いぼたろうの あれも聴きたい これも聴きたい

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2017年 12月 30日

エネスコのバッハ無伴奏Remington盤

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以前、エネスコのレミントン盤のことを調べているときに出会った、The Remington Site[1]という、全貌をいまだ把握できていない巨大なサイトがあるのですが、興味ある個所を2,3抄訳して紹介します。


1. Webster Manufacturing Co. Massachusetts - Record Corporation of New England [2]

Continental Records Inc.のDonald H. Gaborは、1947年、レコードプレス工場、 the Record Corporation of New England を、 34, Chase Avenue, Webster, Massachusetts に設立した。

彼は戦時中のシェラックの不足のため、シェラックにvinyliteを25から30%混ぜた"websterlite"を作り出したが、戦後はプラスチックの不足のため、および価格を安くするため、LPレコードの製造に、同様な代替品を考え出した。

1950年秋に、廉価なRemington LPを売り出したとき、ジャーナリストのCecil Smithは、1951年4月23日、有名な政治雑誌The New Republicに、21種のレコード試聴記[3]を書いた。

その中に、エネスコのバッハ無伴奏ロ短調の感想が載っている。
「ジョルジュ・エネスコのバッハ無伴奏ヴァイオリンソナタの演奏は、エネスコの公演のように、優れた音楽家でさえも十分な技術なしには楽器を効果的に演奏できないという痛々しい証拠を提供している。」

ほとんどのリサイタル録音は、
Mastertone Recording Studios Inc. in New York City NY 10036
で行われたが、エネスコのバッハ無伴奏のように、他の場所で行われた例も少なからずある。
それらは、Gaborの自宅、彼のオフィス、スタジオが取れなかった時は普通の室、さらにはWebster工場でさえも。
これは、時計の音がたまに聴こえることで示唆される。

これらの演奏はアセテート盤に録音された。


2. Donald H. Gabor (1912-1980) [4]

Continental RecordsおよびRemington Recordsの創立者Donald Gaborは1912年11月20日、ハンガリーで生まれた。
彼はBudapest Electrical Conservatoryで学んだ。
1938年、26歳の時アメリカに渡り、RCA-Victorに週給$12で雇われた。
両親はハンガリーに留まったが、1944年、ドイツ軍がハンガリーに侵攻した時、ブダぺストを離れることを余儀なくされ、強制収容所で死亡した。

彼は、RCA-Victorに席を置いたまま、Continental Recordsを設立した。
最も初期の録音は、1941-1942年、当時ニューヨークに住んでいたハンガリーの作曲家Béla Bartókの彼の自宅でのピアノ録音である。

これらの録音は、Continentalレーベルで78 RPMフォーマットでリリースされた。
Donaldは、レコードの売上よりはるかに多くの手当てを支払うことによりバルトークをサポートした。
後にLPに転写され、Continental CLP-101として、また1952年にRemington R-199-94として発売された。

1948年に、Massachusetts、Websterの古い工場を買い取り、彼が考案したプラスチックコンパウンドでレコードをプレスした。

1950年になって、33 RPM Long Playing recordの事業に参入するため、Remington Records Inc.を設立した。
多くのContinental録音がLPに転写されて発売され、後にRemingtonレーベルで再発売された。

当初、大衆にアピールするため、レコードの価格はビッグレーベルの1/3に設定された。
ポピュラーは99 ¢、クラシックは10インチ$1.49 と12インチ $1.99。
6か月後、$1.69 and $2.19に値上げされたが、なお、RCAの2/5であった。

生産コストを抑えるため、Donaldはギャラの高いアーティストとは契約しなかったし、Vinyliteの代替品である安価なWebsterliteを使ったが、そのため音質も劣化した。

ジョルジュ・エネスコは、バッハの6つのソナタとパルティ―タをContinentalレーベルに録音した。それらは1950年に発売された。

Don Gaborは、1980年、68歳の誕生日に心臓発作で死去した。


3. Georges Enesco (1881-1955) [5]

まずエネスコ自身の言葉、
「多くの人々を魅了する完璧さは、私には興味がありません。 芸術で重要なことは、自分自身を震撼させ、他人を震撼させることです。」

弟子は、Arthur Grumiaux, Ivry Gitlis, Ida Haendel, Christian Ferras、そしてもちろん、Yehudi Menuhin。

エネスコは、1881年8月19日、ウクライナ国境に近い小さな町Liveniで生まれた。
3歳の時、ジプシーの音楽を聴いて音楽への愛に目覚めた。
5歳のとき、彼は地元の先生から最初の音楽の手ほどきを受け、2年後にウィーン音楽院に入った。
ヴァイオリンの先生は、Joseph Hellmesberger Jr. (1855-1907)で、作曲をRobert Fuchs (1847-1925)に学んだ。
4年後、エネスコはGrand Medal of Honor (Silver Medal)を得た。

14歳のとき、Hellmesbergerは、もうウィーンでは教えることは無いと、彼をパリ音楽院に送った。
作曲をJules Massenet (1842-1912), André Gédalge (1856-1925),Gabriel Fauré (1845-1924)に、
ヴァイオリンを Armand Marsick (1877-1959)に学んだ。
1899年、17歳で、彼は1等賞を得た。

第1次大戦中、エネスコはルーマニアに住んだ。
戦争の前後、彼はヨーロッパやアメリカに多くのコンサートツアーを行った。

1927年からは第2の故郷フランスに住んだ。
その年の1月、パリでのリサイタルで、一人の少年に出会った。
翌朝、その少年メニューインは、エネスコのアパートを訪ね、彼の前でヴァイオリンを弾いた。
その演奏に驚いたエネスコは直ちに生徒として受け入れた。

彼は多くの音楽家と協演した。
パリ交響楽団Orchestre de l'association des concerts Colonne'を指揮した。
再び北米に行き、1936-37年のシーズンにニューヨークフィルを指揮した。

1939年、エネスコはMaria Rosetti (Princess Maria Cantacuzino)と結婚し、第2次大戦中はルーマニアに住んだ。

1946年にパリに帰り、
1947年、彼はバッハのヴァイオリンのための3つのソナタと3つのパルティ―タを演奏した。

1948年から1950年にかけて、ニューヨークのMannes School of Musicで教鞭を取った。
このアメリカ滞在時に、Continental Recordsに、バッハのソナタとパルティ―タを録音した。
テープレコーダはすでに実用されていたが、これらはアセテートに録音された。

1950年1月21日、エネスコはヴァイオリニスト、指揮者、作曲家として、ニューヨークで告別コンサートを行った。
この後、エネスコの健康はもはやヴァイオリンを演奏することを許さなくなったが、ときどき指揮者としてBBCのラジオ放送や、デッカへの録音を行った。

