いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

ibotarow.exblog.jp
ブログトップ

タグ:G&T ( 57 ) タグの人気記事


2019年 02月 24日

サラサーテ盤の回転数その6

C. Zwargの"Speeds & Keys" [1]が出て以来、回転数調べはすっかりやる気が失せました。
目の前にいきなり虎の巻をぶら下げられたようなもんですからね。人が堕落するのは必定です。

しかしながら、サラサーテ盤の回転数は今まで何回かトライしましたが、未だ明解な結論は得られていません。
そこで、せめて虎の巻にはどんな解が載っているのか見てみようと、[1]から、キー、ピッチ(Hz)、回転数(rpm)のデータを拾って【 】内に記入すると、下記のようになりました。

1905 Paris

[4258o] 37931 Partita No 3 BWV1006: Prelude (Bach) 【 E, 442, 72.1 】

[4259o] 37932 Introduction et Caprice Jota, Op 41 (Sarasate) 【 G, 441, 72.5 】

[4260o] 37933 Introduction et tarantelle, Op 43 (Sarasate) 【 C, 441, 71.7 】<333.1>

[4261o] 37934 Miramar-Zortzico Op 42 (Sarasate) 【 Cm, 441, 71.8 】<331.7>

[4262o] 37929 Caprice basque Op 24 (Sarasate) 【 Am, 441, 71.8 】<333.1>

[4263o] 37930 Zigeunerweisen Op 20 (Sarasate) Part-1 【 Cm, 441, 71.9 】

[4264o] 37935 Zigeunerweisen Op 20 (Sarasate) Part-2 【 Cm, 441, 72.3 】<334.4>

[4265o] 37936 Danzas españolas, Op 21. Habanera (Sarasate) 【 Dm, 441, 72.2 】<333.8>

[4266o] 37937 Zapateado, Danse des souliers Op 23 No 2 (Sarasate) 【 A, 441, 72.4 】<333.8>

[4267o] 37938 Nocturne Op 9 No 2 (Chopin-Sarasate) 【 E♭, 441, 72.5 】

基準ピッチはプレリュードだけA=442 Hzですが、あとはA=441 Hzに揃っています。
回転数は72 rpm前後でバラついていますが、それほど大きな変化はありません。この値を以前その5で作った復刻CD,復刻LPの回転数を比較したグラフに追記すると下図のようになりました。

d0090784_19034577.jpg

似ているのもありますが、違うのもあり、どれが正解かは何とも言えません。
最初は見るだけのつもりだったのですが、これらの回転数でレコードを再生した時、ピッチがA=441 Hzになるかどうか調べることにしました。
実際は内外周のピッチ差があるかもしれませんが、それは無視し、演奏の初めから終りまでの平均スペクトルを求め、300 Hzから600 Hzまで表示すると下図のようになりました。

d0090784_19034481.jpg

ピッチはわりと揃っており、特に330 Hzあたりの、たぶんE4のピークは、チゴイネルワイゼンpt.1を除いて、よく揃っているのがわかります。
でも、440 HzあたりのA4のピークは明確ではありません。これは楽曲にその音があまり含まれていないことを意味するのでしょう。

そこで、E4と思われるピークの周波数を求め、上のリストの<>内に記入しました。
これらの平均を取ると、
(333.1+331.7+333.1+334.4+333.8+333.8)/6=333.3 Hz
になります。
これがE4だとすると、A4の周波数は、
333.3*1.3348=444.9 Hz
となります。
予期した441 Hzより少し高めですが、似た値になりました。
この違いの原因を考えるためにはさらに詳しい解析が必要となりますが、めんどうなのでやめておきます。

次に、上と同じ回転数で再生した内周トラックの平均スペクトルを、400 Hzから460 Hzまで表示すると下図のようになりました。

d0090784_19034512.jpg

430 Hzあたりに分布している曲が多いですが、チゴイネルワイゼンpt.1は数Hz低く、ミラマールは数Hz高くなっています。いずれも富士山の山頂のような幅があるのは、回転ムラがあるためでしょう。

楽曲トラックと内周トラックのピッチは違うんではないかと以前から感じていましたが、これは内外周の回転数差で説明できるかもしれません。
今、楽曲トラックのピッチがA=440 Hzとすると、半音下は、
440/1.059=415 Hz
ですから、430 Hzは、半音のさらに半分の4分音くらい下に相当します。

カッターレースの駆動トルクの関係か、あるいは他の原因かよくわかりませんが、カッティング時、外周より内周の方が回転数が速くなる場合があるようです。その場合、一定回転数で再生すると、内周部のピッチは低くなります。
もし、楽曲トラックの平均回転数が72 rpmのとき、ピッチがA=440 Hzだとすると、内周トラックの430 Hzが440 Hzになる回転数は、
72*440/430=73.7 rpm
になります。
以前、その5でチゴイネルワイゼンpt.1の始めと終わりで、回転数にして約1 rpmの差があることを報告しました。
今回の回転数差は1.7 rpmで、それより大きいですが、そんなに荒唐無稽な値でもありません。
でも、これ以上詳しく調べようとすると、楽曲トラックのピッチ変化がどうなっているか追いかける必要がありますが、めんどうなのでやめておきます。

という訳で、今回も結論らしきものは得られませんでした。

Reference
[1] Chris Zwarg, "Speeds & Keys Vol. I Gramophone Co. (1898-1921)", Truesound Transfers (Berlin, 2018)





by ibotarow | 2019-02-24 08:37 | ヴァイオリン_ラッパ吹き込み | Trackback | Comments(0)
2019年 01月 27日

