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いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

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2019年 10月 06日

モーレルG&Tの回転数

以前、Victor Maurel (1848-1923)のG&Tのリストを示しましたが、今回、それに、C. Zwargの"Speeds & Keys"[1]から、キー、ピッチ(Hz)、回転数(rpm)のデータを拾って【 】内に記入すると、下記のようになりました。

G&T
1903, Paris
[1626F] 2-32815 Chanson du printemps (Gounod) 【G, 441, 71.3】
[1627F] 2-32809 IPHIGÉNIE EN TAURIDE: Le ciel par d'éclatants miracles... De noirs pressentiments (Gluck) 【Dm, 441, 71.2】
[1628F] 2-32810 Marquise (Massenet) 【F, 441, 71.2】
[1629F] 2-32811 L'Heure exquise (Hahn) 【B, 441, 71.1】
[1630F] 2-32812 Le rondel de l'adieu (De Lara) 【G, 441, 71.1】
[1631F] 2-32813 Fédia (D'Erlanger) 【Am, 441, 71.4】
[1632F] 2-32814 OTELLO: Era la notte (Verdi) IRCC 193(rr) 【C, 441, 71.2】

ピッチはA=441 Hz、回転数は71.1~71.4 rpmの範囲に分布しています。
比較のため、Symposium[2]とMarston[3]の復刻CDのスペクトルを調べてみました。

モーレルG&Tの回転数_d0090784_10420778.jpg
モーレルG&Tの回転数_d0090784_10422931.jpg
モーレルG&Tの回転数_d0090784_10422986.jpg
モーレルG&Tの回転数_d0090784_10422904.jpg
モーレルG&Tの回転数_d0090784_10422955.jpg
モーレルG&Tの回転数_d0090784_10422956.jpg
モーレルG&Tの回転数_d0090784_10422952.jpg

これらのデータを見ると、2種類の復刻CDのスペクトルは、数dBのレベル差がありますが、形状はよく似ていて、ピッチもほぼ揃っているのがわかります。
明確な単峰性のピークが見られないのは、ヴォーカルにヴィブラートがかかっているのに加え、1903年のパリ録音ですから、ピアノの音もワウフラッターで揺れていることが考えられます。
そこで、幅のあるピークの中央付近の周波数を見ると、ピッチはA=440~445 Hzあたりに分布しています。
マーストンは70.5 rpmで復刻したと[3]の解説に書いていますが、Symposiumの復刻回転数も[1]の値と大差ないようです。

残念ながら、モーレルのG&Tはとてつもなく高価なので(もっとも、最近話題のお仕立券付きスーツ生地ほどではありませんが)一枚も持っていません。
しかたがないので、Youtubeで見つけたSymposiumと思われる音源を貼り付けます。曲は、上記7面の中で一番好きな、
[1630F] 2-32812 Le rondel de l'adieu (De Lara)
で、同じ曲を1904年にFonotipiaにも吹き込んでいますが、G&Tの方が、素朴で深みのある表現です。




References
[1] Chris Zwarg, "Speeds & Keys Vol. I Gramophone Co. (1898-1921)", Truesound Transfers (Berlin, 2018)
[2] The Harold Wayne Collection, Vol. 9 (1902-1903), Symposium 1101 (1991)
[3] The Complete Adelina Patti and Victor Maurel, Marston 52011-2 (1998)



by ibotarow | 2019-10-06 08:07 | 男声_ラッパ吹き込み | Comments(0)


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