1950年は、バッハ逝去200年記念の年で、Schwann Long Playing Record Catalogの1950年9月版には、 エネスコとAlexander Schneiderの2種類のバッハ無伴奏全曲盤がリストアップされている。

1950年8月26日のBillboard誌に、コンチネンタルCLP-104のレビューが掲載された。

「バッハ無伴奏LPでの競争の中で、この限定販売品のエネスコのレコードは、少数の反体制派(*)を除いては、あまり評価を得るのは難しいかもしれないが、多くの愛好家は、ゴツゴツした、でも暖かみのある人間性を好むだろう。
著名なヴィルトゥオーゾやヴァイオリン教師にとって、テクニックは最後の拠り所ではなく、ほとんどのヴァイオリン弾きは、幅広いスタイルでレッスンする必要がある。
エネスコは、明るいパッセージでは、ジプシーのような情熱を注ぐことができるのだ。
プレスや表面の状態はとても良好。」

エネスコのコンチネンタル演奏はアセテート盤に録音された。
Donald Gaborのエンジニアがこのアセテート盤をテープに移したかどうかは知られていない。

アセテート盤は当初、コンチネンタル3 LPセットの供給源として使用されただけだった。
しかし、1974年のオリンピックレーベルの3 LPの再発売では、エベレストのエンジニアによって、アセテート盤からテープに移され、ポップスやヒスを排除するために編集され、フィルタリングされたと言われている。

エネスコのコンチネンタルセットは1952年1月に引き続き入手可能であったが、その年の3月までにシュワンのカタログから抹消された。

理由の一つは、エネスコの演奏が演奏の本質的価値である音楽性よりも、アーティストのテクニックに大きな意味を持つ何人かのレビューアーからの演奏の技術的側面についての批判であった。
セシル・スミスは、レミントンレーベルでリリースされた唯一のソナタに関して、1.に記したように、否定的レビューを書いた。

スミスは明らかに、これが67歳のエネスコであり、関節炎に襲われていたこと、そして彼の能力は若い頃の影に過ぎないことを忘れていた。
しかし、これらの演奏は、技術だけで演奏されるよりも偉大である。

1952年3月からは、10インチレミントン(PL1-149)のソナタ2番の演奏だけがカタログに残っていた。

その後、エネスコのバッハ無伴奏の演奏はレミントンMUSIRAMAレーベルで再発売された。
レーベルには元のカタログ番号はなく、6つのマトリクス番号(TA-16/17/18/19/20/21)のみが表示されている。
Gaborは1953年9月のシュワンのカタログでMUSIRAMAブラック/ゴールドレーベルのシリーズを発表したが、1957年頃にレッド/ゴールドレーベルのバリエーションが発売された。

1954年、エネスコは脳卒中を起こし、1955年5月4日、パリで死去した。


*:原文はbig longhair tenters。この語の訳出に関しては、Unicornさんとエピクロスさんに多大のご教示を得た。ここに厚く感謝の意を表する。



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by ibotarow | 2017-12-30 10:48 | ヴァイオリン_電気録音 | Trackback | Comments(0)
2016年 12月 18日

ベートーヴェンOp.1 ステレオvs.モノラル

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定年になって時間ができるとブログの更新もどんどんできると思っていたのですが、どうも最近モチベーションが上がりません。
つらつら考えるに、以前は仕事からの逃避がブログを書く原動力になっていたようで、逃避する必要がなくなった今、モチベーションもだんだん低下してきたと思われます。
というようなことを、先日ある会の忘年会でさる先達に申し上げたところ、それは燃え尽き症候群だと言われました。
それではいけないと、今レオ・スレザークのディスコグラフィーを作っているのですが、年内に出来上がりそうにないので、前にミクシーに書いた記事でお茶を濁します。

ベートーヴェンのピアノトリオ作品1ですが、ハンガリートリオ演奏のステレオ盤DF740.003のことを以前ちょっと書きました。
これのモノラル盤DF730.032がずっと気になっていたのですが、音の違いを聴きたいという不純な動機で、とうとう入手してしまいました。
それが先日到着して、さっそく聴き比べてみました。
マトリクスは下記のとおりです。

DF740.003 
[740003 1 21, M6 209095] Op.1-1 (1959 April 6 - 11)
[740003 2 21E, M6 210170] Op.1-2 (1959 April 9 - 11)

DF730.032
[730032 1 22, M6 209722] Op.1-1
[730032 2 21, M6 207698] Op.1-2

まず感じたのは、音の違い以上にトレースの安定度で、モノラルの方がはるかに安定しています。
次に感じたのは、音源の位置で、ステレオは当たり前ですが、3つの楽器がバラバラの位置から聴こえるのに対して、モノラルは、一か所からまとまって聴こえるので、音楽も一体感があるように聴こえます。

それで本題の音ですが、ステレオの方が多少派手に色付けされているようで、音楽が華やかで、躍動感があります。
それに対してモノラルは、ステレオより素朴で静かな、落ち着いた音楽に仕上げられています。

う~ん、個人的には、ベートーヴェンの処女作としては、ステレオの元気な音楽の方がふさわしいと思いますが、これはボクがはたちの頃にステレオ盤を聴いたときの刷り込みがあるかもしれません。
モノラルで聴く作品1は、ステレオより大人びて聴こえます。

でも、これほど違いがあるとは思ってもみませんでした。
これはカッティングの機械の差なのか、あるいは意識的にやっているのか?
いずれにしてもフランス盤はひねくれてます。

その後、このトリオの録音はステレオ、モノラル取り混ぜて下記のように全曲集まりました。
3番以降についてはいずれそのうち。

Beethoven Trios n° 1 & 2: 740.003, 730.032
Beethoven Trios n° 3 & 4: 730.034,
Beethoven Trios n° 5 & 6: 740.005
Beethoven Trio n° 7 Archiduc: 740.006
Beethoven Trios n° 8, 9, 10 & 11: 730.033
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by ibotarow | 2016-12-18 07:05 | ヴァイオリン_電気録音 | Trackback | Comments(0)
2016年 09月 10日

カール・フレッシュ(1873-1944)のエジソン盤

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以前、カール・フレッシュのディスコグラフィーで、フレッシュのレコードは1枚もないと書いたが、その後、エジソン盤を3枚入手できた。
しかし、縦振動盤はカートリッジを付け替えて、面倒な調整が必要なので、なかなか聴く機会がなかった。

前回、ニノン・ヴァランの縦振動盤を聴いたついでに、カール・フレッシュも聴いた。
聴いたのは次の3枚である。
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1914.04.09 with Homer Samuels (p)
[2946-A] 82063-R Gesänge No.6: Ave Maria, D 839 (Schubert, arr. Wilhelmj)

1926.02.08 with Kurt Ruhrseitz (p)
[10820-B] 82349-R Légende, Op.17 (Wieniawski)
[10818-A] 82349-L Norske Danser Op.35, 2 (Grieg, arr. Flesch)