シャリアピンのディスコグラフィー その1(第1次大戦前)

d0090784_08135048.jpg

去年の暮近く、マーストンからシャリアピン(1873-1938)のCD全集[1]、d0090784_08142665.jpg
Feodor Chaliapin: The Complete Recordings 51301-2 (13 CDs)
が届いた。CD13枚もさることながら、解説書の厚みが半端ない。
10数年前、アルバイター[2]からシャリアピンの復刻CD全集をリリースするというアナウンスがあり、1枚ずつ出始めて何枚か買ったが、途中で沙汰止みになった。
それが、なぜマーストンに移ったかという経緯はマーストン自身の解説に詳しいが、アルバイターに音源を提供していたVladimir Gurvichの未亡人Helen Gurvichから音源と歌詞テキストおよびその翻訳を提供されて、全集を出す決心をしたようだ。

トラックリスト冒頭に位置する曲は、
1. Kak korol’ shyol na voynu (When the king went forth to war), Op. 7, No. 6 (Koenemann), (572x) 22820
である。
それにつけても思い出すのは、21世紀に入って間もなくの頃、大阪にディスクロンドというSPレコードのインターネットショップがあって、当時たいへんお世話になった。
そのカタログの中に、
フェオドール・シャリャピン(Bas) ケネマン:王が戦いに行くとき 10" SS 赤 G&T 22820 A- 350,000
があって、その高値に驚いたが、最近、ebay[3]で
78rpm FEODOR CHALIAPIN sings Koenemann Ballade - ULTRA RARE FLUSH G&T 1902
Price:US $1,499.00 (Approximately JPY 163,414)
を見つけた。
マーストンも解説の中で、
「同じ1902年のカルーソに比べて、シャリアピンの最初の8枚は、G&Tが原盤を破棄したため、2000ドルを超える価格で取引されている。」
と書いている。
ディスクロンドの値付けは、そうべらぼうではなかったんだと今になってわかった。閉店されてずいぶんになるが、店主のYさんはお元気であろうか?

こんなレコードはもちろん持っていないので、写真のレコードは1910年8月26日モスクワ録音の、
[2007c] HM 95 ASKOLDOVA MOGILA: V starinu zhivali dedy
        (ASKOLD’S TOMB: In olden days our forefathers lived) (Verstovsky)
で、ヒストリックマスターズから出たビニールプレスである。
ラッパ吹込みのビニールプレスは、シェラックプレスとは全く異なる、異様に生々しい音が得られる。これに嵌ると、蓄音機はもはや無用の長物となるのである。

この機会にシャリアピンのディスコグラフィーを作ろうと思った。
マーストンのトラックリストをコピペしてフォーマットを整えるだけという手抜き作業にいそしんだ結果、1日でだいたいの形はできた。
ただ、今までディスコグラフィーを作る時は、複数の資料を参照し校訂することにしているので、これをケリーのディスコグラフィー[4-8]と照合することにした。

そうすると、意外にもマーストンのリストに無い番号が次々と出てくる。
例えば、1902年の最初のセッションを見ると、マーストンには[576x]が無いが、ケリーには、
[576x] [22824] Razocharovanie, Op 65 No 2 (Chaikovsky) [see 623x]
があり、これは後に[623x]として再吹込みされた曲の元テイクであったことがわかる。

このように、マーストンのリストは現実に音源が存在するものだけなのに対し、ケリーの方はそれ以外のものも含まれているということであろう。

そこで、方針を変えて、ケリーの資料を基に、マーストンを参考にしながら作ることにした。
録音日に差異のある場合は、後年の資料の方が正確であろうと勝手に解釈してマーストンを採用した。
ただ、ケリーのマトリクス・シリーズはまだ全部はリリースされていなく、しかも手元にあるのはPhase 1の1920年くらいまでである。

それでやむなく、第1次大戦前の1914年までのディスコグラフィーを「その1」として作った。
ただし、1914年の
25 January & 4 April 1914, Saint Petersburg
の2つのセッションは、Pearsによる録音でケリーのMAT111に載る予定であるが、ケリーさんが亡くなった今、どうなることやら。消息をご存じの方、ぜひご教示を乞う次第である。
したがって1914年のリストはマーストンのデータのみに依拠する。
この次のセッションは、第1次大戦後の1921年まで無い。

d0090784_15173987.jpg
d0090784_15173975.jpg
d0090784_15174099.jpg
d0090784_15174053.jpg
d0090784_15174088.jpg
d0090784_15174064.jpg
d0090784_15173951.jpg

References
[1] https://www.marstonrecords.com/collections/frontpage/products/chaliapin
[2] http://arbiterrecords.org/catalog/the-chaliapin-edition-volume-1/
[3] https://www.ebay.com/itm/78rpm-FEODOR-CHALIAPIN-sings-Koenemann-Ballade-ULTRA-RARE-FLUSH-G-T-1902/252995002879
[4] ALAN KELLY, "Matrix Series Suffix h (early use suffix-x), Recorded by WILLIAM SINKLER DARBY (1901 to 1909)", MAT104 (November, 1994)
[5] ALAN KELLY, "Matrix Series Suffix-m, Recorded by Max Hampe (Hampe II)(1904 to 1920)", MAT105 (September, 1995)
[6] ALAN KELLY, "Matrix Series Suffix-c, Twelve Inch Wax Process Recordings made by F W Gaisberg et al (1903 to 1919)", MAT102 (October, 1995)
[7] ALAN KELLY, "Matrix Series Suffix i(y)/j, Recorded by WILLIAM SINKLER DARBY (1903 to 1909)", MAT104 (October, 2003)
[8] ALAN KELLY, "Matrix Series Suffix-e, Ten Inch Wax Process Recordings made by W C Gaisberg et al (1903 to 1921)", MAT103 (October, 1994)





by ibotarow | 2019-01-27 08:37 | 男声_ラッパ吹き込み | Trackback | Comments(0)
2018年 11月 25日

