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いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

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2019年 12月 29日

デ・ヴィート/フィッシャーのブラームスのソナタ その3

前報の最後に書いたように、EMI-17Aで再生した音源はハムが耳につくので、これをデジタルフィルタで除去することを試みました。供試音源は、ALP盤の第1番第1楽章の冒頭4分間です。

最初、50 Hzの成分をちょん切ればいいんだろ、と安易に考えて、ハイパスフィルタやノッチフィルタを試しましたが、スペクトル上で50 Hzの成分は無くなっても、耳で聴くと不思議なことにハム音が聴こえます。
え、なんで?と思いましたが、これは、50 Hzの高調波成分が残っているためだろうと思い至りました。

そこで、Audacitのメニューにある Noise Reduction [1]を試してみることにしました。
これは、まずノイズのみの信号を読み込み、これをノイズプロファイル信号として、目的の音源からこの信号を除去するというものです。
どんなアルゴリズムを使っているのかと How Audacity Noise Reduction Works [2]を斜め読みしてみると、 Spectral Noise Gatingという手法のようです。
まず、ノイズ信号のスペクトルを求め、周波数ごとのレベルを閾値とします。
次に、音楽信号のスペクトルを求め、閾値と比較して音楽信号の方が大きければ、元のレベルのまま、小さければ、設定されたレベルまで引き下げる、という処理をします。
これで、ノイズレベルは下がりますが、音楽信号のスペクトルも歯抜けになります。あ、それで周波数スムージング機能が付いているのか。

さて、レコードに針を降ろして演奏が始まる前の無音溝の部分約2秒間の信号を切り取り、スペクトルを見てみると、下図の赤になりました。10次以上の高調波まで認められます。これが閾値データになる訳ですね。

デ・ヴィート/フィッシャーのブラームスのソナタ その3_d0090784_15194728.jpg

次に、このデータを用いて、青のオリジナル音楽信号に対してノイズリダクション処理したのが、下図の赤です。

デ・ヴィート/フィッシャーのブラームスのソナタ その3_d0090784_15325011.jpg

オリジナル信号の青と比べてみると、50 Hzの成分は約20 dB下がっているのがわかります。
これはパラメータ設定で、ノイズ除去レベルを20 dBに設定したためです。
なお今回は、上述の周波数スムージングは使っていません。

一方、数kHz以上の高い方は、青に比べてギザギザしています。これでは音質が変わってしまいます。
これはノイズプロファイル信号の高域レベルが、オリジナル信号の高域レベルと同じくらいかそれ以上あるために、この特性が反映されるためだと思われます。

そこで、ノイズプロファイル信号にローパスフィルタをかけて高域を落とすことにしました。
1 kHz以上を-6 dB/octで落とした結果が一番上の図の緑です。
これを用いてノイズ除去すると、下図緑のようになりました。

デ・ヴィート/フィッシャーのブラームスのソナタ その3_d0090784_15325033.jpg

20 kHz以上でオリジナルと差が見られますが、それ以下はかなり似ていますので、ひとまずこれで聴いてみることにします。(未完)


References
[1] https://manual.audacityteam.org/man/noise_reduction.html
[2] https://wiki.audacityteam.org/wiki/How_Audacity_Noise_Reduction_Works#algorithm



by ibotarow | 2019-12-29 08:24 | ヴァイオリン_電気録音 | Comments(0)


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