1928.03.23 with Raymond Bauman (p) d0090784_725422.jpg
[E 18331-A] 80897-R Rêverie Op.22, 3 (Vieuxtemps,), 47001 [N 149-A], 30006-L [12052-A]

1928.03.24 with Raymond Bauman (p)
[E 18335-C] 80897-L Hejre Kati - Scène de la Czarda, op.32, 4 (Hubay), 47001 [N 152-A], 30006-R [12051-A]

前記事に書いたように、
エジソンが電気録音に移行したのは1927年4月からなので、前の2枚はラッパ吹込みである。
なお、80000シリーズはLight Classical、82000シーズはClassical & Operaticである。
また、Nで始まるマトリクスは横振動盤、30000番台は片面5曲収録の長時間盤であり、前者は縦振動と同時録音、後者はダビングによって作られた。

まず、1914年録音のシューベルト (1797-1828)のアヴェ・マリアであるが、後の2枚に比べて高域レンジが狭い。
またピアノの音量が小さい。でもヴァイオリンの音は力強く捉えられている。

2枚目の1926年録音のヴィニアフスキー (1835-1880)のレジェンドと、グリーグ (1843-1907)のノルウェー舞曲は、1914年と比べて、目の覚めるような鮮明さである。
それは、1928年の電気録音と比べても遜色ないほどであり、ピアノの音量もしっかりと入っている。

3枚目は1928年録音のヴュータン (1820-1881)のリヴリーと、フバイ (1858-1937)のヘイレ・カティ。
2枚目に比べて細身で繊細、しかも柔らかさで勝る。ワイドレンジなのであろう、ピアノは低音が豊かである。

フレッシュというとヴァイオリン教師という先入観があり、写真を見ても堅物のイメージがあるので、教科書風の演奏を想像するが、今回の小品を聴く限り、決してそんなことはない。
ヴォルフシュタール (1899-1931)、ヌヴー (1919-1949)、ハシッド (1923-1950)、それぞれ個性的で素晴らしいが、19世紀スタイル丸出しのねちっこいポルタメントや、興の趣くままのオッサンクサいアゴーギクで、でも俗に堕することなく、師匠の貫禄を見せつけ弟子たちを圧倒する。

この機会に、前記事のディスコグラフィーを改訂した。

なお、[1]で、
Microsoft Excel database file of all published/un-published Edison Diamond Disc records
なるファイルを見つけたが、これは、[2]と全く同じ。

References
[1] EdisonDiamondDisc.com (http://www.edisondiamonddisc.com/)
[2] TRUESOUND ONLINE DISCOGRAPHIES (http://web.archive.org/web/20080708221913/http://www.truesoundtransfers.de/index.html)
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by ibotarow | 2016-09-10 16:55 | ヴァイオリン_ラッパ吹き込み | Trackback | Comments(5)
2015年 12月 27日

キャスリン・パーロウのニッポノホン

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先日、標記のレコードが出ていたので、どうしてもというほどではないけれど、大正時代の日本のラッパ吹込みのヴァイオリンの音を聴いてみたいなと思って、最低価格で入札しておいたら、無競争で落札してしまいました。

ニッポノホン(株式会社日本蓄音器商会)の例の大仏が耳を傾けているオリジナルスリーブに入っていて、そこに書かれている宣伝文を紹介すると、

ワシ印レコードは
吹込技術の精巧なると品質
の優良なるとに於いて斯界
第一の信用と聲價を博して
をります加ふるに吹込の藝
術家は何れも第一流の人々
を網羅し常に斬新の曲種を
發賣して市場より白熱的の
歡迎をうけてをります。

時代を感じさせる、なかなか味のある文章ですね。特に旧字体の漢字がいい、これ出すの苦労したけど。
吹込藝術家の名前が並んでいて、歌舞伎や邦楽がほとんどですが、ヴァイオリニストは、このキャスリン・パーロー(1890-1963)とナタリ・ボシコ(1899-未詳)の名前が見えます。

パーロウのニッポノホン録音は、以前作ったディスコグラフィー から抜き書きすると、

Nipponophone

November 1922, Tokyo
9044 [9044-6] Minuet (Beethoven)  
9045 Liebesfreud (Kreisler)  
9047 [9047-5] Thais; Meditation (Massenet)  
9048 Rosamunde (Schubert-Kreisler)  
9049 Serenade (Drigo-Auer)  
9059 [9059] Home, Sweet Home (Payne-Bishop)  
10020 [10020-?] Souvenir (Drdla)   
10021 [10021-1] Spring Song (Mendelssohn)   
15068 [36392-1] Humoresque (Dvorak-Wilhelmj)  
15068 [36392-3?] Ave Maria (Schubert-Wilhelmj)  
15255 Serenade Espagnole (Chaminade) 
15255 Cavalleria Rusticana; Intermezzo (Mascagni)
15434 Moment Musical (Schubert) 
15434 Air on the G String (Bach) 

の14面ありますが、今回入手したレコードは、
10020 [10020-?] Souvenir (Drdla)  
10021 [10021-1] Spring Song (Mendelssohn)
です。

[ ]内は、レーベルの下に手書きで陰刻されているマトリクス番号です。
10021は、くっきりと刻まれていますが、
10020は、彫りが浅くてテイク番号が読み取れませんでした。

スーベニールの演奏時間は80rpmで再生して3分22秒ほどで、そんなに長時間というほどではないのですが、ピッチが粗いのか、レーベルの直径は6cmしかありません。

1890年生まれのパーロウはこのとき32歳位ですが、まだ薹が立っていないような可愛らしい演奏が聴かれました。
音はあまり力強くありませんが、ラッパ吹込みにしてはレンジの広いフラットな録音だと思います。つまり、日本的な音です。
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by ibotarow | 2015-12-27 11:28 | ヴァイオリン_ラッパ吹き込み | Trackback | Comments(0)
2015年 11月 01日

天才少女時代の美空ひばり―フィルモグラフィー

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承前、美空ひばりのディスコグラフィーを作っているときに、映画の中で歌われているのはレコードとは違うバージョンであることに気づきました。
Youtubeにレコードと映画と両方あるのを聴き比べてみると、 映画の方は、レコードの初々しさがなく、ふてぶてしい感じです。
録音システムの違いもあるかもしれませんが、レコード方がマイクの前で緊張して歌っているようで好感が持てます。

映画デビューの方がレコードデビューより早く、1949年3月の「のど自慢狂時代」で、ブギウギを歌う少女として出演しましたが、何を歌ったかさだかではありません。[1]

また、レコードに吹き込まれなかったためにディスコグラフィーには無い、映画の中でのみ歌った曲も多数あるので、美空ひばりの歌唱を網羅するのに、ディスコグラフィーだけでは片手落ちだと思うに至ったのです。