クライスラーG&T その3

"Speeds & Keys" [1]を入手してからというもの、回転数調べは、すっかりやる気が失せてしまいました。
こういう本が出ることを渇望していたにもかかわらず、実際手に取ってみると、うれしいような、がっかりしたような複雑な気分です。
しかし、これまで調べた値とどれくらい違うか、一応比べてみることにしました。

クライスラーG&T4面のリストに、[1]による【 キー, ピッチ(Hz), 回転数(rpm) 】を書き加えました。
()内の値は前報クライスラーG&T その2の推定値です。

1904, Berlin
47944 [2084X] Chanson sans paroles (Tschaikowsky) 【 F, 443, 75.5 】(74.9)
47945 [2085X] Sarabande (Sulzer) and L'Abeille (Schubert) 【 D, Em, 443, 75.9 】 (75.7)
47946 [2086X] Prelude in E (Bach) 【 E/o, 443, 76.3 】 (76.2)
47947 [2087X] Air on the G string (Bach) 【 C/-2, 443, 78.0 】 (77.6) 

ここで、キーのスラッシュ以下の表記は、/oがスコア通り、/-2は半音二つ分、つまりスコアより全音低いという意味です。後者については、本当かなあという気がしますが、取りあえずは紹介するだけに留めておきます。

d0090784_14503142.jpg

Biddulphの復刻CD[2]に加えてこれら3種の回転数を並べてみると、多少差はありますが傾向は似ています。
どれが正解かはわかりませんが、まあどれも、当たらずとも遠からず、といったところでしょうか。 

Reference
[1] Chris Zwarg, "Speeds & Keys Vol. I Gramophone Co. (1898-1921)", Truesound Transfers (Berlin, 2018), p 160.
[2] The complete acoustic HMV recordings, BIDDULPH LAB 009-10 (1989)



by ibotarow | 2018-11-25 08:34 | ヴァイオリン_ラッパ吹き込み | Trackback | Comments(0)
2018年 10月 08日

クーベリックG&T補遺

d0090784_08574924.jpg

最近出た、"Speeds & Keys"[1]を見ると、1902年頃のロンドンG&Tのピッチは、A=452 Hzを採用しています。
クーベリックのG&Tは、

1902.10.26, Recordings made in London
[2700W] private Romance (d’Ambrosio)【 D, 452, 68.8 】
[2701 W2] 7956 Serenade No. 1 in A (Drdla) 【 A, 452, 69.4 (67.4) 】
[2703 2W] 7957 Lucia di Lammermoor: Sextetto (Donizetti-St Lubin) 【 D, 452, 71.0 (68.8) 】
[2704W] private Faust: Fantasia (Gounod) 【 F, 452, 71.5 】

1903.11.21
[4601b] 7967 Carmen: Habanera (Bizet-Sarasate)  【 D, 452, 74.2 (72.2) 】
[4602b] 7968 Carmen Suite: Chanson bohème (Bizet-Sarasate) 【 E, 452, 74.5 (72.1) 】
[4605b] 7961 Theme & Pizzicato - Nel cor non più mi sento (Paisello-Paganini) 【 G, 452, 75.3 (68.6) 】

1904.10.20
[401c] 03033 Ave Maria (Bach-Gounod) with Nellie Melba (s) 【 G, 435, 77.1 (68.8) 】
[408c] 07901 La ronde des lutins (Bazzini) 【 E, 435, 78.5 (79.8) 】

【】内の値は、左から、キー、ピッチ(Hz)、回転数(rpm)です。
また、()内の値は、前報"クーベリックG&T"で、A=440としたときの推定結果で、だいぶ違います。

特に、メルバとクーベリックのアヴェマリア03033 [401c]は、標準ピッチ(pitch standard)も違いますが、キーが違います。

Musical Key: G (F)
Pitch Standard: 435 Hz (440)
RPM Speed: 77.1 rpm (68.8)

そういえば、メルバG&Tにはキーが書いてあるのもあったなと、拙ブログ"メルバとクーベリックのアヴェ・マリア"のレーベル写真を見ると、上に再掲したように、
Key G
でした。この頃はレーベルの部分だけ丁寧に切り取っていたんですねえ。
それはともかく、前報"クーベリックG&T"で見た楽譜がたまたまヘ長調だったのですが、これはやり直しですね。

d0090784_09225052.jpg

そこで、ト長調の楽譜[2]を見ると、出だしの音はBです。

もし、A4=435 Hzを採用したとすると、B4は、
B4=435*1.122462=488.271 Hz 
です。

78 rpm再生時の冒頭の音の周波数は、前報"クーベリックG&T"のFig. 14を見ると、
498.6282 Hz
ですが、外周と内周の回転数差があるかもしれないことを考慮して、平均スペクトルから求めた同じ音程の音は、
493.2449 Hz
となります。これを
488.271 Hz 
にする回転数は、
78*488.271/493.2449=77.2 rpm 
となり、[1]の値とほぼ等しくなります。

次の問題は、A=435が妥当かどうか、です。
しかしながら、当時のピッチに関する情報はほとんどありません。

そこで、ピッチ・スタンダードの根拠を[1]の著者にメールで聞いてみたところ、2回にわたって長文の返事を貰いました。
その概要を記します。

まず、A=452について、
・ピッチ・スタンダードは、数百のケースについて試行錯誤によって決めた。

・リファレンスとして用いたのは、調律の範囲が非常に狭い軍楽隊の金管(数Hz変えるには、新しい楽器の購入が必要、あるいは調律の不可能なチューブラー・チャイム、グロッケンシュピール等である。

