人気ブログランキング | 話題のタグを見る

いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

ibotarow.exblog.jp
ブログトップ
2020年 08月 16日

イヴ・ナットの「悲愴」「月光」「熱情」その2

イヴ・ナットの「悲愴」「月光」「熱情」その2_d0090784_07391632.jpg

前回、標記の4種類を聴き比べましたが、
今回、そのうち下記3種のスペクトルを求め、比較してみました。

DF 57 フラット盤 (203 g)
[DF 57 1C21, PARTX 19515, M6 148670] 悲愴、月光
[DF 57 2C21, PARTX 19516, M6 148671] 熱情

DF 730.006  グルーブガード盤 (151 g)
[730006 1 21C, M6 209345] 悲愴、月光1,2楽章
[730006 2 21C, M6 209037] 月光3楽章、熱情

EMI 2C051-10756  グルーブガード盤 (115 g)
[10756 MA(手書き), 73076 MA 21(見え消し), M6 335586 3] 悲愴、月光
[10756 MB(手書き), 73076 MB 21(見え消し), M6 335587 3] 熱情

プレス時期は、上から順に、1950年代、60年代、70年代であろうと思われます。
ピックアップはEMI-75A、イコライザはNABです。
比較したのは、第1面外側の「悲愴」の冒頭4分間です。

まず波形を比較してみました。

イヴ・ナットの「悲愴」「月光」「熱情」その2_d0090784_08195464.jpg

いずれも「悲愴」の第1楽章で、上から、DF 57, DF 730.006, EMI 2C051-10756です。
下の二つはよく似ていますが、DF 57はピッチが低いことがわかります。レベルも低く、しかも、かなり強力なリミッターがかけられているようで、振幅の上限値が刈り込んだように揃っています。
ピッチに関してはどちらが正しいのかわかりませんが、どれくらい違うか見てみると、

イヴ・ナットの「悲愴」「月光」「熱情」その2_d0090784_10421737.jpg

老いぼれガラードの回転数が正確に33⅓ rpmかどうかは保証の限りではありませんが、440 Hz近辺のピークを探してみると、
730 & 2C051: 438 Hz
に対して、DF 57は、
DF 57: 427 Hz
であり、その比は
438/427 = 1.0258
で、2.6%ほど違います。

またレベルに関しては、DF 57が一律に低いのはなく、各ピークで細かな違いがみられます。
そこで、DF 57を2.6%速く再生したところ、

イヴ・ナットの「悲愴」「月光」「熱情」その2_d0090784_10422714.jpg

となりました。
440 Hz付近のピークで合わせたので、そのピークはほぼ一致しましたが、その前後のピークは振幅、ピッチとも微妙にずれています。
波形を見ると、2.6%速くしただけでは、全体の長さがまだ合っていません。3.6%ほど速くして、やっと下図のように、全体の長さを合わせることができました。

イヴ・ナットの「悲愴」「月光」「熱情」その2_d0090784_08110154.jpg

でも、そうしてもなお、途中の波形の位置がずれています。下2つより遅れている部分が多いですが、逆に進んでいる部分もあります。
これは回転数が一定ではないということを意味しますが、50年代のDF盤は、みんなこの程度の回転数のフラツキがあるのでしょうか?ちょっとショックでした。
いずれにしても、これを補正するのは至難の業で、今回の主旨でもないので、この辺でやめておきます。




それでは本題に入って、スペクトル全体を眺めてみます。
3種類いっしょに並べると見づらいので、まず、DF旧盤DF 57と新盤730.006の比較、

イヴ・ナットの「悲愴」「月光」「熱情」その2_d0090784_10563742.jpg

DF 57はカッティングレベルが数dB低いのがわかりますが、6 kHzあたりから逆転します。
中低域のレベルを揃えると高域でどれくらいの差になるかと、試みに、DF 57のレベルを3 dB上げてみると、

イヴ・ナットの「悲愴」「月光」「熱情」その2_d0090784_14005815.jpg

となり、10 kHz近辺では6 dBほどの差になりました。これは意外でしたが、前回の聴き比べの感想、
 DF 57:中高音が締まり、芯がある。高音に輝き、厚い低音。
を裏付けるものです。

次に、DF新盤730.006とEMI 2C051-10765の比較、

イヴ・ナットの「悲愴」「月光」「熱情」その2_d0090784_10564898.jpg

こちらはかなり似ていますが、低域はDF新盤の方がレベルが高く、高域はやはり6 kHzあたりから差が出て、EMI盤の方がレベルも共振周波数も低くなっています。
これも意外でしたが、EMI盤はNABではなくRIAAかもしれません。そこで、EMI 2C051-10765をRIAAで再生してDF新盤と比べてみます。

イヴ・ナットの「悲愴」「月光」「熱情」その2_d0090784_07504877.jpg

ここで、KORGのA/D変換器のイコライザカーブをNABからRIAAに切り替えると、あろうことか、1 kHz付近のゲインが変わりました。それを揃えるため、RIAAの方のレベルを2 dB上げています。

だいぶ似てきましたが、なお差が見られます。イコライザカーブだけの問題ではなさそうです。
いずれにしても、前回のNAB再生での聴き比べでは、
 EMI:柔らかく、軽く、薄く、ソツなくきれいに整っている。低音少な目。
 730.006:EMIより多少硬めで、薄く、すっきりとして繊細、低音多め。
という感想となっていましたが、スペクトルの形と矛盾はありません。

というわけで、3種類のスペクトルはそれぞれかなりの違いがあり、前回の聴き比べの結果がデータからも裏付けられました。
また、DF旧盤のピッチのずれと回転数のフラツキという思いがけない収穫?もありましたが、この盤だけなのか、あるいは50年代のDF盤共通の現象なのか、今後、もう少し他の例を当たってみる必要がありそうです。



by ibotarow | 2020-08-16 08:05 | ピアノ_電気録音 | Comments(0)


<< マルセル・メイエルのラモー3種      ショルティ「ラインの黄金」SX... >>