2021年 03月 28日
2,3年前、Josef Hassid (1923-1950)のビニールプレス盤を何枚か入手しましたが、その頃からLPに興味が移り、一度も針を通さないまま抛擲していました。 しかし、前回のLucien Fugèreで78回転レコードの魅力を再認識したこともあり、またPC取り込み装置もそれ用にセッティングされたままなので、この機会に聴いてみることにします。 Josef Hassid HMV Recordings [2EA 7419-1, EH 29 1230 1] Elgar: La Capricieuse, Op. 17 12 June 1940 by Walter Legge, with Gerald Moore (piano) 28 June 1940 29 Nov. 1940
ひょっとしてダビングでは無いかという疑念が生ずるのですが、この点に関して[2]に気になる記述があります。 それはともかく、興味があるのはシェラック盤との違いですので、ZapateadoをDL-102SDで再生した波形を比較してみると、 となりました。 シェラック盤は、低いレベルの信号がスクラッチノイズに埋もれ、S/N比が悪くなっているのがわかります。 次に、全体の平均スペクトルを見ると、 となりました。 5 kHz付近まではほとんど一致していますが、それ以上で大きく異なります。 セメントに砂利を混ぜて強度を上げるコンクリートのように、英HMVはシェラックに硬い粒子を入れてオートチェンジャーにも耐えられるようにしたそうですが、そのせいで盤面はザラザラになり、5 kHz以上はホワイトノイズ状態になっている様子が見て取れます。 [2]によると、1933年当時のHMV Blumleinの録音システムは、30 Hzから8 kHzまでの公称帯域を持っていたそうなので、5 kHz以上にも楽音成分が入っていると思われます。 回転数については、以前、シェラック盤をTESTAMENTの復刻CD[1]と合わせて推定した結果、意外にも、約76 rpmの低い値となりました。 そこで、先ずZapateadoのビニール盤を76 rpmで再生し、復刻CDと合うようにピッチを微調してみると、 となりました。 次に、Prayeraについて同じ操作をしてみると、 となりました。 最後に、Humoreskeについて同じ操作をしてみると、 となりました。 いずれも、合わせたから当然ですが、ピッチはよく一致しています。 という訳で、聴き比べてみると何のことはない、ビニール盤は復刻CDと大変よく似た音でした。 ただ残念なことに、ビニール盤は溝が傷んでいるのか、時々高域が歪みっぽく耳障りな音を発します。特にZapateadoで顕著です。 でもせっかく取り込んだので、Zapateado以外の3枚の音源を以下にアップします。 0EA8803 La Capricieuse 75.6 rpm 表示回転数は、±0.1 rpm程度の誤差はありますが、あくまでTESTAMENTの復刻CDに合わせた結果に過ぎず、これで録音時のピッチと同じになるかどうかは保証の限りではありません。 References [1] The First Recordings of Ginette Neveu. The Complete recordings of Josef Hassid, TESTAMENT SBT 1010 (1992) [2] Peter Copeland, "MANUAL OF ANALOGUE SOUND RESTORATION TECHNIQUES", The British Library (2008) http://www.bl.uk/reshelp/findhelprestype/sound/anaudio/manual.htm
by ibotarow
| 2021-03-28 08:22
| ヴァイオリン_電気録音
|
Comments(7)
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オペラ大好き
at 2021-04-07 17:07
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お久しぶりです。貴重な音源をいつも楽しく拝見しています。突然の話題なのですが、アウグスト・ヴィルヘルミの録音というのをお持ちでしょうか。いぼたろう様ならと思いました。「名ヴァイオリニストたち」(マーガレットキャンベル 東京創元社)を読んでいて音源を探しました。ネット上でどなたかが「幽霊のような演奏」と書き込んでいました。パガニーニの「魔女の踊り」は見つかったのですが、、、
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ibotarow at 2021-04-08 07:26
オペラ大好きさま、お久しぶりです。
Wilhelmjのシリンダー録音は、大英図書館のサイトにあります。幽霊どころか、意外に鮮明ですね。 https://sounds.bl.uk/Classical-music/Wilhelmj
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オペラ大好き
at 2021-04-12 15:13
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教えてくださりありがとうございます。早速きいてみました。おお!ご指摘のように鮮明です。技術の関係で音がゆれるのを差し引いて聴く必要があります。いずれにしてヴィルヘルミの演奏を聴くことが出来ました。貴重な体験です。
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オペラ大好き
at 2021-04-14 16:17
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今更の質問で恐縮です。いぼたろう様の内容に「1915年4月13日録音 ロンドン」等の書き込みがあります。録音日時はどのように調べるのですか。そのようなソフトとかサイトはあるのでしょうか。こちらも教えてもらえると大変ありがたいのです。よろしくお願いします。
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ibotarow at 2021-04-15 07:47
オペラ大好きさま、
主にインターネットで調べます。あとは手持ちの資料、雑誌等ですが、復刻CDの解説が役に立ちます。 どんな資料を参照したかは、それぞれの記事末尾のReferencesをご覧ください。
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オペラ大好き
at 2021-04-17 21:59
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ありがとうございます。ブログの記載の情報量がすごいので何か特別な資料があるのかと思っていました。レコードの番号を入力するとお手軽に録音期日が示されるソフトがあったらいいなあと思います。年齢を重ねてだんだん怠け者になってきました。反省します。
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ibotarow at 2021-04-18 08:01
>レコードの番号を入力するとお手軽に録音期日が示されるソフト
それに近いのを一つ挙げるとすれば、DAHR (https://adp.library.ucsb.edu/index.php) でしょうか、Victor, Columbia等、米国盤に陰られますが。 |
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