・時には不協和音が生ずることもある。
例えば初期のロンドンのG&Tでは A=452 "Old Philharmonic Pitch"で調律されたピアノや楽団に対して、French standard A=435に調律されたチャイムが聞こえる。

・しかし1907年に、スタジオ・オーケストラの楽器を"New Philharmonic" Pitch A=439にアップデートしたので、このチャイムはよりスムーズに合うようになった。

次に、A=435について、
・G&Tロンドン・スタジオのピアノ・ピッチは、 the 19th century British standard ("Philharmonic Pitch") A = 452 Hzであった。

・ガイスベルグが語った逸話によると、メルバは、1904年10月の録音の際に、ピアノを 自身のコンサートで使っているFrench pitch A = 435に調律し直すよう主張した。

・軍楽隊だけは20年にわたって、A = 452 を維持した。
たとえば1905年のメルバの伴奏をしたColdstream Guardsは、彼女の思い通りにはならなかった。
それで、レーベルに"Key E-flat"の表記がある"Come back to Erin" はA = 452で、同じ日のランドン・ロナルド伴奏の同じキーの"Old Folks at home" A=435と全く違う。

A=435の妥当性ですが、まあ、ガイスベルグがそう言っていると書かれると、そうかと納得せざるを得ませんね。
たしかに、1907年のロンドン録音のリストを見ると、オーケストラはA=439ですが、ピアノはA=435になっています。これはメルバの置き土産?でしょうか。

ちなみに、1905年の2曲は、
1905.09.04 London
[7202½b] 3616 Come back to Erin (Claribel) 【 E♭, 452, 74.3 】
[7203b] 3617 Old folks at home (Foster) 【 E♭, 435, 74.5 】
で、マトリクス番号が連続しています。
絶対音感のあるメルバにとって、さぞ気持ち悪かったことでしょう。

その他、"Speeds & Keys"[1]には、以下のさまざまなピッチ・スタンダードが列挙されていました。

430 Hz; Italian Military Band Pitch

432 Hz; recommended for vocal music by Verdi

435 Hz; Diapason normal: Nominal French standard

439 Hz; New Philharmonic Pitch

440 Hz; Modern Standard Pitch

443 Hz; Prussian Military Band Pitch

446 Hz; Pleyel's 19th century piano pitch

447 Hz; Mahler's preferred pitch for Vienna Opera

452 Hz; Old Philharmonic Pitch, British Military Band Pitch

461 Hz; Austo-Hungarian Military Band Pitch, High Viennese Pitch

また、この本のIntroductionにもたいへん興味深いことが書かれています。プレビュー版[3]で読めますので、回転数に関心のある方は、ぜひご一読を。

References
[1] Chris Zwarg, "Speeds & Keys Vol. I Gramophone Co. (1898-1921)", Truesound Transfers (Berlin, 2018)
[2] https://mahoroba.logical-arts.jp/score/download.php?id=128
[3] https://www.truesoundtransfers.de/SpeedsKeys1Preview.pdf

d0090784_07205274.jpg



by ibotarow | 2018-10-08 08:05 | 女声_ラッパ吹き込み | Trackback | Comments(0)
2018年 04月 22日

クーベリックG&T

d0090784_09180920.jpg
Bruno Seidler- Winkler (piano) and Jan Kubelik (violin) during a recording.
In the background: recording engineer Max Hampe. [1]

これまでの試行で、楽譜や復刻CDに依存しない回転数推定法がほぼ確立したと思われますので、途中でほっぽってあるサラサーテやエネスコの見直しをやる必要があるのですが、やはり今まで回転数を調べたことのないレコードに興味を惹かれます。
そこで今回はヤン・クーベリック(1880-1940)のG&Tを採り上げました。
なお、上の写真は[1]から拝借しましたが、クーベリックの恰幅の良さから考えて、G&T時代より後のHMV時代のものではないでしょうか?

クーベリックG&Tのリストを拙ブログから再掲しますと、

Jan Kubelik G&T Recordings

1902.10.26, Recordings made in London
[2700W] private Romance (d’Ambrosio)
[2701 W2] 7956 Serenade No. 1 in A (Drdla) 27946 27955 37938 47952 77912
[2702b] 7957 Lucia di Lammermoor: Sextetto (Donizetti-St Lubin)
[2703 2W] 7957 do 27947 27957 37939 47953 77913
[2704W] private Faust: Fantasia (Gounod)

1903.11.21
[4601b] 7967 Carmen: Habanera (Bizet-Sarasate)  47954 77914
[4602b] 7968 Carmen Suite: Chanson bohème (Bizet-Sarasate) 27956 37941 47955 77915
[4603b] Cadenza to Paganini (Émile Sauret)
[4604b] destr do
[4605b] 7961 Theme & Pizzicato - Nel cor non più mi sento (Paisello-Paganini) 27958 37940

1904.10.20
[6152b] Berceuse (Cui)
[6153b] Träumerei (Schumann)
[6154b] destr Jocelyn: Berceuse (Godard) with Nellie Melba (s), (piano Landon Ronald)
[400c] destr Ave Maria (Bach-Gounod), in Latin
[401c] 03033 do
[407c] no title on file
[408c] 07901 La ronde des lutins (Bazzini)037906 077902

1904.11.15
[6230b] Berceuse (Cui)

このうち市販されたのはカタログ番号を持つ下記の7面です。

7956 Serenade No. 1 in A (Drdla)
7957 Lucia di Lammermoor: Sextetto (Donizetti-St Lubin)
7967 Carmen: Habanera (Bizet-Sarasate)  
7968 Carmen Suite: Chanson bohème (Bizet-Sarasate)
7961 Theme & Pizzicato - Nel cor non più mi sento (Paisello-Paganini)
03033 Ave Maria (Bach-Gounod)
07901 La ronde des lutins (Bazzini)

