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いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

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2022年 01月 30日

メルバG&Tの回転数

メルバG&Tの回転数_d0090784_20273928.jpg

Nellie Melba (1861-1931)のディスコグラフィーはNellie Melba Museum [1]にありますが、ここではケリー[2, 3]を参照して、G&Tのリストを作りました。[1]とは若干の差異があります。
これにC. Zwargの"Speeds & Keys"[4]から、キー、ピッチ(Hz)、回転数(rpm)のデータを拾って【 】内に記入すると、下記のようになりました。

Nellie Melba G&T Recordings

March 1904, Great Cumberland Place, London (piano & conductor LANDON RONALD, flute PHILLIPE GAUBERT)
12-in.
[1] 03015 Mattinata (Tosti) 【G, 435, 70.8】
[2] 03016 Nymphes et sylvains (Bemberg)【F, 435, 70.8】
[6] 03017 La Traviata: Ah, fors'è lui (Verdi)【Fm/o,A♭/o, 435, 71.0】
[7] 03018 Coming through the rye (trad) (not used)【B♭/o, 435, 71.0】
[9] 03019 Se saran rose (Arditi)【D, 435, 71.0】
[12] 03020 Lucia di Lammermoor: Mad scene (Donizetti)(with flute) 27-3-04【E♭, 435, 75.3】
[13] or [14] Il Pensieroso: Sweet bird (Handel)(with flute) (from start) 27-3-04 【D/o, 435, 75.3】
[15] 03021 do (with flute) (beginning later) 27-3-04【D/o, 435, 75.5】
[16] 03022 Goodbye (Tosti) 27-3-04【A♭, 435, 75.5】
[20] 03023 Hamlet: Mad scene (Thomas), pt 1 with orchestra【F/o, 435, 75.4】
[21] 03024 do, pt 2 with orchestra【B/o, 435, 75.5】
[22] 03025 Rigoletto: Caro nome (Verdi), with orchestra【E/o, 435, 75.7】
[23] 03026 La Traviata: Sempre libera (Verdi), with orchestra【A♭/o, 435, 75.2】
[25] 03027 Three green bonnets (d'Hardelot)【F, 435, 75.6】
[26] 03028 Le Nozze di Figaro: Porgi amor (Mozart)【E♭, 435, 75.6】
[27] 03029 Si mes vers avaient des ailes (Hahn)【E, 435, 75.7】
[28] 03030 La Bohème: Addio di Mimi (Puccini) (not used)【D♭/o, 435, 75.7】

20 October 1904, London (piano BEMBERG)
10-in.
[6149b] destr Chant vénitien (Bemberg)
[6150b] 3575 do 【E♭, 435, 78.5】
[6151b] 3576 Les anges pleurent (Bemberg) 【G♭, 435, 78.5】
12-in.
   JAN KUBELIK violin (piano LANDON RONALD)
[400c] destr Ave Maria (Bach-Gounod), in Latin
[401c] 03033 do 【G, 435, 77.1】
(piano LANDON RONALD)
[402c] 03034 La serenata (Tosti), in Italian 【F, 435, 77.2】
[403c] destr no title on file
[404c] 03035 Roméo et Juliette: Je veux vivre, Valse (Gounod), in French DB367 【F/-2, 435, 78.01】
(piano HERMAN BEMBERG)
[405c] 03036 Chant hindou (Bemberg), in French 【Bm, 435, 78.1】
(piano LANDON RONALD)
[406c] 03037 La Bohème: Donde lieta usci (Puccini) 【D♭, 435, 78.3】