そこで[2]を元に彼女のフィルモグラフィーを作り始めました。
1950年までに録音された曲で、映画公開が1951年になった曲もあるので、1951年までを含めました。
ディスコグラフィーと同様、Youtubeで見つかった映画挿入歌のURLを記載しました。

美空ひばりが映画の中でどんな歌を歌っているか知りたくていろいろ探したが見つからず、代わりに、歌っている時間を集計した文献[3]を見つけました。
その中の表4から、歌唱時間A(美空ひばりが映画に映って歌っている時間)を抜き出して、フィルモグラフィーに記載しました。
こうして見ると、1曲約2分として大体網羅できているのではないでしょうか?
「鞍馬天狗 角兵衛獅子」だけ、[3’ 17”]の歌唱時間に比べて大幅に多くの歌がYoutubeにありますが、このうちいくつかはほかの映画の誤記かもしれません。
また「あの丘を越えて」は、あと1-2曲あるかもしれません。

なお、写真の出典は[4]です。



              美空ひばりのフィルモグラフィー (1949-51)
                                               [ ]は歌唱時間

1949/3/28
のど自慢狂時代 東横

1949/6/7
びっくり五人男(ラッキー百万円娘) 新東宝 [4’ 15”]
『憧れのハワイ航路』 https://www.youtube.com/watch?v=tW1aqo7qfC4
『ジャングル・ブギー(替歌)』 https://www.youtube.com/watch?v=Zfmc8bsK_VA

1949/8/1
踊る龍宮城 松竹 [1’ 09”]
『河童ブギウギ』 https://www.youtube.com/watch?v=hSPT_US3C28

1949/10/11
あきれた娘達(金語楼の子宝騒動) 新東宝 [2’ 32”]
『題名不詳2曲』 https://www.youtube.com/watch?v=RSwXK7s98_Y

1949/10/24
悲しき口笛 松竹 [6’ 26”]
『悲しき口笛』 https://www.youtube.com/watch?v=GorIRRmeFkg
『ブギにうかれて』 https://www.youtube.com/watch?v=lBa1QuDzktQ
『別れのタンゴ』 https://www.youtube.com/watch?v=Lx-s9YuO67M


1949/12/13
おどろき一家 大泉
ホームラン狂時代 東横

1950/2/14
ヒットパレード 東映

1950/4/1
憧れのハワイ航路 新東宝 [8’ 32”]
『ひばりの花売娘』 https://www.youtube.com/watch?v=LPZAFqq8hkI '
『タンゴ』 https://www.youtube.com/watch?v=UcxbzV6Sv4o
『かよい船・玄海ブルース・薔薇を召しませ』 https://www.youtube.com/watch?v=DrqPllFCIyc
『題名不詳』 with 岡晴夫 https://www.youtube.com/watch?v=kK10jFPXJTE

1950/4/9
放浪の歌姫 松竹
『私のボーイフレンド』
続・向こう三軒両隣り 第三話・どんぐり歌合戦 新東宝 [5’20”]

1950/4/23
エノケンの底抜け大放送 新東宝

1950/4/26

戦後派親爺 新東宝

1950/05/07
続・向こう三軒両隣り 第四話・恋の三毛猫 新東宝 [5’20”]

1950/5/20

青空天使 東横
『青空天使』
『ひばりが唄えば』

1950/9/9
東京キッド 松竹 [10’ 30”]
『東京キッド』 https://www.youtube.com/watch?v=UJ_aKUob-IY
『浮世船路』
『みなしごの歌』 https://www.youtube.com/watch?v=ViGYOmnGJqE
『湯の町エレジー~トンコ節』 with 川田晴久 https://www.youtube.com/watch?v=GrD9y9bRX24
『ひばりが唄えば』 https://www.youtube.com/watch?v=C8ryfeVWQ-4 

1950/12/2
左近捕物帳 鮮血の手型 松竹 [2’ 36”]
『ちゃっかり節』 https://www.youtube.com/watch?v=TCbbrklBWNI
『誰か忘れん』 https://www.youtube.com/watch?v=1Ai4fPtCcNY

1950/12/23
黄金バット摩天楼の怪人 新映画

1951/1/3
とんぼ返り道中 松竹 [5’ 57”]
『越後獅子の唄』 https://www.youtube.com/watch?v=L2mH4rq7YCk
『あきれたブギ』 https://www.youtube.com/watch?v=D9Kvasm41CY
『舞踊 ・奴凧~越後獅子の唄』 with 宮城千賀子 他 https://www.youtube.com/watch?v=ipQuMQG9cW0

1951/3/9
父恋し 松竹 [3’ 24”]
『私は街の子』 https://www.youtube.com/watch?v=zfTgKxiG2HE
『父に捧ぐる歌』 https://www.youtube.com/watch?v=2QxLtkvfePc

1951/4/27
唄祭りひばり七変化 松竹

1951/5/19

泣きぬれた人形 松竹 [7’ 00”]
『泥んこブギ』 https://www.youtube.com/watch?v=Dlhjl3SEI-U
『庭の千草』 https://www.youtube.com/watch?v=QY-XnI8pYjc
『愛の明星』 https://www.youtube.com/watch?v=WwBMh4dhEi4
『故郷の廃家 ( My Dear Old Sunny Home )』 https://www.youtube.com/watch?v=Nk80U8YxyTk

1951/7/12
鞍馬天狗 角兵衛獅子 松竹 [3’ 17”]
『鞍馬天狗巻頭の口上~角兵衛獅子の唄』 with 川田晴久 https://www.youtube.com/watch?v=VkMct-HBuA4 [1’ 35”]
『角兵衛獅子の唄~川田節(飴売り唄)』 with 川田晴久 https://www.youtube.com/watch?v=jDZSnBQCB0k [0’ 50”]
『京の春雨』 https://www.youtube.com/watch?v=L94ox7hzcCs (ひばりの映るシーンはわずか)
『浪曲 紺屋高尾』 https://www.youtube.com/watch?v=FjxG1M8OpzU [1’ 37”]
『唄入り観音経』 https://www.youtube.com/watch?v=B9sbt6MjhCs [1’ 48”]

1951/7/27
母を慕いて 松竹 [10’ 50”]
『母を慕いて 舞踊場面』 https://www.youtube.com/watch?v=NhwoKMcgg64
『京小唄』 https://www.youtube.com/watch?v=nMQz5izH_fU
『別れ船』 with 田端義夫 https://www.youtube.com/watch?v=OrTR8ioIsy4
『かよい船』 with 田端義夫 https://www.youtube.com/watch?v=jsGGdsYBxXg
『大利根月夜』 with 田端義夫 https://www.youtube.com/watch?v=w7ky16-rNJ8