この7面を78 rpmで再生した時の300から600 HzのスペクトルをFig. 1に示します。

d0090784_14342685.jpg

このデータから、440 Hz付近のピーク周波数を拾うと、

7956 Serenade No. 1 in A (Drdla); 421.24 Hz
7957 Lucia di Lammermoor: Sextetto (Donizetti-St Lubin); 422.59 Hz
7967 Carmen: Habanera (Bizet-Sarasate) ; 421.92 Hz
7968 Carmen Suite: Chanson bohème (Bizet-Sarasate); 421.92 rpm
7961 Theme & Pizzicato - Nel cor non più mi sento (Paisello-Paganini); 415.86 rpm
03033 Ave Maria (Bach-Gounod); 441.43 rpm
07901 La ronde des lutins (Bazzini); 429.99 rpm

となりました。
この周波数をA4だと仮定して、これを440 Hzにする回転数を求めると、

7956 Serenade No. 1 in A (Drdla); 78*440/421.24=81.47 rpm
7957 Lucia di Lammermoor: Sextetto (Donizetti-St Lubin); 78*440/422.59=81.21 rpm
7967 Carmen: Habanera (Bizet-Sarasate) ; 78*440/421.92=81.34 rpm 
7968 Carmen Suite: Chanson bohème (Bizet-Sarasate); 78*440/421.92=81.34 rpm
7961 Theme & Pizzicato - Nel cor non più mi sento (Paisello-Paganini); 78*440/415.86=82.53 rpm
03033 Ave Maria (Bach-Gounod); 78*440/441.43=77.75 rpm
07901 La ronde des lutins (Bazzini); 78*440/429.99=79.82 rpm

となりました。
この回転数で再生した時の300から600 HzのスペクトルをFig. 2に示します。

d0090784_14364960.jpg

440 Hzにピークを合わせただけなので、これが果たして本当のA4音なのかどうか、半音ずれていないかどうか、わからないのが絶対音感の無い身のつらいところです。
冒頭で、楽譜も復刻CDもいらないと大口を叩いた手前、多少後ろめたさはありますが、復刻CD[2]と比較してみましょう。
このCDには1902年録音のクーベリックが4曲入っていますが、復刻時の回転数が下記のように明記されています。

29: Serenade № 1 in A "Kubelík-Serenade" (Franz Drdla)
violin: Jan Kubelík
10" disc Gramophone 2701 b (7956) • key A, 69.4 rpm, 2:25 min

30: Fantaisie sur un thème de Lucia di Lammermoor (Leon de Saint-Lubin op.46)
violin: Jan Kubelík
10" disc Gramophone 2703 b (7957) • key D, 71.0 rpm, 2:42 min

これと比較すると、半音はおろか全音以上の相違があります。
これは始めからやり直しですね。



More

by ibotarow | 2018-04-22 08:34 | ヴァイオリン_ラッパ吹き込み | Trackback | Comments(0)
2018年 04月 01日

クライスラーG&T その2

クライスラーのG&T4枚については、前回、 復刻CDとピッチを合わせて回転数を求めましたが、今回ティボーFonotipiaで用いた、演奏全体のスペクトルからピッチ推定する方法を適用し、再度回転数を求めることにしました。

まず、Biddulphの復刻CDの300 Hzから600 HzのスペクトルをFig. 1に示します。

d0090784_15424484.jpg

あまりピッチが揃っているとは言えませんが、A4=440 Hz前後に揃えたいという意思は感じられます。
次に、レコードを78 rpmで再生した時の300 Hzから600 HzのスペクトルをFig. 2に示します。

d0090784_15424499.jpg

当然ながら、ピッチはCD以上にばらついています。
このデータからA4付近のピーク周波数を拾うと、

Chanson sans paroles (Tschaikowsky); 458.25 Hz 
Sarabande (Sulzer) and L'Abeille (Schubert); 453.54 Hz 
Prelude in E (Bach); 450.18 Hz
Air on the G string (Bach); 442.10 Hz

となりました。
ここではピーク値を示した周波数をそのまま用い、カーブフィッティング等の処理は行っていません。
これらの値から、A4=440 Hzになる回転数を求めると、

Chanson sans paroles (Tschaikowsky); 78*440/458.25=74.89 rpm  
Sarabande (Sulzer) and L'Abeille (Schubert); 78*440/453.54=75.67 rpm  
Prelude in E (Bach); 78*440/450.18=76.24 rpm  
Air on the G string (Bach); 78*440/442.10=77.63 rpm  

となりました。
前回求めた復刻CDと合わせた回転数との比較をFig. 3に示します。

d0090784_15424409.jpg

多少差はありますが、全体的な傾向は似ています。
最後に、A4=440 Hzになるように、上記の回転数に合わせたレコード再生音源の300 Hzから600 HzのスペクトルをFig. 4に示します。

d0090784_15424495.jpg

Fig. 1よりピッチは揃っており、単純にピーク周波数を採用しても、まあ大丈夫なようです。
この回転数で再生したMP3音源を下記にアップしました。

Chanson sans paroles (Tschaikowsky); https://yahoo.jp/box/uXUGQk
Sarabande (Sulzer) and L'Abeille (Schubert); https://yahoo.jp/box/Pjki62 
Prelude in E (Bach); https://yahoo.jp/box/gzhbxR
Air on the G string (Bach); https://yahoo.jp/box/jCxQIS

