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いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

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2021年 06月 13日

リリ・レーマンの怪しいビニールプレスOdeon その2


リリ・レーマンの怪しいビニールプレスOdeon その2_d0090784_07563403.jpg


前報で、日本コロムビアのS 9000シリーズはダビング盤だと書きましたが、これは誰が見ても一目瞭然です。何故かというと、オリジナルは10¾インチ盤なのに対して、S 9000シリーズは12インチ盤だからです。
S 9002がダビングだと知った時は騙されたような気分になりましたが、復刻CDもダビングですから、当時の復刻盤だと思うことにします。しかし、原盤を持っているなら、それでプレスしてほしかった。わざわざダビングする意味は何でしょう?

今回は、その辺を探るため、
29 June 1906, Berlin, w. Fritz Lindemann (p)
[xB 1304] Auf dem Wasser zu singen (Schubert)
のダビング盤、日本コロムビア S 9002を、怪しくないビニール盤、Historic Masters HMB 59と比較してみます。

回転数は、HMB 59はレーベルに77 rpmと書いてあるので、これで行くとして、S 9002は、とりあえず標準的な78 rpmで再生します。
結果は、




となりました。78 rpmでは速すぎたようです。
ピッチの違いを考える前に、レベルの違いを見ると、2 kHz付近から上でS 9002のレベルが上がっているのがわかります。こういう細工をしたいがためにダビングという手段を取ったのでしょうか?

それはともかく、Symposiumの復刻CD[1]のピッチと比較してみると、




となりました。
300 Hz台の単峰性ピークを読み取ると、
HMB 59_77: 約309 Hz
復刻CD: 約314 Hz
S 9002_78: 約328 Hz
となります。
復刻CDはHMB 59と比較的近い値ですが、S 9002は半音ほど離れています。

HMB 59を基準に、回転数に換算すると、
復刻CDは、ほぼ78 rpmに相当します。
S 9002は、約82 rpm相当です。

S 9002のピッチをHMB 59に合わせるためには、約73.5 rpmで再生する必要があるので、このスピードに変換して、77 rpmのHMB 59と比較すると、




となりました。
ピーク位置はほぼ揃っており、A4は、約437 Hzです。

という訳で、
S 9002は73.5 rpm、HMB 59は77 rpmで再生した音源を下記にアップしました。


聴き比べると、S 9002は高域を強調したせいか、多少スッキリとはしていますが、失ったものは大きいと思います。
ダビングに固執したのは、ひょっとして、10¾インチという中途半端なサイズを嫌った、商売上の理由かも。

なお、パブリックドメインの考え方に関して、信一さんから多大のご教示を得ました。ここに厚く感謝の意を表します。


Reference
[1] Complete Recordings Lilli Lehmann, SYMPOSIUM 1207 & 1208 (1997)


by ibotarow | 2021-06-13 08:03 | 女声_ラッパ吹き込み | Comments(0)


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