1951/9/21
ひばりの子守唄 大映 [4’ 52”]
『おさげとまきげ』 https://www.youtube.com/watch?v=-0YeCcSZLWg
『父恋し母恋し』 https://www.youtube.com/watch?v=QllJ0PGlprU
『私のボーイフレンド』 https://www.youtube.com/watch?v=MVUqMkpyWmM
『説教場面~父恋し母恋し・おさげとまきげ』古今亭志ん生 https://www.youtube.com/watch?v=jFRABoN6hIM

1951/10/12

鞍馬天狗 鞍馬の火祭 松竹 [3’ 52”]

1951/11/1
あの丘を越えて 松竹 [10’ 16”]
『あの丘越えて』 with 鶴田浩二 https://www.youtube.com/watch?v=k7otXrUVNaQ [2’ 14”]
『街に灯がとぼる頃』 https://www.youtube.com/watch?v=BFhPb4rwy18 [2’ 38”]
『夢の花かげ』 https://www.youtube.com/watch?v=iijZM071VD0&index=5&list=RDw7ky16-rNJ8 [2’ 33]


最後に、ここにあげたYoutubeの曲のほとんどをアップされたalouette529さんに厚く感謝の意を表します。


References
[1] のど自慢狂時代 「東京国立近代美術館フィルムセンターは、本作の上映用プリント等を所蔵しているが「48分」の不完全版である。現存するのはこの不完全版のみであり、このヴァージョンは美空ひばりの登場シーンを欠損している。」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AE%E3%81%A9%E8%87%AA%E6%85%A2%E7%8B%82%E6%99%82%E4%BB%A3
[2] 美空ひばり 公式ウエブサイト http://www.misorahibari.com/discography/index.php
[3] 斎藤完、”美空ひばりの普及と初期映画の関係” 山口大学教育学部研究論叢. 芸術・体育・教育・心理, 60 号, 115-126 (2011)
[4] ウィキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BE%8E%E7%A9%BA%E3%81%B2%E3%81%B0%E3%82%8A
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by ibotarow | 2015-11-01 08:11 | 女声_邦楽 | Trackback | Comments(0)
2015年 09月 30日

イヴ・ナットの「悲愴」「月光」「熱情」4種

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まったく何をやってるんだと言われそうですが、先日、プレス時期の違う標記のレコードが3枚まとめて出ていたので、音の違いを聴いてみたいという不純な動機で入手しました。
それまでに持っていた1枚と合わせると4種類になります。

古い方から並べると、
1. DF57 grey フラット盤(203 g)
[DF 57 1C21, PARTX 19515, M6 148670] 悲愴、月光
[DF 57 2C21, PARTX 19516, M6 148671] 熱情

2. DF57 green フラット盤(218 g)
[DF 57 1C21, PARTX 19515, M6 148670] 悲愴、月光
[DF 57 2C21, PARTX 19516, M6 148671] 熱情

3. 730.006 グルーブガード盤(151 g)
[730006 1 21C, M6 209345] 悲愴、月光1,2楽章
[730006 2 21C, M6 209037] 月光3楽章、熱情

4. 2C051-10.756 グルーブガード盤(115 g)
[10756 MA(手書き), 73076 MA 21(見え消し), M6 335586 3] 悲愴、月光
[10756 MB(手書き), 73076 MB 21(見え消し), M6 335587 3] 熱情

1と2のDF57は、M6番号がいっしょなので、ほぼ同時期のプレスだと思われます。、
2重円で赤字のグレージャケットの方が、1重円で黒字のグリーンジャケットより古いと思っていましたが、()内のレコード重量を比べると、2のグリーンジャケット方がわずかに重く、こちらの方が古いかもしれません。

ちなみに重量は、3の730シリーズ,4のリファレンスシリーズとどんどん軽くなって、4は115gで、2の218 gのほぼ半分です。これが音に影響しないはずはありませんよね。

曲の配置では、3だけ「月光」が両面に分かれて入っています。
こうすると両面の収録時間のバランスが良くなりますが、使い勝手が悪いというクレームがあったのでしょうか、4では再び前の配置に戻っています。

また、4では、73076という刻印が見えるように消してあります。リファレンスシリーズより古いマトリクス番号の原盤をそのまま使っているよ、ということかもしれません、よくわかりませんが。

なお、M6番号から製造年月日が特定できるはずですが、残念ながら資料がないのでわかりません。
外見的な特徴はこれくらいです。

それでは新しい方から音の特徴を見ていきます。
再生はタンノイバリレラとQUAD QC2で、カーブはNABです。

4.2C051-10.75
柔らかく、軽く、薄く、ソツなくきれいに整っている。低音少な目。

3.730.006
4より多少硬めで、薄く、すっきりとして繊細、低音多め。

2.DF57 green 
中高音が締まり、芯がある。高音に輝き、厚い低音。

1.DF57 grey
コロコロと粒立ちの良い高音、美しい中音、深い低音。

というわけで、見た目の盤の厚さ(重量)に引きずられないようにしようと努力はしたのですが、結果的には、それに比例したような音の特徴となりました。
また、2枚のDF57は、表現は違いますがほとんど同じ音です。

再生系は、タンノイとNABカーブだけでは、古いプレスに有利、新しいプレスに不利になるかもしれませんので、DL103とQUAD33のRIAAカーブでも一通り聴いたんですが、4種間の相対的な差異に関して、感想の大勢は同様でした。

上記以外のレコードについては、以前、さる先達からお借りしたDF57グレージャケットのパンケーキ盤、

[57・1BV3, V・1749 (手書き)] 悲愴、月光
[DF-57 2C2B, XPARTX29025, M6 169470] 熱情

は、その時の感想として、
「1,2面とも、すっきりとして、鮮明です。 ワイドレンジなのでしょう。」
と記しています。
これはM6番号から見ると、上のDF57と730.006の間のプレスなので、音もその中間なのかもしれません。
拙い経験では、DFのパンケーキ盤はレーベル部は厚いんですが音溝部は薄く、音は鮮明ですが、反り易いのが欠点です。

また、別の先達がお持ちのピアノソナタ全集の中の当該レコード、

2C147-10.924M
[10 924 MA 21, M6 321 616 4] 悲愴、月光1,2楽章
[10 924 MB 21, M6 321 617 4] 月光3楽章、熱情

は、M6番号から見ると、4のリファレンスシリーズよりちょっと前のプレスですが、730.006と同じく、月光が両面に分かれて入っています。730シリーズからリファレンスシリーズになる直前までは、この配置だったのでしょうか。
音は聴いていないのでわかりませんが、たぶんリファレンスシリーズに似ているでしょう。

とにかく、イヴ・ナットのこのレコードはベストセラーだったらしく、何べんもカッティングし直されて、他にもいろんな種類があるようで、切りがないのでこれ以上追いかけるのはあきらめます。
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by ibotarow | 2015-09-30 09:19 | ピアノ_電気録音 | Trackback | Comments(0)
2015年 06月 27日