前回の回転数の音源はそのまま置いてあります。ボクには違いが全くわかりませんが。



by ibotarow | 2018-04-01 08:04 | ヴァイオリン_ラッパ吹き込み | Trackback | Comments(0)
2018年 02月 25日

クライスラーG&T

d0090784_17085501.jpg

もう老い先短い身であるし、SPレコードを新しく入手するのはやめようと思っていたのですが、クライスラーG&Tのプレリュードが出ているのを目にし、どうせダメだからと安い値を付けておいたら、思いもかけず落札してしまいました。
はからずも4枚が揃い、数十年前に4枚揃いを達成されたボストンの大先達の後塵をやっと拝することができました。
これで最後にしようと思います。

この機会に、クライスラーG&Tの回転数を調べてみることにしました。
調べると言っても、復刻CDと合わせるだけのお手軽&手抜き調査ですが。どうせ、当時の基準ピッチがわからない以上、正解はありません。
比較したのは、Biddulphの復刻CD [1]です。
結果は、

47944 [2084X] Chanson sans paroles (Tschaikowsky) : 75.2 rpm 
47945 [2085X] Sarabande (Sulzer) and L'Abeille (Schubert): 75.0 rpm 
47946 [2086X] Prelude in E (Bach): 75.5 rpm
47947 [2087X] Air on the G string (Bach): 78.4 rpm 

となりました。
マトリクス番号が連続していることから考えて、同じ時に録音されたと思われますが、回転数は全くバラバラでした。
特に「G線上のアリア」は他の3枚とかけ離れた値です。

他の復刻CDではどうだろうかと探してみると、Testament [2]に「G線上のアリア」がありました。
結果は、上とあまり大差のない、
78.0 rpm
となりました。

d0090784_17083053.jpg

この演奏の基準ピッチはどのくらいだろうと、楽譜 [3]に赤丸で示した6小節目の2分音符Gの周波数を調べてみると、下図に示すように、
396 Hz
でした。

d0090784_17083422.jpg

これはG線の開放弦でしょうから、オクターブ下の200 Hz付近の小さなピークがファンダメンタル成分だと思われますが、当時の録音システムでは入らず、倍音のみが現れているのでしょう。

GとAの周波数比は1:1.12246だから、Aは、
396 * 1.12246 = 444.5 Hz
となります。

d0090784_17083858.jpg

念のため、「プレリュード 75.5 rpm」の楽譜 [4]に赤丸で示す16分音符G#を調べてみると、下図に示すように、
416 Hz
でした。

d0090784_07423434.jpg

G#とAの周波数比は1:1.05946だから、Aは、
416 * 1.059 = 440.5 Hz
となります。

このことから、「G線上のアリア」の78 rpmは、そんなに的外れの値でもありません。
もし、A=440 Hzに合わせるなら、
78 * 440 / 444.5 = 77.2 rpm
で再生すれば良いことになります。

下記の回転数で再生したMP3音源をそれぞれのページにアップしました。
カートリッジはDL-102SD、イコライザはフラットです。
いずれも写真をクリックすると音が出るはずです。

Chanson sans paroles (Tschaikowsky) : 75.2 rpm https://ibotarow.exblog.jp/3741587/
Sarabande (Sulzer) and L'Abeille (Schubert): 75.0 rpm https://ibotarow.exblog.jp/3740600/
Prelude in E (Bach): 75.5 rpm このページ
Air on the G string (Bach): 77.2 rpm https://ibotarow.exblog.jp/3741169/

References
[1] The complete acoustic HMV recordings, BIDDULPH LAB 009-10 (1989)
[2] The Great Violinists - Recordings From 1900-1913, TESTAMENT SBT21323 (2003)
[3] https://violinsheetmusic.org/files/download/classical/bach-wilhelmj-air-for-the-g-string-violin.pdf
[4] https://violinsheetmusic.org/files/download/classical/bach-prelude.pdf




More

by ibotarow | 2018-02-25 08:07 | ヴァイオリン_ラッパ吹き込み | Trackback | Comments(0)
2017年 10月 08日

サラサーテ盤の回転数その5

d0090784_20240009.jpg

10年ほど前、チゴイネルワイゼンの回転数について調べた結果を、下記の4回にまとめました。

サラサーテ盤の回転数その1 
サラサーテ盤の回転数その2 
サラサーテ盤の回転数その3 
サラサーテ盤の回転数その4 

あまり明解な結論は得られませんでしたが、論点を整理すると、
1.HMV、ビクターによると、チゴイネルワイゼンは77 rpm。
2.4種類の復刻CDは、おおよそA=440 Hzで復刻している。
3.演奏トラックと、内周トラックのピッチは違うのでは?
等です。

先日クレイトンの復刻LP[1]を入手したのを機に、これらをもう一度検証してみたくなりました。
そこで、チゴイネルワイゼンを含む7種類のレコードについて、5種類の復刻盤で再調査しようというのが今回の目的です。

先ず、サラサーテの録音は、下記の9曲10面です。録音年はDAHR[2]に依ります。

[4258o] Partita No 3 BWV1006: Prelude (Bach)
Gramophone 37931, 67903, AA111, E183, EW3, P527

[4259o]  Introduction et Caprice Jota, Op 41 (Sarasate)
Gramophone 37932

ca. Nov 1904-Dec. 1, 1904 Paris
[4260o] Introduction et tarantelle, Op 43 (Sarasate)
Gramophone 27961, 37933, 47965, 61886, 67904, AA-112(Spain), E-183, ER-75(Czechoslovakia), EW-3(Germany), P527
Victor 52709, 62111