4 September 1905, London COLDSTREAM GUARDS BAND (Lieut J MACKENZIE ROGAN)
10-in.
[7200b] 3625 God save the King (trad) 【B♭, 452, 75.1】
[7201b] Auld lang syne (trad)
[7201½b]3615 do 【G, 452, 74.8】
[7202b] Come back to Erin (Claribel)
[7202½b] 3616 do 【E♭, 452, 74.3】
CHORUS (GWLADYS ROBERTS, ERNEST PIKE, PETER DAWSON)(p LANDON RONALD)
[7203b] 3617 The old folks at home (Foster) DA337 【E♭, 452, 74.5】
[7204b] 3618 Goodnight (Scott-Gatty) 【B♭, 452, 74.2】
(p LANDON RONALD)
[7205b] 3619 Away on the hill (Ronald) 【G, 452, 74.2】

5 September 1905 (piano HERMAN BEMBERG)
12-in.
[520c] 03046 Sur le lac (Bemberg), in French 【D, 435, 74.2】
(piano LANDON RONALD, flute FRANSELLA)
[521c] 03047 Lo, here the gentle lark (Bishop) DB347, 95027 【F, 435, 73.9】
(piano LANDON RONALD)
[522c] 03048 Faust: Air des bijoux (Gounod), in French 【E, 435, 74.2】
(piano MELBA)
[523c] 03049 Home sweet home (Bishop) 【F, 435, 74.1】
(piano LANDON RONALD)
[524c] 03050 Goodbye (Tosti)(3 verses) 【A♭, 435, 74.1】

11 July 1906, London
10-in.
[8473b] unpubl. White sea mist (Ronald)
12-in.
   (piano LANDON RONALD, cello W H SQUIRE)
[689c] 03069 Ave Maria (Bach-Gounod), in Latin 【G, 435, 80.2】
CHORUS (piano HERMAN BEMBERG)
[690c] Elaine: L’amour est pur (Bemberg), in French 【E, 435, 77.2】
(piano LANDON RONALD) [EMI LP gives date as as 7 July]
[691c] 03070 Pastorale (Bizet), in French 【F, 435, 77.3】
[692c] 03071 La Bohème: Mi chiamano Mimi (Puccini), in Italian 【D, 435, 77.2】
[693c] 03072 Le Roi d‘Ys: Aubade - Vainement, ma bien-aimée (Lalo) VB13 【A♭, 435, 77.2】


ピッチは、1905年の軍楽隊伴奏のA=452を除いて、すべてA=435としています。
クーベリックG&T補遺に書いたように、
G&Tロンドン・スタジオのピアノ・ピッチは、 the 19th century British standard ("Philharmonic Pitch") A = 452 Hzであったが、ガイスベルグが語った逸話によると、メルバは、1904年10月の録音の際に、ピアノを 自身のコンサートで使っているFrench pitch A = 435に調律し直すよう主張した。」
1904年3月のセッションは、Great Cumberland Place, Londonのメルバの自宅で行われたので、彼女のピアノもA=435に調律されていたと考えるのが自然でしょう。

この中から、題名を太字で示した、「ハムレット」第4幕 狂乱の場 “私も仲間に入れてください”、
[20] Hamlet: Mad scene (Thomas), pt 1 with orchestra【F/o, 435, 75.4】
[21] do, pt 2 with orchestra【B/o, 435, 75.5】
の無銘ビニールプレス盤について、【 】内の回転数で再生し、NaxosのCD[5]と比較してみます。

先ず、pt 1 A vos jeux, mes amis, permettez-moi de graceについて、最初から4分間の平均スペクトルを求めると、

メルバG&Tの回転数_d0090784_13222112.jpg

となりました。
マーストンによる復刻だそうですが、復刻CDには珍しく、高域、低域とも下げた、というか中域を強調した形をしています。聴いた感じも、CDは力強いですが、メルバの声はレコードの方がより清澄に聴こえます。
ピッチを見るために300~600 Hzの範囲をリニアスケールで表示すると、

メルバG&Tの回転数_d0090784_13222148.jpg

レコードは、430 Hzと440 Hzの間になだらかなピークがありますが、CDは、440 Hzを超えたあたりにあります。
今、試みに、B4と思われる490 Hz前後の単峰性のピーク周波数から、A4の周波数に換算してみると、
Vinyl: 約435 Hz
CD: 約441 Hz
となりました。