フランツ・ドルドラのディスコグラフィー

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きっかけは某オークションに、日本ポリドールの Franz Drdla(1868-1944)の自作自演レコード10009が出ているのを見つけたことです。
オークションの写真を見るとマトリクス番号が写っていて、サフィックスはarです。
このサフィックスの由来は以前、オネーギンのラッパ吹き込み に記したように、1914年以後、英グラモフォンとは袂を分かったDeutsche Grammophon Aktiengesellschaft の録音です。
日本ポリドールは昭和2年(1927年)に設立され、DGAと原盤契約を結びました。

ドルドラはG&T[1,2]だけだと思っていましたが、こんな録音があるとは知りませんでした。
それでレコードを1枚も持ってないのに、ディスコグラフィーを作りたくなりました。

その前に、ドルドラの録音はないかとYoutubeを探してみたら、 ブルッフの協奏曲
[947 x] 47923 Konzert Nr 1 Op 26: Allegro moderato (Max Bruch), mit Klavier 
がありました。
https://www.youtube.com/watch?v=kiX7HOdyMgA
ドルドラのロマンチックな曲から受けるイメージとは裏腹に、 フーベルマンやタシュナーを彷彿させる力強い演奏でびっくりしました。
風貌もご両人のごっつい顔となんだか似てますよね。

もう一曲ドルドラの演奏を見つけました。スーベニールです。
https://www.youtube.com/watch?v=Qf7UdH2ALVw
その後、Loreeさんから送っていただいたヤン・クーベリック協会の復刻CD[3]の音源と比較して、ポリドールの演奏
[3395 ar] 20194 Souvenir (Drdla) 日Polydor 10009-A
と判明しました。
2分20秒~30秒あたりに、楽譜にないアドリブが聴かれます。
楽譜を見たわけではありませんが、他の演奏と比較して、また下記の記述[4]を読んでそう思いました。

Drdla’s own playing style as revealed by his recordings is articulate and accurate with infrequent use of vibrato, although this is slow and wide where it does occur. In his Souvenir performance (1920) and the 1903 recording of his Chopin arrangement one can also hear his penchant for pronounced portamenti and a fascinatingly free approach to his own notated rhythms, no doubt influenced by his links to folk music traditions. (David Milsom,"FRANZ DRDLA")

この文章にはスーベニールのほかにショパンも挙げられています。
これは復刻CD[3]には入っていないので、どれだけ楽譜から逸脱しているか聴いてみたいものだと思っていましたら、UNICORNさんからPearlの復刻LP GEM102 [5]に入っているよと教えていただきました。
このLPはボクも持っていますが、何十年も聴いていないのですっかり忘れていました。
ドルドラは
[949 x] 47929 Nocturne Op 9 Nr 2 (Chopin-Sarasate)
1曲のみ収録されています。
さっそく聴いてみると、ドルドラは素直に楽譜通りに弾いているようです。
後年のポリドールのような”溜め”はあまり感じません。
その点、物足りないと言えばそうですが、初々しいとも言えます。
音は昔の復刻盤特有の、スクラッチノイズを消した貧弱な音です。

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by ibotarow | 2015-06-27 09:36 | ヴァイオリン_ラッパ吹き込み | Trackback | Comments(0)
2015年 03月 29日

マルセル・メイエルのスカルラッティその後

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またメイエルか、と言われそうですが、これで最後です。
以前入手した1946年録音のスカルラッティ(DF15)は、演奏は溌剌としてすばらしいけれども、ワウフラッターのせいで音が揺れるのが玉に瑕でした。
ヴァイオリンのビブラートは気持ち良いのに、ピアノのビブラートは気持ち悪いのは何ででしょうね。
というわけで、揺れないLP録音のスカルラッティ(DF 139-140)が欲しくなったのであります。(理由になっているかな?)
ほどなく、DF139だけバラで出ていたのを見つけ、数人の競争相手とバトルの末、辛くも入手できました。

1954-11
DF 139
Domenico Scarlatti: Les sonates pour clavier

1面:[DF 139 1C1, XPARTX 25306, M6 163040]
N°12 (Kk.478) - D major, Andante cantabile △
N°14 (Kk.492) - D major, Presto
N°23 (Kk.380) - E major, Andante comodo ○
N°449 (Kk.27) - B minor, Allegro ○
N°450 (Kk.245) - B major, Allegro △
N°33 (Kk.87) - B minor ○
N°58 (Kk.64) - D minor, Allegro ○
N°288 (Kk.432) - G major, Allegro △

2面:[DF 139 2C1, XPARTX 25308, M6 163042]
N°338 (Kk.450) - G minor, Allegrissimo △
N°382 (Kk.69) - F minor △
N°344 (Kk.114) - A major, Spirito e presto ○
N°413 (Kk.9) - D minor, Allegro △
N°415 (Kk.119) -D major, Allegro △
N°423 (Kk.32) - D minor, Aria ○
N°429 (Kk.175) - A minor, Allegro ○
N°468 (Kk.279) - A major, Andante ○


1946年の録音のような勢いの良さはありませんが、暖かく包み込むような、母親のような演奏です。
でも場所によっては、けっこう力強さも感じられます、母は強し。

この後、DF15を聴くと、敏捷で、エネルギー感が違います。逞しいと言ってもいい。
しかし、いささか体操の演技のようではありますが。
○印がDF15にも収録されている曲です。半分ほど重複しているのがわかります。
メイエルの好きな曲、あるいは得意な曲なのでしょうか。
おかげでDF15の良さを再認識しました。揺れるのは我慢しましょう。

なお、△印はSP盤のAlbum 30の収録曲で、○△合わせるとDF139はほとんど重複しているがわかります。
未入手のDF140も調べてみると、半分以上重複していました。

1955-5
[DF 140 1C1, XPARTX 29125, M6 169832]
N°465 (Kk.96) - D major, Allegrissimo △
N°463 (Kk.430) - D major, Non presto ma a tempo di ballo ○
N°286 (Kk.427) - G major, Presto quanto sia possible △
N°486 (Kk.13) - G major, Presto △
N°475 (Kk.519) - F minor, Allegro assai ○
N°384 (Kk.17) - F major, Presto △
N°498 (Kk.202) - B-flat major, Allegro ○
N°499 (Kk.30) - G minor Moderato ○

[DF 140 2C2, XPARTX 29078, M6 169714]
N°461 (Kk.29) - D major, Presto
N°263 (Kk.377) - B minor, Allegrissimo △
N°490 (Kk.523) - G major, Allegro
N°433 (Kk.446) - F major, Pastorale Allegrissimo
N°104 (Kk.159) - C major, Allegro
N°203 (Kk.474) - E-flat major, Andante cantabile
N°487 (Kk.125) - G major, Vivo ○
N°395 (Kk.533) - A major, Allegro assai