12/1/1904 Paris
[4261o] Miramar-Zortzico Op 42 (Sarasate)
Gramophone 27960, 37934, 47964
Victor 52708, 62110, 97231

ca. Nov 1904-Dec. 1, 1904 Paris
[4262o] Caprice basque Op 24 (Sarasate)
Gramophone 27959, 37929, 47966, 67900, AA-110(Spain), ER-76(Czechoslovakia)
Victor 52720, 62115, 63168

ca. Nov 1904-Dec. 1, 1904 Paris
[4263o] Zigeunerweisen Op 20 (Sarasate) Part-1
Gramophone 27962, 37930, 47962, 67901, E-329, AA-110(Spain), EW-2(Germany)
Victor 52710, 62112, 63167, 97245

ca. Nov 1904-Dec. 1, 1904 Paris
[4264o] Zigeunerweisen Op 20 (Sarasate) Part-2
Gramophone 27961, 37935, 47963, 67902, E-329, AA-111(Spain), EW-2(Germany)
Victor 52711, 62113, 63167, 97246

ca. 1904-1905 Paris
[4265o] Danzas españolas, Op 21. Habanera (Sarasate)
Gramophone 37936, 47967
Victor 52707, 97230, 62110

[4266o] Zapateado, Danse des souliers Op 23 No 2 (Sarasate)
Gramophone 37937

[4267o] Nocturne Op 9 No 2 (Chopin-Sarasate)
Gramophone 37938

これらのうち、プレリュード、カプリス・ホタ、ノクターンは持っていないので、それ以外の7面について調べます。

次に、回転数の推定法をデジタル化その16 ヨーゼフ・ハシッドからコピペしますと、
“まず、レコ―ドをクォーツロックのかかる78 rpmで再生、録音します。
この波形と、復刻CDの波形を、Audacity[3]上で比較します。
「スピード変換」によってレコードの波形を伸縮させて、両者が同じ長さになるように合わせます。つまりピッチを合わせるのではなく、演奏時間を合わせようという魂胆です。
両者を同時再生して、同じピッチ、同じテンポであることを確認します。
その時の変換係数を78に掛ければ、復刻CDの再生回転数が出ます。”

一例としてチゴイネルワイゼンpart 2の波形を図1に示します。
上がクレイトン盤の再生波形、下がレコードを72.8 rpmに合わせた波形です。

d0090784_20244434.jpg
図1 チゴイネルワイゼンpart 2の再生波形:クレイトン復刻盤(上)とレコード@72.8 rpm(下)

それから、内周トラックの周波数は、Audacityの「スペクトラム表示」のピークの値から求めました。
一例として上図下段の最後に見られる内周トラックのスペクトルを図2に示します。

d0090784_20253834.jpg
図2 チゴイネルワイゼンpart 2の内周トラックのスペクトル

内周トラックにはA音が録音されていると言われていますが、78 rpmで再生した時、レコード間でどのくらい周波数の、ひいては回転数のバラつきがあるかを調べてみました。
結果を図3に示します。録音した時は同じ高さの音だったはずですが、458 Hzから471 Hzまでかなりバラついていることがわかります。

d0090784_20255402.jpg
図3 78 rpmで再生した時の内周トラック周波数

さて、7種類のレコードに対する、5種類の復刻盤の調査結果を示します。
推定再生回転数を図4に、

d0090784_20262247.jpg
図4 5種類の復刻盤の推定再生回転数

図4の回転数における内周トラックの周波数を図5に示します。

d0090784_10302777.jpg
図5 図4の回転数で再生した時の内周トラックの周波数

まず目につくのは、クレイトンとその他の復刻盤との差です。
クレイトンは、大幅にずれているのもありますが、内周トラックの周波数が440 Hz近辺になるように回転数を調整するという方針だったようです。
A=440 Hzが正解かどうかは別にして、これは非常に合理的な考えだと思うのですが、現実はそう単純でもないようで、その他の復刻者は、そうは考えなかったようです。 1970年代(たぶん)と1990年代以降との違いですかね。

チゴイネルワイゼンpart1の場合、4種類の復刻CDは見事に70.7 rpmあたりに揃っています。
この回転数で再生したチゴイネルワイゼンの出だしのG音のピッチは、「サラサーテ盤の回転数その4」に書いたように、冒頭に挙げた論点2の
2.4種類の復刻CDは、おおよそA=440 Hzで復刻している。
に準拠したものとなりました。

その時の内周トラックの周波数は4種類とも415 Hz近辺で、440 Hzとは大きく異なります。
これは、先に挙げた論点3の、
3.演奏トラックと、内周トラックのピッチは違うのでは?
という仮説を裏付けるものです。

また、先に挙げた論点1の
1.HMV、ビクターによると、チゴイネルワイゼンは77 rpm。
ですが、
「サラサーテ盤の回転数その3」に書いたように、HMVの第2カタログには、
タランテラ:75 rpm
チゴイネルワイゼン:77 rpm
で再生せよ、と書いてあります。

タランテラの場合、78 rpm再生時の周波数は図3に示すように469 Hzですので、75 rpmでは、
469/78*75=451 Hz
となります。

チゴイネルワイゼンpart1の場合は、458 Hzですので、77 rpmでは、
458/78*77=452 Hz
となり、タランテラとほぼ一致します。
つまり、HMVの主張はそれなりに整合性があります。

ただ、チゴイネルワイゼンpart2は、464 Hzですので、77 rpmでは、
464/78*77=458 Hz
となり、part1と少し異なります。

HMVのカタログを作った人はpart1だけで77 rpmだと判断したとすると、内周トラックのピッチは、A=452 Hzとなります。
「サラサーテ盤の回転数その4」では、A=454 Hzが当時の演奏ピッチであろうと無理やり結論付けましたが、
ここで、先に挙げた論点3の
3.演奏トラックと、内周トラックのピッチは違うのでは?
の観点から、
演奏トラックのピッチをA=452~454 Hzとする回転数を考えると、70.7 rpmでA=440 Hzなので、
452/440x70.7=72.6 rpm
454/440x70.7=72.9 rpm
となります。
72.6~72.9 rpmが、HMVの顔もある程度立てた?落としどころじゃないでしょうか。