次に、pt 2 Et maintenant, ecout, ecoutez ma chanson!について、最初から4分間の平均スペクトルを求めると、

メルバG&Tの回転数_d0090784_13222015.jpg

となりました。
全体の形は、pt 1より緩やかですが、やはり中域を強調した形をしています。
ピッチを見るために300~600 Hzの範囲をリニアスケールで表示すると、

メルバG&Tの回転数_d0090784_13222187.jpg

となりました。
レコードは、約433 Hzにピークがありますが、CDは、約439 Hzにあります。
マーストンはA=440になるよう復刻したのかもしれません。

という訳で、ガイスベルグのA=435説を尊重して、当初の回転数で再生した音源を下記にアップします。ただし、小数点以下の値は目安です。

[20] Hamlet: Mad scene (Thomas), pt 1 A vos jeux, mes amis, permettez-moi de grace_75.4
[21] Hamlet: Mad scene (Thomas), pt 2 Et maintenant, ecout, ecoutez ma chanson!_75.5


References
[1] Melba’s Discography | Dame Nellie Melba Museum – Dame Nellie Melba Museum
[2] Alan Kelly, "Miscellaneous G&T Matrix Series 1903 to 1906", MAT101 (1993)
[3] Alan Kelly, "Matrix Series Suffix-c, Twelve Inch Wax Process Recordings made by F W Gaisberg et al (1903 to 1919)", MAT102 (1995)
[4] Chris Zwarg, "Speeds & Keys Vol. I Gramophone Co. (1898-1921)", Truesound Transfers (Berlin, 2018)
[5] Nellie Melba – Complete Gramophone Company Recordings, Vol. 1 - The 1904 London Recordings, Naxos Historical 8.110737 (2002) (Remastered by Ward Marston)




by ibotarow | 2022-01-30 11:12 | 女声_ラッパ吹き込み | Comments(2)
Commented by オペラ大好き at 2022-02-06 13:40 x
いつも楽しみに拝見しています。いぼたろう様の回転数についての書き込みは大変参考になっています。古い録音、特に声楽を聴いていると「昔の歌手はこんなに細かいビブラートだったのだろうか」「テノールもソプラノもこんなに軽い発声だったのだろうか」という気持ちになります。当時はオペラが盛んな時代で聴衆の耳も肥えており、歌手の層も厚かったはず。その人々が本当に私が聴いているレコードの声で歌っていたのか。と思ったりするのです。思い切って短2度下げた回転数(半音下がります)で再生するとご紹介のメルバもタマーニョも太く堂々たる声になります。更に回転数を長2度下げる(全音下がります)と現在活躍している歌手達の目標になるような声になります。これは私の勝手な想像なのですが、メルバやタマーニョが録音するときに短2度、もしくは長2度下げていたのではと思うのです。同様のことを後年ステファノをはじめ名歌手達も行っています。いぼたろう様のご意見をいただけると幸いです。
Commented by ibotarow at 2022-02-07 07:53
オペラ大好きさま、
録音時にキーを下げて歌うことはしばしばあったと思います。
上のリストでいうと、
[404c] 03035 Roméo et Juliette: Je veux vivre, Valse (Gounod), in French DB367 【F/-2, 435, 78.01】
がそうです。
F/-2の意味は、オリジナルキーより半音二つ分、つまり全音下げて歌っている、ということです。
しかし、これは歌手の個人的事情ですので、あまり興味はありません。
それよりも、録音時のピッチはどうだったか、という客観的事実に興味があります。
ピッチに関するデータが載っているのは、ボクの知る限り、上の文献[4]だけですので、まずこれに基づいて再生し、それだけに頼るのは危険ですので、復刻CDと照合する、というのが本ブログのスタンスです。


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