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いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

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2020年 05月 24日

フラグスタート/クナッパーツブッシュのワーグナー:ヴェーゼンドンクの歌 LXT盤とSDD盤


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この録音は、昔からAce of Diamonds盤(SDD 212)を愛聴して来ましたが、やっとオリジナルモノラル盤(LXT 5249)を入手しました。

13-15 May 1956, Sofiensaal, Vienna
Wagner Recital(LXT 5249)
Kirsten Flagstad sings Wagner(SDD 212)

Wesendonck Lieder;
 Der Engel - Stehe Still - Im Treibhaus - Schmerzen - Träume
LXT 5249 [ARL.3230-1A, 1, N?, RT]
SDD 212 [ZAL-3230-4G 1 M?, JT]

Lohengrin: Einsam In Trüben Tagen (Elsa's Dream)
Parsifal: Ich Sah' Das Kind
Die Walkure: Der Männer Sippe
Die Walkure: Du Bist Der Lenz
LXT 5249 [ARL.3231-1A, 3, M, RT]
SDD 212 [ZAL-3231-3ER 1 BB, JT]

Kirsten Flagstad & Hans Knappertsbusch / The Vienna Philharmonic Orchestra

LXT盤が発売された1956年11月当時、まだステレオレコードは世の中になかったのですが、長年、SXL盤があるのかどうか気になっていました。
最近、デッカのウィーンフィルのディスコグラフィー[1]を見つけ、その中に、
Stereo mix was assigned to SXL 2148 but no record of release
と明示的に書かれていましたので、これでもうSXL盤を探さなくて済みます。

[1]によると、英国でのステレオ盤(SDD 212)の発売は1970年1月まで下るようですが、Uさんからの情報によると、日本では1962年にステレオ盤が発売され、そのマトリクスは、
[ZAL-3230-2M / ZAL-3231-1M]
とのことです。輸出用原盤は早くから作られていたようですね。

さて、ピックアップはDecca FFSS Mk.II、イコライザはどちらもRIAAです。

聴いた感じは全然違う印象です。
モノラル盤は、声、弦ともやわらかで、暖かい響きに包まれます。
それに対してステレオ盤は、声に透明感があり、細身ですが迫力があります。弦はさわやかで、ワイドレンジに感じます。

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PCに取り込んだ後、左右をミックスしてスペクトルを求めました。

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数100 Hz付近と1 kHz付近では、モノラル盤の方が大きいところでは10dBほど上回っています。
3 kHz付近から12 kHz付近では、逆にステレオ盤の方が数dBほど高くなっています。

イコライザカーブをFFRRとFFSSに合わせると、また違った結果になるのかもしれませんが、FFSSカーブはRIAAと異なるという記述[2]がある一方、そんなカーブは無いという記述[3]もあり、よくわかりませんでした。

FFRRカーブについては、周波数テストレコード
LXT.5346 [CB ARL-3435-1F, 3, NB, KT] / [CA ARL-3466-2F, 2, CN, KT]
がRIAAカーブでカットされているという記述[4]がありますので、これ以降のLXT盤はRIAAカーブだと思われます。
規格が制定された1955年から直ちにRIAAになったとも考えにくいので、LXT.5346以前はFFRRカーブかもしれません。
1956年5月録音、11月発売の、
LXT 5249 [ARL.3230-1A, 1, N?, RT] / [ARL.3231-1A, 3, M, RT]
は微妙なところですね。

KORG DAC-10Rのマニュアルを見直したら、FFRRカーブも用意されていることがわかりましたので、これでLXT盤を録り直してみます。
SDD盤は上のような事情でRIAAのままです。

まず、RIAAとFFRRの比較を示します。

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100 Hz付近ではRIAAの方が2 dBほど高く、10 kHz付近では2 dBほど低くなっています。
次に、FFRRのLXT盤とRIAAのSDD盤の比較を示します。

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2 kHz以上の高域はかなり似ています。でも、SDD盤は12 kHz以上を落としているようです。
低域は100~200 HzではSDD盤が高く、400~500 Hz辺りや1 kHz付近では、逆にLXT盤が高くなっています。

聴いた感じは、モノラル盤は、声に透明感が出てきました。弦もだいぶ細身になりました。
しかし、ステレオ盤の声はより透明で、弦はより細身です。また、ステレオ盤の方が低弦の量感があります。
RIAA同士の時よりだいぶ似てきましたが、基本的に、モノラルは暖色系でステレオは寒色系、という印象は変わりません。この辺は、中域の凸凹が効いているのでしょうか?

という訳で、二つ聴き比べましたが、音の安定性は断然モノラル盤です。
音質は、たぶんモノラル盤の方がオリジナルの音に近いのでしょうが、お化粧美人のステレオ盤の方が好みです。
このステレオ盤のスペクトルを見ると、デッカサウンドの秘密の一端をかいま見た見た思いがします。



References
[2] about Decca (FFSS) curve and CCIR 56 curve https://www.discogs.com/ja/group/thread/611268
[4] DECCAにおけるRIAAカーブへの移行 http://www.ann.hi-ho.ne.jp/aria/amp/EQ-Label/EQ-Label-Decca-WEB.htm


by ibotarow | 2020-05-24 08:37 | 女声_電気録音 | Comments(0)


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