この場合の内周トラックの周波数は、77 rpmで452 Hzなので、72.6 rpmでは、
72.6/77x452=426 Hz
となります。
これは、A=452 Hzのピッチにおける、A♭に相当しますが、ほかの曲でも、図5に示したように、演奏トラックと内周トラックで、半音ほどではないにしても、差があるようです。




More

by ibotarow | 2017-10-08 07:31 | ヴァイオリン_ラッパ吹き込み | Trackback | Comments(0)
2017年 06月 11日

デジタル化その8 ヨーゼフ・ヨアヒム

8回目は、Joseph Joachim (1831-1907)です。

ヨアヒムのG&T盤は下記の5面あります。
いずれも黒レーベルだと思っていましたが、最近某オークションで赤レーベルが2枚出ていましたので、最初は赤盤で発売されたようです。
ヨアヒムのレコードはこれがすべてで、別に他社に録音したわけではないのに何で黒盤になったんだろ?

G&T
27? June 1903, Berlin
047903 [204y] Bach: Sonata for Violin solo no. 1 in G minor, BWV 1001: Prelude
047904 [205y] Bach: Partita for Violin solo no. 1 in B minor, BWV 1002: Tempo di Bourée
047905 [217y] Brahms: Hungarian Dance no. 2 in D minor (arr. Joachim)
047906 [218y] Joachim: Romance in C Major
047907 [219y] Brahms: Hungarian Dance no. 1 in G minor (arr. Joachim)

まず、ハンガリー舞曲第1番ですが、
SYMPOSIUMのビニールプレスには78 rpmと書いてあります。
念のため、TESTAMENTの復刻CD[1]と合わせてみると、これも78 rpmのようです。

次に、ハンガリー舞曲第2番は、無銘のビニールプレスですが、回転数はTESTAMENTの復刻CD[1]と合わせた結果、81.5 rpmとなりました。
なお、81.5という値は有効数字3桁という意味ではなく、81と82のあいだという程度にお受け取りください。
しかし同時期の録音でここまで回転数が異なるのは奇異な感じがしますが、同じ復刻CDですので、この値を信用することにしました。

ハンガリー舞曲第1番
047907 [219y] Brahms: Hungarian Dance no. 1 in G minor (arr. Joachim)
の音源を下記にアップしました。
http://ibotarow.exblog.jp/4519371/

ハンガリー舞曲第2番
047905 [217y] Brahms: Hungarian Dance no. 2 in D minor (arr. Joachim)
の音源を下記にアップしました。
http://ibotarow.exblog.jp/3964333/

いずれも写真をクリックすると音が出るはずです。


これでラッパ吹込み盤は予定終了です。
梅雨の間は、例年レコードケースに乾燥剤を入れ、レコードの出し入れはしませんので、デジタル化は梅雨明けまでお休みします。

Reference
[1] The Great Violinists - Recordings from 1900-1913, TESTAMENT SBT1323 (2012)



by ibotarow | 2017-06-11 07:41 | ヴァイオリン_ラッパ吹き込み | Trackback | Comments(4)
2017年 05月 14日

SPレコードのデジタル化その4 ジュール・ブーシュリ

4回目は、Jules Boucherit(1877-1962)の1枚です。

Disque pour Gramophone 1906, Paris
237902 [5592o] Thais: Méditation (Massenet)
237903 [5599o] Menuet du Concert k219 (Mozart)

オリジナルはZonophoneですが、これはDisque pour Gramophoneレーベルです。
斯界の大御所M・Sさんの話では、ゾノフォンの方が音が太い、とのことです。

ジュール・ブーシュリ回想録[1]によると、フランス・ベルギー楽派のブーシュリは、同楽派の特徴について、
「情緒派と厳格派から等距離にある奏派である。」
と言っていますが、二つの派とはサラサーテとヨアヒムのことでしょうか?
彼はこうも言っています。
「私は物の見方に少々難があり、もちろん意図的ではないにせよ、一種の癖のようなものがある。それは、無意味で不要に思える細かい事象にのみ、深い感銘を受けるということだ。」
これらは、ブーシュリの芸風をよく伝えていると思います。

さて、回転数は、調べても徒労に終わるだろうと、何も考えず復刻CD[2]に合わせました。
その結果、両面とも76 rpmとなりました。もうちょっと速いかもしれません。

モーツァルトの音源を下記にアップしました。

1906, Paris
237903 [5599o] Menuet du Concert k219 (Mozart)
http://ibotarow.exblog.jp/9612716/

写真をクリックすると音が出るはずです。

レーベル写真の無い、裏面の音源の公開方法はどうしようかなあ、と思っているのですが、試みにタイスは、ダウンロードの手間はありますが容量に余裕のあるYahoo Boxにアップしてみました。

1906, Paris
237902 [5592o] Thais: Méditation (Massenet)
http://yahoo.jp/box/KphuSX

References
[1] マリア・ソリアノ, "ヴァイオリンの奥義 ジュール・ブーシュリ回想録 1877-1962", 桑原威夫訳, 音楽の友社 (2010)
[2] The Great Violinists, Vol. 23, Symposium 1349 (2007)

by ibotarow | 2017-05-14 08:07 | ヴァイオリン_ラッパ吹き込み | Trackback | Comments(0)