ということで、ボクのスカルラッティのイメージからすると、断然DF15の方なんですが、DF139の優しく、時には強い、母性的魅力にも抗しがたいものがあります。
結局、メイエル・ファンとしては両方必要です。
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by ibotarow | 2015-03-29 11:30 | ピアノ_電気録音 | Trackback | Comments(0)
2015年 03月 09日

赤胴クンでベートーヴェン作品1を

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「猪口才な小僧め、名を、名を名乗れ!」
「赤胴、鈴之助だあ!」
〽剣をとっては 日本一に
(以下略)
で始まるラジオドラマがありました[1]。
いや~、なつかしいですねえ、小学校低学年の頃、家に一台しかないラジオにかじりついて聞いていました。
余談ですが、当時のボクは「日本一に」を「日本一二」と聞いて、日本で一番か二番だという意味かと思っていました。
ウィキペディアによると、このラジオドラマが放送されたのは、1957年1月7日 - 1959年2月14日だそうです[2]。

それと時を同じくして、海の向こうのタンノイ社では、ステレオカートリッジの開発が進められていました。
最初のモデル、Vari-Twinが登場したのは1959年です[3]。
1959年のHiFi Year Bookから、スペックを拾ってみると、

Magnetic stereo cartridge.
Diamond stylus ½ thou.
Output voltage 7 mV per channel.
Range 30-15,000 c/s ±1.5 dB.
D.p. 4 gm.
Load imp. 100,000 ohms.
Price £9 19s. (U.K. purchase tax £4 0s. 5d.)

タンノイの技術者が上のラジオドラマを聞いていたかどうかは不明ですが、奇しくもボディーの色は真っ赤です。
これをもってVari-Twinを、赤胴鈴之助クンと呼ぶゆえんです。

先日、ebayにこのVari-Twinが出ました。
白ボディーのVari-Twin mk.IIは時々見かけますが、mk.Iに相当する赤はめったに見ません。
でも、今さらステレオレコードを集める気もないし、それに45-45方式のステレオはモノラルに比べて非常に無理のある、危なっかしい方式だと思っています。

とても買えない値段でしたが、make offerが付いていましたので、どうせダメだろうけど、ダメだったらどなたかにお知らせしようと、思い切って値切ってみたら、それが通って買うはめになってしまったのです。
通った値段もボクにとってはかなりの高額でしたが、給料をもらっているうちにしかできない買い物だと思うことにしました。

というわけで、赤胴鈴之助クンが我が家にやってくることになりました。
これにふさわしいシェルを用意しなくちゃと、オルトフォンSH-4ピンクを購入し、ワクワクして待っていました。

それが先日到着して、そそくさとシェルに取り付け、さて何を聴こうかとしばし思案し、取り出したのが40年ほど前に現役盤で入手したDF740.003です。
曲目は、ベートーヴェン ピアノ三重奏曲 
第1番変ホ長調 Op.1-1 [74003 1 21, M6 209095] (1959 April 6 - 11)
第2番ト長調  Op.1-2 [74003 2 21E, M6 210170] (1959 April 9 - 11)
録音は1959年[4]、発売は1961年のようです[5]。

演奏は、Trio Hongrois: Georges Solchany, piano - Arpad Gerecz, violin - Vilmos Palotai, violincello
ピアノのジョルジュ・ソルシャニー (1922-1988)は、ブダペスト生まれ。
ブダペスト音楽院でエルンスト・ファン・ドホナーニに、1946年パリに出てマルグリット・ロンに師事しました。[6]
ヴァイオリンのアルパド・ゲレッツ (1924-1992) は、ブタペスト近郊のドゥナケシ生まれ。
1948年スイスに移住、指揮者としても活躍しました。[7]
チェロのヴィルモシュ・パロタイ (1904-1972)もブタペスト生まれで、ブレーメン・オーケストラの首席チェロ、ハンガリー弦楽四重奏団のメンバー。[8]

なお、このトリオは、ベートーヴェンのピアノトリオ全11曲を録音しています。
モノラル盤とステレオ盤のカタログ番号の比較を示します。
Beethoven Trios n° 1 & 2: 730.032, 740.003
Beethoven Trios n° 3 & 4: 730.034, 740.004
Beethoven Trios n° 5 & 6: 730.035,740.005
Beethoven Trio n° 7 Archiduc: 730.036, 740.006
Beethoven Trios n° 8, 9, 10 & 11: 730.033, 740.007

このDF740.003のステレオレコードこそ、ボクにディスコフィル・フランセ盤の魅力を植え付けた、最初の記念すべきレコードなのです。
当時、これをオルトフォンSPUで聴いた時の感激は忘れることはできません。
シックなジャケット、鮮明な録音、若々しい演奏もさることながら、
青春の輝き、ときめき、甘酸っぱさなどが、若きベートーヴェンの自負心と綯い交ぜになった曲の初々しさに感銘を受けました。
この時以来、一番好きな曲はと聞かれたら、ベートーヴェンの作品1だと答えることにしています。

さて、期待と不安にうちふるえながら赤胴クンの針を降ろしました。
あれっ、何かおかしい。ピアノが中央に定位するはずですがボヤケています。左右の位相が逆のようです。
赤胴クンは3本足でアース共通なので、ここで位相をひっくり返すことはできません。スピーカーの片方を逆に繋ぎました。
今度はピアノが中央、ヴァイオリンが右、チェロが左に無事定位しました。
これは何年か前、さる先達の赤胴クンを聴かせてもらったときもそうでしたから、赤胴クンの標準仕様のようです。
その後、先達はカートリッジ内部の配線を入れ替えて位相を正常にされたそうですが、ボクはオリジナルのままで行こうと思います。スピーカー端子を差し換えればいいだけのことですから。

それで、位相が合った赤胴クンの音ですが、、ピアノは玉を転がすようにコロコロと美しく、ヴァイオリンとチェロはツヤのある音で心地良く響きます。
ナローレンジのせいもあるのでしょうか、音楽が一体感を持って鳴り、作曲者の意図、演奏者の熱気が伝わってくるような求心力のある再生音は、他のカートリッジでは得られない貴重なものだと思いました。

