想外の結果でした。





復刻CDは、Truesound Transfers [2]と、Marston [3]に、2テイク収録されていますので、これらとの比較を行いました。
まず、1922Gについて、3種類の平均スペクトルを求めると、下図のようになりました。

プランソンG&Tの回転数_d0090784_09492353.jpg

赤(CD_Z)は、[1]を書いたC. Zwargの復刻ですので、当然ながらピッチは青(75.8)とよく似ていますが、レベルは、400 Hz以下でブーストされているのがわかります。
一方、マーストンの灰(CD_M)は、レベルは青(76.1)と大差ありませんが、かなり低いピッチです。

A#4相当のピークは、
1922G (CD_Z): 481 Hz
1922G (CD_M): 462 Hzn
ですので、Marston [3]の回転数は、
462/481*75.8=72.8 rpm
となります。
これは冒頭のリストの()内の値、74 rpmより遅い値で、Zwarg [2]より半音近く低いことになります。
A4相当のピークは、435 Hzになりますので、マーストンなりの根拠があるのかもしれません。

次に、1922Bについて、3種類の平均スペクトルを求めると、下図のようになりました。

プランソンG&Tの回転数_d0090784_09493516.jpg

赤(CD_Z)が、青(76.1)とピッチが揃っていて、400 Hz以下でブーストされているのも、1922Gの場合と同様です。
灰(CD_M)も、低域で少しブーストされていて、1922G(CD_M)と同じくらいのレベルになっています。
また、ピッチは1922Gと同じくらい低い方へずれています。

A#4相当のピークは、
1922B (CD_Z): 478 Hz
1922B (CD_M): 461 Hz
ですので、Marston [3]の回転数は、
461/478*76.1=73.4 rpm
となります。
A4相当のピークは小さいので、上のA#4相当のピークから換算すると、
461/1.05946=435 Hz
になりますので、1922Gと同様、A=435 Hzになるような回転数で復刻しているようです。

というわけで、2面とも、[1]による回転数で再生することにしました。

May 1902, London
[1922-G] 2-2665 Les rameaux (Faure) 75.8 rpm

[1922-B] 2-2665 do 76.1 rpm


References
[1] Chris Zwarg, "Speeds & Keys Vol. I Gramophone Co. (1898-1921)", Truesound Transfers (Berlin, 2018)
[2] The 1902 "London Reds”, Truesound Transfers TT4002 (2017)
[3] Pol Plançon Zonophones 1901-1902 G&Ts 1902-1903, Lagniappe Volume 1, Marston L001 (2003)



by ibotarow | 2019-07-21 08:25 | 男声_ラッパ吹き込み | Comments(0)


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