今、舞い上がっている最中なので、話1/10でお聞きください。

References
[1] https://www.youtube.com/watch?v=63ABhXW2fZs
[2] http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B5%A4%E8%83%B4%E9%88%B4%E4%B9%8B%E5%8A%A9
[3] http://www.soundfountain.com/amb/ortodeccatan.html
[4] discovering music archives
http://www.dismarc.org/index.php?form=search&db=0
[5] http://data.bnf.fr/documents-by-rdt/13849216/1990/page1
[6] http://blog.livedoor.jp/e86013/archives/2006-03.html
[7] http://dbserv1-bcu.unil.ch/persovd/composvd.php?Code=G&Num=7266
[8] j-m_CELLO DIRECTORY - Vol VI - 1946 - 1975 - Historical Cellists
http://www.j-music.es/incs/f_dir_descarga.php?f=j-m_CELLO%20DIRECTORY%20-%20Vol%20VI%20-%201946%20-%201975%20-%20Historical%20Cellists.pdf&id=6
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by ibotarow | 2015-03-09 21:55 | 蓄音機 | Trackback | Comments(0)
2015年 01月 31日

マルセル・メイエルのスカルラッティ

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バッハ、ラモ―と来るとスカルラッティも聴きたくなります。
この3人はほとんど同時代の人なんですね。
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685年3月31日 - 1750年7月28日)
ジャン=フィリップ・ラモー(Jean-Philippe Rameau, 1683年9月25日 - 1764年9月12日)
ドメニコ・スカルラッティ(Domenico Scarlatti, 1685年10月26日 - 1757年7月23日)

ドイツ、フランス、イタリアのお国柄によって、それぞれの個性に溢れています。
優美、繊細で、女性的、情緒的なラモーに対して、スカルラッティはラモ―より甘さ控えめ、感情も控えめで、理知的、男性的ですが、バッハほど偉そうにしていなくて、イタリアの明るい陽光に満ちています。
スカルラッティはそれまでミケランジェリしか聴いたことなかったのですが、畏友エピクロスさん曰く、
「ミケランジェリの方が人間の情感を合理性、理性でコントロールしているのでしょうね。メイエルは、人間の自然をより重視していると言えるのでしょうね。」
だそうです。なるほど、さもありなんです。

メイエルのスカルラッティの録音は、1946-4949年のSP期と、1954-55年のLP期に分かれます。
まずSPの録音は、拙ブログのディスコグラフィーから抜き出すと、

1946-11-12
Album 15, 4 disques (68-71)
Domenico Scarlatti: Les sonates pour clavier
68 1 [PARTX 3209-1] N°423 (Kk.32) - N°429 (Kk.175)
68 2 [PARTX 3210-1] N°449 (Kk.27)
69 1 [PARTX 3211-1] N°487 (Kk.125) - N°499 (Kk.30)
69 2 [PARTX 3212-1] N°33 (Kk.87)
70 1 [PARTX 3213-1] N°23 (Kk.380) - N°463 (Kk.430)
70 2 [PARTX 3214-1] N°344 (Kk.114)
71 1 [PARTX 3215-1] N°58 (Kk.64) - N°468 (Kk.279)
71 2 [PARTX 3216-1] N°498 (Kk.202) - N°475 (Kk.519)

1948-/49
Album 30, 4 disques (130-133)
SCARLATTI: Sonates
1948-12-20
130 1 [PARTX 6532-1] N°413 (Kk.9) - N°415 (Kk.119)
130 2 [PARTX 6533-1] N°288 (Kk.432) - N°286 (Kk.427)
131 1 [PARTX 6534-1] N°203 (Kk.474)
131 2 [PARTX 6535] N°263 (Kk.377) - N°465 (Kk.96)
132 1 [PARTX 6536-1] N°382 (Kk.69) - N°384 (Kk.17)
132 2 [PARTX 6537-1] N°488 (Kk.8) - N°486 (Kk.13)
1949-5-10
133 1 [PARTX 6538-2] N°338 (Kk.450)
133 2 [PARTX 6539-2] N°450 (Kk.245) - N°12 (Kk.478)

の2つのアルバムがあり、
LP期の録音は、

1954-11 & 1955-5
DF 139-140
Domenico Scarlatti: Les sonates pour clavier
1954-11
[DF 139 1C1, XPARTX 25306, M6 163040] N°12 (Kk.478) - N°14 (Kk.492) - N°23 (Kk.380) - N°449 (Kk.27) - N°450 (Kk.245) - N°33 (Kk.87) - N°58 (Kk.64) - N°288 (Kk.432)
[DF 139 2C1, XPARTX 25308, M6 163042] N°338 (Kk.450) - N°382 (Kk.69) - N°344 (Kk.114) - N°413 (Kk.9) - N°415 (Kk.119) - N°423 (Kk.32) - N°429 (Kk.175) - N°468 (Kk.279)
1955-5
[DF 140 1C1, XPARTX 29125, M6 169832] N°465 (Kk.96) - N°463 (Kk.430) - N°286 (Kk.427) - N°486 (Kk.13) - N°475 (Kk.519) - N°384 (Kk.17) - N°498 (Kk.202) - N°499 (Kk.30)
[DF 140 2C2, XPARTX 29078, M6 169714] N°461 (Kk.29) - N°263 (Kk.377) - N°490 (Kk.523) - N°433 (Kk.446) - N°104 (Kk.159) - N°203 (Kk.474) - N°487 (Kk.125) - N°395 (Kk.533)

の2枚組アルバムがあります。

このたびDF15を入手しました。1946年のAlbum 15の4枚組と全く同じ内容が10インチLPに入っています。
SP期の原盤はアセテート録音だと言われていますので、アセテート・マスターからのカットでしょう。

1946?
DF 15
Domenico Scarlatti: Sonates
[DF 15 1C1, PART 12754, M3-131246] N°423 (Kk.32) - N°429 (Kk.175) - N°449 (Kk.27) - N°487 (Kk.125) - N°499 (Kk.30) - N°33 (Kk.87)
[DF 15 2C3, PART 13156, M3-131594] N°23 (Kk.380) - N°463 (Kk.430) - N°344 (Kk.114) - N°58 (Kk.64) - N°468 (Kk.279) - N°498 (Kk.202) - N°475 (Kk.519)

まず音ですが、ワウフラッターがあるのかゆらゆら揺れます。
うちのポンコツプレーヤの回転をまず疑いましたが、ラモ―のLPは正常でした。
Youtubeで1946年の音源を聴いてみると、揺れはLPほど明確には感じられないがやはり揺れています。
アセテート原盤をカットした時のレースの回転がおかしかったのでしょうか?
レンジは、バッハのSPと同程度です。歪っぽいところもありますが、盤が傷んでいるせいかもしれません。

演奏は、1950年代の録音に比べて、ラモ―のところで書いたように、若々しくて勢いがあり、颯爽としています。
しかし1938年のスカラムーシュ聴くと、1930年代の、さらには1920年代のメイエルはさらに素晴らしかったでしょうね。
では1954-55年録音のDF139-40は欲しくないかと言うと、もちろんそんなことはありません。Youtubeでしか聴いたことありませんが、より優雅です。
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by ibotarow | 2015-01-31 16:28 | ピアノ_電気録音 | Trackback | Comments(0)